人類のこと何だと思ってるんですか
まさかテュポーンたちがレアエネミーだったとはな。
まあラスボス級だし経験値もそりゃたんまり溜め込んでますよねっていう。
「おじさま。せめてそこは高難易度クエストとかにしてくれないかしら?」
難しい依頼だから達成した際の報酬も大きいって?
「いやでもエネミーだろ。前歴的な意味で」
人類滅ぼそうとしてた奴に人類間引こうとしてた奴。人類は無価値だと断じた奴。
ラスボスの人って何時もそうですよね。人類のこと何だと思ってるんですか。
「唯一の例外はアーサーだけど……」
いやアーサーはアーサーでちょっと危うかったか。
まあ人生捧げた国があんな終わり方したのだから無理もない。
「改めて考えるとやべえなここ。魔界の最深部か?」
「他の人たちのことは詳しく知らないけど僕はそうでもないでしょ主人公だよ」
「そうかもしれないけれど道無お姉さんは何か一つ違えば系のラスボス近似主人公じゃないかしら?」
「存在価値を否定して虚無に還すとかどう考えても善なる者の所業ではなかろうが」
「失礼な人たちだな」
早速打ち解けてくれてるようで何よりだ。共同生活を送るわけだしな。
旭の方は既に面識はあったがテュポーンとも上手くやれそうで何より。
というか、
「テュポーンには道無が女の子に見えてるのか?」
「ええ。私と同じ絶壁系の女の子にしか思えないわね」
「いや君はロリだろ。僕はボーイッシュ系でしょ分類するなら」
不思議なものだ。
確かアーサーは虚無の王とか言ってたから男と認識してるみたいだし。
人によって見え方が違うというのは聞いていたがいざ目の前でとなるとな。
「とりあえず共同生活をする上でのルールが必要ね」
「良いことを言うではないか」
「でしょう? 私たち、きっと同じことを考えてるわ」
テュポーンと旭は声を揃えて道無に告げた。
「「男湯女湯と分かれている場合は女湯に入ること」」
「おいおいおい。現世で軽く説明しただろう? 僕の性別はどっちでもないって」
頼むぜジョニーと言いたげな洋画リアクションをする道無。
かつての姿からは想像出来ないフランクさだ。
「いやそんなご尤もな理屈はどうでも良いのよ」
「貴様がそれを悪用して先生との混浴を狙うのが気に入らんと言っているのだ」
堂々と混浴しに来た奴らの発言だろうか?
まあ俺も温泉宿の時みたいによっぽど疲れてるとかでない限りは拒否ってるけどさ。
口は挟まない。狙われてるであろう俺が話題に入るのも面倒なだけだしな。
あっちも触れない限りは俺にどうこう言うことはないだろう。
だが俺が割って入ればじゃあお前が決めろよとか言ってきそうだし。
ああでも、
「揉めるのは良いけど暴れるのは今ちょっと勘弁してやってくれね? アーサー死んでるし」
「坊野さんアル中に甘くない? 僕も同性の友達になれるんですけど?」
「それが悪用と言うのだろうが! ともあれ了解です」
「ええ。自業自得なのに逆ギレして突っ込んで来られても面倒だしね」
「え? 飲み過ぎた自分が悪いのにかい?」
「彼はそういう人よ」
「責務から解放された結果だろうな。気持ちは分からんでもない」
酷い言い草だが俺もそこはアーサーを擁護出来ない。
三人は話し合いの結果、デジタルアナログ問わずゲームで勝敗を決することにしたらしい。
十番勝負で反射神経などは一律に揃えてからるやるそうな。
「……ちょっと楽しそうじゃねえか」
「あら、じゃあおじさまも混ざる?」
「混ざりたくはあるが俺は俺で考えたいこともあるから見物で我慢しとくわ」
というわけでゲームの準備を始めた三人を横目に見つつ考える。
ここに戻ったばかりの時は次のアイデアは何もなかった。
だが駄弁っている内にフッと思い浮かんで来たのだ。
特に関係のない話題の中で突然、閃くのってわりとあるあるだと思う。
というのはさておきだ。
(やりたいシチュは定まったが居住性がなあ)
山小屋、より具体的に言うと避難小屋に心惹かれている。
