表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ほいほい

ほいほい4

作者: ひんべぇ

シリーズ第四弾です。夢詰め込める状態でダラーっと読むこと推奨です。

 ――前回のあらすじ――


『世紀末覇者』現る!


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 天気は快晴、太陽は真上で自己主張しまくっている。


 いつもの如く、座敷さんは外で子供達(部下達)と一緒に走り回っている頃だろう――。


 ――ドッスドッスドスッ!


「家主さん、家主さん!」


 と、思ったら、どうやら帰ってきたみたいだ。


「うるせえ!」


「すいません!」


 もう何度目か分からない下の住人からの苦情に、見えていないだろうけど頭を下げる僕。今度、菓子折りでも持っていかなきゃな……。


「家主さんっ!」


 そんな事を考えていると、アパートの扉を壊しそうな勢いで、座敷さんが部屋に入って来た。


「座敷さん、だからね? もうちょっと静かに……ね?」


「あ、重ね重ねすいません……」


 座敷さんは軽く頭を下げると、そのままゆっくりと床に腰を下ろす。気のせいか、最近座り方が武将っぽいんだが……。


「して、家主さん!」


「座敷さん、口調……」


「あ、すいません。んん! それで、家主さん!」


「はい、どうしたんですか? 座敷さん?」


「家主さんは、こういう物をご存知ですか?」


 鼻息を荒くしながら、座敷さんが差し出したものは……レジャー施設のパンフレット?


「最近、この辺に出来たそうなんですけど……」


 チラチラと僕の様子を伺いながら、座敷さんはチラシを僕の目の前でひらひらと動かしている。ちょっと鬱陶しい。


「もしかして……連れていけ、と?」


 僕は座敷さんの目をジッと見て聞いてみる。座敷さんは、何かやましいことでもあるのか、挙動不審だ。


「もしかして、またいじめられましたか?」


「い、いえ、それはもう無いんですけど……」


 座敷さんは、オロオロしながらも事の経緯を説明してくれた。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「拳王――じゃなかった、ボス! 聞いてくれよ!」


 最近、よく遊ぶ近所の子供がそのチラシを持ってきたらしい。


「どうしたんですか?」


「なんかさ、こんなん出来たみたいなんだけどよぉ……」


「『タウラス・パレス』……ですか?」


『タウラス・パレス』――入場門に巨大な人型のマスコットが立ちはだかる、新感覚リゾート施設である。


 代表的なアトラクションとして、水圧に逆らってゴールを目指していく『偉大なる角』や、何故か身体の力が抜ける音の中で遠方の的を狙う『魔女を狙え』などが有名――らしい。


「ここ行きたいんだけどさ、保護者同伴が絶対らしくってよぉ……」


「なら、しようがないんじゃないですか?」


「だからさぁ……ボス、保護者役やってくんない?」


 座敷さんはこの時点では「自分も未成年だから」と言って、断固として断っていたそうだ――怪しいけど――。


 その後、「お願い」「だめ」のやり取りを数十回と繰り返した後――。


「なら、ボスの知り合いとかいないの? ボスなら、CIAだって顔パスなんだろ? 何とかしてくれよぉ」


 そして、何だか可哀想になって、僕に頼んでみる――と言う事になったらしいんだけど……。


「ねぇ……座敷さん?」


「は、はい……? ナンデショウカ……?」


「CIAって……何さ?」


「えっとですね……あの、だって、だって何か皆、私の事、ボスボスって褒め称えてくれるんですもん! ちょっと位、武勇伝盛ったっていいじゃないですか!」


 座敷さんは崖で追い詰められた人の様に、「エグッ……エグッ」とすすり泣きしながら自白を始めた。まあ、それは別に良いんだけど……。


「つまり、あれだね? 僕が保護者として付いて行けばいいの?」


「行ってくれるんですか……?」


「最近、暑いしね……僕も、プールに行きたいなって思ってたから、丁度良いよ」


 ――そして、数日後――


「で……? これが、君が預かっている子供……子供?」


「うん、さ、座敷さん、挨拶して? この間、色々教えてくれた人だよ?」


「あ、ど、どうも初めまして! 座敷と呼んでください!」


「う、うん……よろしく。ボクは、コイツの友達っぽい何かです」


 折角のプールなので、色々と友達を誘ってみたんだけど結局コイツしか来なかったんだよな……。


「なあなあ、ボスに、ボスの右腕のあんちゃん……早く入ろうぜ?」


「そうだよ! 早く入ろうよ!」


 結局、座敷さんが連れて来た子供は三人ほど、その子達の家にも座敷さん同伴――当然、ポイント使って姿を見せました――で挨拶に伺ったのだが、どの家も都合が悪く、保護者としては僕と、僕の友達だけになってしまった。


 ――まあ、それはともかく……。


「ヘイ、座敷さん……?」


「イェア、家主さん……」


「右腕……?」


「あう……すいません、すいません……仕方なかったんです! 何か、色々と持ち上げられちゃって……つい、出来心で……」


 暫く座敷さんにアイアンクローをかまして、この件は水に流してあげる事に……。


「まあ、君が仲良くやっているみたいで良かったよ。ボクもこの間、先輩の意見とか余計なもの教えちゃったしね……」


「まあ、あれはあれで、座敷さんが友達作る切っ掛けになったし、感謝してるよ……」


「なら、良いんだけどね……」


 そして、僕達は『タウラス・パレス』の中に入る。


 話題のレジャー施設だけあって、中々に楽しむことが出来た。所々で金色のマスコットが「勝手にここを通り抜ける事は許さん!」とか言って通せんぼしてくるのは鬱陶しかったけど……。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「「「今日はありがとうございました!」」」


 帰り際、バス停で僕達の帰りを待っていた親御さんに子供達を引き渡して、僕は漸く肩の荷が下りた気分だ。


「右腕のあんちゃん……ボスに迷惑かけんなよ?」


 今日の夕飯は本格四川風麻婆豆腐と、担々麺、キムチのごはん添えにしよう……。


「じゃあ、ボクも帰るよ。急いで帰って電話しないとだし」


「あ、そうか、今日はありがとうね? お兄さんによろしくね?」


「うん、座敷さんもまたね?」


「はい! ありがとうございます」


 こうして、僕達も家路についたんだけど……。


「座敷さん、これ、どういう事?」


「え……? いや、私、何も知りませんよ!」


 アパートに戻ると、僕達の部屋の前に小さな段ボール箱が置いてあった。


 どこかで見たようなデザイン、そして、何より――。


 ――どなたか拾って下さい――


「これ……座敷さんの入ってた奴じゃん!」


「えぇ……? 私のはちゃんと押し入れの中に入れてますもん! 違いますよ!」


「あ、そっか……。じゃあ、これは……?」


「だから、知りませんよ!」


 非常に嫌な予感がする……。


「良し、見なかった事にしよう!」


「………………そうですね!」


 そして、僕達は部屋の扉を開ける。


「「「ただいまー」」」


 ………………ん?


 取り敢えず……。


 僕と座敷さんの同居生活はまだまだ続く――?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