ドンマイ!
「ふと気がついたことがある」
誰も一言も口を開かない教室。
まるで、そこだけ切り取られたかのような室内の中
静寂を打ち破るように一人の男が口を開く。
「青春してねえぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
『うおおおおおおぉぉ!!!!!!!』
一人の男の心の叫びに反応するかのように非常にむさ苦しく絵にならない男たちの叫びが木魂する。
それはまさに魂の叫び…血の涙を流すようなテンションで狂ったように叫び続けるむさ苦しい集団。
いろいろと餓えた獣達はただ叫び続けた。
彼女がいる青春が送りたかったと!
リア充な日々を過ごしたかったと!
だが彼らの叫びは誰にも伝わることも無く散っていく。
それはまるで冬に積もることの無い雪のように儚い幻想。
「リア充爆発しろ…」
「二次元で十分だ…」
「俺、アタックしたら玉砕したんだ」
「現実に勝てる気がしない」
多くの儚い幻想の玉砕が彼らに残したものは嫉妬や妬み…黒い感情であった。
だがその感情も時間の経過と共にゆっくりと消えていく。
最後の残った感情は空しさ…
過ごしていく時間すら空しく感じ始めたとき誰かがポツリと言葉を漏らした。
「親友…欲しかったわ」
その言葉に男達はすぐさま反応した。
男たちの瞳には空しさの感情はもう無かった。
男たちに宿った感情は只一つだ。
「なに言ってんだよ、こうやってる時点で俺達は親友だ」
「むしろ、こうしてこの場にいる俺達は兄弟も同然だろ」
彼らの言葉をシメるように一人の男が天へ指をつきたてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「確かに青春は終わった…だがこれはただの終わりじゃない」
「始まりだ」
『ウオオオオオオォォ!!!!!!アニキィィィィィ!!!!!!!!』
ポツリと呟いた男は俯いていた顔を上げた。
その顔にはつき物の取れたような顔ではなく一人の漢の顔付きであった。
「…ありがとう」
「唐突だが俺もう告って来るわ!!」
呟いた男はそれだけ告げると教室を飛び出し漢の戦場へ走り出した。
後ろからは魂の兄弟達の声援が彼の背中を押して加速させていく。
彼の戦いは今始まったばかりだ。
「行って来い兄弟!」
「その手で未来を掴み取れ!!」
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その日、一人の兵が流れ星になったのは余談である。
現実って辛いね!
むさ苦しい男達の賛歌 完