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相続した物件はマヨヒガでした  作者: カブキマン


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めっちゃグイグイ来る

「とまあそんな感じかな?」


 アート事変のあらましを僕の視点で語ると坊野さんはなるほど、と頷いた。

 結末に至るまでの過程で凄惨なことは幾つもあった。

 それでも最終的にはハッピーエンドで終わったから彼も話をねだったのだろう。


「旭の視点からじゃ見えなかったものが見えた気がするよ」

「彼女はどんな風に語ってたんだい?」

「大筋は変わらないけどあの頃のアイツは……まあ、何だ色々あったからな」


 そこで足掻く“個人”についての言及が皆無だったという。


「切っ掛けがお前を知るためだからお前には焦点当たってたが」

「まあそうだろうね」


 僕自身事務的な関わり方しかして来なかったので何を知っているわけでもない。

 それでも祓主の私的な人間関係が壊滅的だったのは覚えている。

 いや、僕が言えた義理じゃないのは分かってるけどさ。


「旭とは事件以降関りがないってのは聞いてたが他の人はどうなんだい?」

「今も普通に交友はあるよ」

「ほう? じゃあ例のアイドルとか色々フラグ立ってそうな子らとも?」


 好奇の色が強く浮かんでいる。

 少女漫画描いてるからネタをということだろう。


「告白した相手に恋バナねだるのどうかと思うよ」

「いやでもお前は気にしないだろ? 俺もちゃんと相手を選んでるよ」

「まあそうだけど」


 ちょっともやもやする。

 でもそれ以上に僕をちゃんと見てくれているという嬉しさの方が大きかった。

 つくづくイカレてしまってるらしい。でも良いよね。誰かを好きになるっていうのはそういうことなんだから。


「あと男女を使い分けるなら彼氏俺で彼女別にとかも出来るじゃんよ」

「あー、いや……女の時は恋人としてってのは坊野さんに合わせただけだし」


 男でも良いならそっちでも恋人として接するつもりだ。

 親友としてのポジションを捨てるつもりはないけどね。

 欲張りだけど手に入るものは全部欲しいのだ。


「そもそもの話、僕が女だから坊野さんを好きになったってわけじゃないし」

「じゃあ良いお友達のまんまってことか」

「うん。まあ向こうはどう思ってるか分からないけど。食事すると薬盛る子とかも居るし」

「犯罪では?」

「僕は気にしてないから」

「えぇ……?」

「あっちも僕ならそれぐらいで拒絶しないと分かってるからやってるんだろうしね」


 その後も僕の話は続き二時間ほどで大体、今日までの歩みを語ることが出来た。

 ご飯もお酒もかなり進んだが坊野さんを見るにまだまだ余裕はありそうだ。

 ならばもうしばらくこの楽しい時間は続けられるということ。


「今度は坊野さんの話を聞かせてよ」

「俺の?」

「うん、ダメ?」


 好きなもの嫌いなもの。子供の頃の話。マヨヒガの管理者になった切っ掛けやその後の話。

 話したいことは山ほどあったけど聞きたいことだって山ほどあるのだ。


「まあ客人の個人情報とかは話せない部分もあるがそれで良いなら」

「勿論」


 そこから彼は色々な話をしてくれた。

 あれこれと詮索する僕に嫌な顔一つせず対応してくれたのが本当に嬉しい。

 思えばマヨヒガに居た頃からそうだった。


(……まあ無礼を働けば別なんだろうけどね)


 初対面の時のアレは我ながら無いと思う。いや本当に。

 当時は理屈で反省したけど今は心の底から反省している。


「とりあえずあれだ。僕の居場所もマヨヒガに用意してくれるよね?」

「それは別に良いけどめっちゃグイグイ来るじゃんよ」

「そりゃね。恋敵に水をあけられたくないもん」


 テュポーンという人はまだ面識がないけど多分、この人も坊野さんに惚れてると思う。

 祓主については言わずもがなだ。


「……それにしてもやたら態度デカい知人が数年後、恋敵にジョブチェンジするとは」

「あー、やっぱ態度デカいと思ってたんだ」

「そりゃね。あれ見て謙虚だと思う人は狂ってるでしょ」


 何だろ。特にイラっと来るのがこちらを評価する時。

 良いとかじゃなく悪くないって言うんだよ。

 一回二回ぐらいならともかく度々やられるとわりと本気でムカつく。


「祓主に見向きもされない人の方が好感度高くなる謎現象起きてたよね」


 何なら叱ったり咎めたりする時の方が逆に印象良いんだよね。

 上から目線には変わりないが過不足なくこちらの非を淡々と指摘してくれるからさ。


「褒めれば褒めるほど好感度下がるって酷いな」

「酷いのはアイツの態度だと思う」


 苦い気持ちを飲み込むようにハイボールを呷る。


「あ」

「どうした?」

「いや知った顔がね」


 何となしにテレビを見るとニュースが流れていたのだがそこに見知った顔を見つけたのだ。

 坊野さんも直ぐに振り向くが丁度、ニュースが切り替わってしまった。


「例のあの子……じゃないよな。別のアイドル?」

「いやアイドルじゃないよ。元政治家……だっけ?」

「俺に聞かれても困る。何で自信なさげなんだよ」

「だって政治家やってたの僕が一桁代の頃だし」


 幼少期だったことに加えてあの頃の僕は人間がどれも同じようなものに見えていた。

 容姿の区別が出来ないほどではなかったとはいえだ。


「記憶する気がないなら情報なんて入って来ないでしょ?」

「それはまあ、しょうがないな」

「勿論今は違うけどね」


 元政治家というのも関わった際に流れで小耳に挟んだのだ。


「何だってそんな人と関りを?」

「裏のお仕事さ」


 決して小さくはない相応の犠牲を出して確実に事を収めるか。

 リソースを多く注ぎ込み皆が助かる三割ぐらいに賭けるか。

 そんな依頼の中で件の元政治家と関わったのだ。


「……どうなったんだ?」

「私が何とかするって伝手をフルに使って各所に頭下げまくって後者になったよ」


 そして見事、賭けに勝った。

 まあこの場で話題にしているのだからそこは察せられるだろう。


「立派な人じゃねえか。え、今は政治家じゃないの? そういう立派な人こそ政治家になるべきだろ」

「かもね。そうそう、この人だよ。元総理だって」

「……総理?」


 スマホの画面を坊野さんに見せる。

 有名人だけあってちゃんとネットの百科事典にも記事は載っていた。


「へえ、本当に立派な人じゃないか」

「……ッ!?」


 僕も仔細は今初めて知ったのだが記事を見るにかなりの御仁らしい。

 二十年近く前に総理をやっていたが急病で辞任しそのまま政界も引退。

 病を得たことで人生観が変わったとかで以降は篤志家として様々な人間を支援しているとのこと。

 政治家より篤志家としての功績の方が評価されているようだ。


「まあ良い人だろうなって印象はあったけど……坊野さんどうしたの?」

「い、いや何でもねえし? へ、へえ……立派な人やん。それより次何頼む?」


 それはもう絵に描いたようなキョドり方であった。

気に入って頂けましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
まさか……
薬を盛るアイドル! そう言うのもあるのか。 後、坊野の家族関係も気になる。
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