第9話:成果
テスト終わりました
夕食中のソフィアの衝撃発言から2週間経った今日
いつも通り、竹林修業場で魔力を右手に集めていた
修業完了のノルマは、竹を手刀で真っ二つにすることだ
最初はそんなの無理だと思っていたんだが・・・
修行開始から10日くらいしてから、『魔力をまとうイメージ』で、『内側に込め』つつ『中心を定める』
という支離滅裂なコツが掴めてきて、細い竹なら折ることができるようになった
ここ四日間は、『攻撃が当たる瞬間に、魔力を攻撃の方向に流し込む、もしくは、叩き込むイメージ』
というのをテーマに、威力の増強を図ってきた
ちなみに魔力を流し込んで威力を強めなければ、俺のミスがない限り魔力は消費されない
そしてついに
パキッ
これまでは、折れるといってもめしめし言っていたのだが、たった今、最初に設定していた太さより太いくらいの竹を、パキッと折れた
「随分かかったわね・・・」
ソフィアは5日を過ぎた頃から怒りっぽくなり、一週間を過ぎたときには、呆れてやる気を完全になくしていた
修行完了は喜ばしいが、これが終わってしまうと、俺はあっちの世界に力試しに行かなくてはならない・・・
「二週間もかかってやっとできたんだからもうちょっと喜びなさいよ!!」
俺が力試しの内容をあれこれ想像して暗くなっていると、ソフィアが声をかけてきた
「あっちにはいつ行くんだ?」
恐る恐る聞くと
「今から」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
俺が泣きそうな顔をしていると
「っていうのは準備とか色々あるから無理ね・・・」
「っていうか学校あるだろ!?」
「そんな物より世界が大事よ!」
このとき、俺は納得してしまったが、俺ははじめ、頼まれる側の人間だった・・・
なのに、俺の予定は考慮されない・・・遜るなとは言ったが、もうちょっと遠慮とかは無いものだろうか・・・
やっぱりソフィアは仕事モードじゃなければ性格が悪いな・・・やっぱり断然あの人の方がいいな・・・
俺の中でそんな思考が交錯しているのは、母さんとソフィアと一緒に夕飯を食べてるときだった
そこでは次の土曜に出発するということで話がまとまっていた
一応学校は考慮してくれたようだ。というか、ソフィアもみんなと馴染んできて、楽しんでいるようだから、結局は自分の為なのかもしれない
母さんは心配そうにはしていたが、止めはしなかった
その後、俺の部屋でソフィアと話し合った。と言うか、明日の説明を受けた
「あんたがオコジョ?とか言ってたやつの半分くらいの強さの魔獣とやるわよ!」
ということらしい
元々ソフィアは攻撃は専門外だし、あのときのソフィアは魔法が使えなかったが、あのオコジョには万全なソフィアと五分五分くらいの強さはあるそうだ
俺は基本的に攻撃を専門とする魔術師に育てられているので、現段階でもソフィアの(オコジョの)半分くらいなら勝てるだろうということだ
ちなみに、魔獣は種類の多さがハンパない上、成長環境によって形が変わる物もたくさんいるため、それぞれに名前は付いていない
俺は気持ちが沈んだまま眠った
水、木、金と、普通の生活(修行付き)を送り、ついに土曜日の朝となった
ちなみに、全身の身体強化を試して、素早く動くことも可能になっている
誰にも見つからないように、そしてあっちで長く過ごせるように、早朝に神社に来ている
いつも通りソフィアが光の門を開き、二人でくぐる
いつもの祠に出る
ソフィアは倒れる
俺は支える
ソフィアを寝かして周りを見るが、まるで道が分からない・・・
ちょっとしてソフィアが目を覚ます
前より短くなってる気がするな・・・
「魔力量が増えてきてるみたいだわ。最初よりだいぶ楽だもの」
なんでも、この魔法は並の魔術師が使えば魔力が一瞬で底をついて、最悪死ぬらしい
とはいっても、この魔法は今はソフィアしか使えない
そんな話をしながら、とりあえずみんながいる所へ向かう
ソフィアはちゃんと覚えていたらしい・・・
ソフィアが魔力量を気にしなくていいので、俺とソフィアの二人の気配と姿を消し、魔獣に見つからないようにしている
クレーターが見えたところで魔法を解き、到着
見張りもいたが、ソフィアのことを知っている人のようで、普通に入れた
グラギスさんに挨拶と報告を終え、クレーターの外へ向かう
俺の足取りは重い
少し離れたところで、ソフィアが錠剤のような物を取り出した
「なにそれ?」
「魔獣うのえさよ」
きちんといい感じの強さの魔獣が引き寄せられてくるらしい
えさを地面に放置して、15分くらいたった頃
ガサガサ
近くの草が揺れて、俺は両手両足に魔力を溜め、強化する
全身強化と平行して行っていた、強化までのスピードの修行が役に立つ
草むらからのっそり現れたのは、四足歩行で、顔から尻までが1m無いくらい、地面から背中も1mくらいの、顔がでかくて三等身くらいしかない、ぶたっぽく、うしっぽく、あほっぽく、とにかくキモい生物だった
魔獣というよりは家畜のような感じだ
動きものろいし
俺がそんな風に余裕をかましていると、ソフィアが魔法でえさを俺の方に動かした
あれ?あの魔獣の顔・・・あんなにキリっとしてたか??
しかもこっちを睨んでおります
そして俺はえさが飛んできたので掴む
魔獣を隔てて反対側には、親指を立てたソフィアが満足気だ
そしてその魔獣は後ろ足を地面にこすりつけ、すぐにでも走り出しそうだ
やっぱり走り出した・・・しかも完全に俺方向!
そこまでスピードはないので、普通に避けようとする
だが、スピードが無い分、機敏な動きが可能なようで、的確に俺方向へ向かってくる
俺は足を集中して強化して、魔獣が追突する直前に、魔獣の上を飛び越え、受け身をとる
というか体育でやった跳び前転だ・・・
全然かっこよくないが、一応きれいに技が決まった
そして、すぐさま右手も強化し、魔獣の腰を思いっきりぶん殴る
魔獣が低いので、俺の姿勢も自然に低くなる
その勢いで反転したキモ家畜魔獣の顔が目の前に・・・
吐き気を催したが、何とか抑え、この至近距離から頭突きを決めようとしている魔獣を止めるべく、動き出す前に、強化した両手で頭を押さえつける
さわってみて初めて分かったのだが、この魔獣には頭に二つの突起物、つまりは角がある
小さいが、先端は結構細い
案外攻撃力ありそうだな・・・まぁ、抑えてるからいいけど
両手の強化をこいつを抑えていられるぎりぎりまで落とし、その分足の強化に上乗せする
そして足の甲で、キモ家畜の顎を蹴り上げる
キモ家畜は放物線を描き、4mほど前方に落ちる
キモは起きあがらない
「案外余裕だったわね」
「あぁ・・・」
これはソフィアにとっても予想外のことだったらしいが、俺は頭が良く、頭の回転が速いらしいので、体が思った通りに動けばかなり強いんじゃないか?ということになった
ソフィアが思った以上に喜んでくれて、また頑張ろうと思えたのは秘密だ
これからは月・金の深夜というこうということで・・・
3月くらいからはもっと更新すると思います