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僕と、彼女と、ペンダント  作者: ミシェロ
第一章【遭遇】

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04

「あなた達、そこで何をしているの?」


右手は武器を構えようとした。だが、左手は無理やりそれを止める。まだバレたと決まったわけじゃない。振り返るとそこには黒のスーツと短いスカートを身に着け、眼鏡の位置を整えている女性がいた。目線は疑いよりも僕たちに興味があるように武器へと向いているような気がする。


「私たち、ここに体験授業を受けに来たんですが、迷ってしまったんです。ひょっとして、先生をされているんですか?」


ミカロは女性と僕の間に割り込み塩の香りをかき消した。聞いたこともないミカロの言葉に抵抗を感じそうだが、今はこの場を乗り切るためだ。下手なことは言わずに階段の手すりを握って僕は港を眺めた。

女性は僕らを見捨てるように溜息をつくと、ボードを開いた。


「あなたたち、名前は?」

「私がミア。彼はボディーガードのシキです。初めての街なのでお父様が雇ってくれたんです」


そんな出まかせで通用する状況じゃない!

右手で相棒を握ると、女性は手を僕らに向けた。


「遅れるのであれば、先に連絡をしておきなさい。それが常識ですよ」

「はい、申し訳ありません。以後気を付けます」


手に集中していた汗が全身へと巡っていく。

この状況、さては何か仕掛けたな。ミカロに詳細を確認したいが、今は流れに乗った方が賢明だろう。僕は初めてミカロと協力関係を組めたことに感謝した。


話しかけてきた女性は受付員だったらしく、僕たちをあの挨拶を受けた建物、アルティウス学園という場所の入口に案内すると、またあの階段の方向へ戻っていった。

集合時間を過ぎている影響であまり説明はしてもらえなかったが、学食や図書館であれば利用できるそうだ。これから始まる授業であれば受けることができるそうだが、興味はないのであまり内容は覚えていない。

ただ、危機のある状況については何も変わっていない。出口が決まっているようで、入った場所から外に行こうとしても木と鉄で作られた剣のエンブレムが彫られた扉は開いてくれない。


「さっきの出来事は全部忘れなさい。何か言ったら体に穴空けてやるから」

「むしろ変貌ぶりに別人かと思ったよ。心配しなくても、さっきの出来事を話したとしても誰も信じてはくれないさ」


彼女は小さな黒い声を使って僕へ笑顔を押し込んだ。僕としては今の関係である方が協力しやすいが、さすがにあの横暴さについては隠しきれないようだ。

 剣を掲げる男、虎を撫でる女性、杖を構えて口を開くローブの男、本を抱えて右手で先を指さす女性。塩さえ香って来ない匂いの消え整えられたロビー。ペンダントは左にある庭園にある刺々しく赤い花がある道を示している。


「どうやら図書館の近い位置にいるみたいだ。今はとりあえず指示している人を探してみよう」

「……わかったわ」


また誰かに話しかけられてもいいようにミカロの位置を確認しながら図書館を目指す。さっきまではゆっくりと動いていたが、今は誰かに話しかけられたとしてもあまり不安はない。けど、あの銅像がどうにも気になる。ドルフェリアは学生から戦闘に参加させているのかもしれない。

計算されたように窓を越えて僕たちの先へと差し込む光。赤い花の近くに来ると、香りが無臭から酸っぱい匂いに変わった。雑草がほとんどない。この近くに誰かいる可能性は十分ありそうだが、丁度この先が図書館。

ペンダントも図書館の入口に目的の人物がいると示している。


「ミカロはここで待っていてくれ。相手が友好的とは限らないからね」

「そのつもりよ。さっさと戻って出るわよ」


知恵の宝箱へと続く使い古されたオレンジ色をした木の扉を脇に押す。扉は動かない。建付けのせいかやけに重い。

ふっ!

体重をかけても開かず、中央だけがえらく硬い。そして何より端部分だけがやけに動く。

 これは、図書館よりも奥の場所にいるのかもしれない。ミカロに相談しようと横を向くとつかえが解けるような音がした。

乱暴な僕とは違い窓を拭くように扉が開いた。


「申し訳ありません。図書館はお昼からなのですが」


扉の先には、白いワイシャツに黒と緑を基調としたチェックのミニスカート、庭にあった花よりも血の通った赤みの強く金色の装飾を加えたリボンを着ている草原に寝そべっていた後のようなショートボブの女性が僕の顔をふと天才が割り込んできたのような目で見ていた。


「そうでしたか。そしたら、また後で来ます」

「すみません。失礼ですが、お名前はシオン様でしょうか?」

「はい、僕の名前はシオンです」


シオン、様。頭の中が光で見渡せなくなるくらい違和感しかない。

自分の目的が明確になるかのようなハーブの香り。彼女は僕に予告なく好物のプレゼントをもらったような笑顔を見せると、積もり積もった努力に対する対価として刻むように僕に向かって飛び込んできた。


「お会いできるのを今か今かと待っておりました。エイビスは……大変うれしいです」


彼女は腕を僕の右腕に絡ませ離さない。手首には僕たちと同じペンダント。

見つけた。

彼女の瞳はアメジストのように輝き潤んでいる。少しずつ輝きを零し頬へと伝っていくと、エイビスと名乗る彼女は僕の目との間に腕を挟んだ。

まるで長期間にわたり遠く離れ生き別れたパートナーと再会できたことのように彼女は僕を前に熟れた目を手で覆っていく。


「へー。シオンに恋人がいるなんて知らなかったよ。私はお邪魔になりそうだから、ここで待ってるね」

「エイビス、ここだと目立つ。ひとまず部屋に入りませんか」

「そ、そうですわね。失礼いたしました。今何とかします。そちらの方も入ってください。」


図書館に入ると、右腕からハーブの香りがする。エイビスが好きな香りというよりも、心を穏やかに落ち着くためのものかもしれない。

彼女は扉を閉めるとやけに分厚い小説本を手に取ると、本を盾にして僕と距離を取った。

彼女は輝きを流していたことに少しだけ彼女と話したい思いがある。彼女と目が合うと僕は感謝の笑顔を見せて盾へと近づいた。


「エイビス、図書館に入れてくれてありがとう。実はあまり時間がないんだ。話をしてもいいかな?」

両手が弾き合う音。エイビスは僕の思いを聞いてか盾を飛び放たれた銃弾のように宝箱へとしまった。彼女の両目は端に赤い栞を残してハーブの香りへとページを変えた。

「お待たせいたしました。シオン様」

「ありがとう。右手のペンダントについて何か知らないかな」

「……申し訳ありません。実のところ、私も何故これを持っているのか分かりません。むしろ取ることができずに困っていましたから」


やっぱり状況は一緒か。ペンダントはまだエイビスの位置を示すと青白くゆっくりと点滅を始めた。だが、それは何を意味しているのか分からない。次のページを捲るように簡単なことでもない。

確か前はミカロと距離が近づいて、その後に彼女と自己紹介をしている状況が襲いかかっていた。恐らく共通しているに違いない。


「エイビス。ペンダントを近づけてみよう」

「はい。かしこまりました」


エイビスに手を近づけると、青白い光は彼女を消し去った。

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