吹雪、或いは豪雨のせいで震えながら逃げ込む山小屋。
直ぐに回復するだろうと思っていたのに一向に天気は良くならない。
一応、ストーブなどはあるが外気温を考えれば心許ないし燃料も心配だ。
水道は生きているらしいがそれも何時凍結してしまうか。
そして食料の心配もある。幸いにして多く持ち込んではいるがそれにしたって限度がある。
(限界まで切り詰めて一週間……そんな状態で一夜、また一夜と重ねていく)
膨れ上がる不安の中で過ごすみたいなシチュが今俺にむっちゃ刺さっている。
廃バスの時と同じでこれは不足、不自由を楽しむ類のもの。
だから居住性という意味ではカスなのだ。何なら廃バスより劣悪だろう。
俺だけなら良いが他に住人も居るのだから真っ当な生活圏の確保は必須だ。
(廃バスの時みたいに一部だけってするにしてもシチュエーションが思いつかない)
普通に山の麓に町を作るというのは最終手段だ。芸術点が低いからな。
廃バスの時は再開発の明と暗という形で相反する要素を一つに閉じ込めた。
あれは我ながら中々のものだと自負している。
だからこそ凝りたいのだが今のところ妙案は浮かばず。
(……はあ。根が貧乏性なんだろうな)
どうせやるなら、とメインの目的以外にも色々と求めてしまう。
(買い物で遠出した時とか正にこれなんだよなあ)
どうせここまで来たんだしとさして必要ないものとか買っちゃう。
冷静に考えると収支マイナス寄りじゃね? って後でなるんだ。
メインの目的だけでも損するわけじゃない、何ならプラスになるのにな。
分かっていてもどうせなら、という言葉がついついよぎってしまうあたり実に小市民だ。
「……チィッ。もどかしいな。直接殴った方が早い」
「そうしないためにゲームやってんだろ。蛮族か君は」
行き詰まった俺と違いあちらの勝負はスムーズに進んでいる。
画面の向こうでは旭の操作するキャラが道無のキャラにボコられ散っていた。
コイツらなら手からビーム出したりでリアル格ゲー出来るんだよな。
「じゃあ次ね。次は負けないわ」
「次も勝たせてもらうよ」
「おいテュポーン、さっさとくじを引け。次は貴様だろう」
ああ、最下位が次の種目を決めるルールなんだ。
アナログと書かれた箱に手を入れテュポーンが引いたのは、
「ツイスターゲームね。良いわねこれ私有利じゃない。一番ミニマムだもの」
「バランス感覚で補えるでしょ。それより最初は僕と祓主で良いんだよね?」
「ああ。おいテュポーン、しっかり審判を務めろよ」
「分かってるわ」
一対一で勝負するタイプは最初、前のゲームの一位二位から始まるのか。
なるほど。最下位が見に徹することが出来てちょっと有利になるわけね。
案外フェアなルール構成のようでちょっと感心した。
「おい邪魔だどけ」
「いや君のが邪魔なんだけど」
ゲームが始まると二人は卒なく指定の色をクリアしていく。
かなり無茶な姿勢で絡み合っているが不安定さは欠片もない。
美形二人が体を密着させ複雑に絡み合っているというのはかなり煽情的だ。
俺も男なので少しドキリとしたがそれ以上に、
「……そりの合わない奴らがくっつくのもお約束だよなあ」
「「!?」」
いわゆる喧嘩ップル的な?
「コイツらどっちか男にして一本描いてみようかな」
どっちもとんでもなくツラが良いからついつい妄想が捗ってしまう。
などと考えていたら旭と道無はギョッとした顔で崩れ落ちてしまった。
「おいどうしたよ?」
「いやあまりに悍ましいことを言うんだもん」
「想像するだけで体調が……おい、これはノーカウントだよな?」
「何言ってるのよ。集中を切らしたお姉さんたちが悪いんじゃない」
審判役のテュポーンは俺を見つめパチンと指を弾き笑った。
「ナイスアシストよおじさま!」
えぇ? とんだ濡れ衣……。
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