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空白1
19歳の春
私、篠原 葵はどこかの病室のベッドに
目の前の知らない白衣をきたおじさん
おでこにしわがよって少し太り気味のやさしそうなおじさん
「こんにちは、篠崎さん」
にっこり笑った
(あ、検診かな。包帯巻いてあるし、てかあちこち痛いし)
「怪我したときのこと覚えとるかい?」
「んー、思いだせないです」
へらへら笑う私
「そう、どこか痛いところは?」
「んーと、背骨……あたり、それから…動かすと肩も」
おじさん(たぶんお医者さん)はそうと笑顔でうなずきながら手元の
カルテにすらすらと暗号のような文字を書いていく
篠原はそれを見るがさっぱりわからず
ただ見るだけ
おじさんの後ろには中年のおばさん
篠原の母である。
心配そうに、けどどこかほっとしたような
篠原に対して複雑な気持ちを抱いているのだろう
腕を組んで、その両手の掌ががっしりと対称の肘を
つかんでいる




