溢れる知性でロリコンにしてやろう
「季節の設定が秋というのもあって物悲しさを感じるわね」
日は完全に沈み夜の帳が降りた。
私とおじさまは二人で焚火を囲みながら夕飯の準備をしている。
まあ夕飯と支度言ってもインスタントのお味噌汁のために湯を沸かしているぐらいなのだけど。
メインは帰り道のスーパーで買った(という設定の)半額おにぎりやお惣菜である。
「分からなくもないけど目の前で体操服着てるのが居ると物悲しさよりシュール感がな」
「子供は風の子というじゃない」
などと反論するが当然、そんな理由ではない。おじさまロリコン化計画の一環だ。
あの変態曰く、
『ロリのコスプレは“強い”。何故って何を着せても背徳感があるから!
ババアの制服とかもうわキッツ! 感が堪らないわ。ええ、そこは認めましょう。
年増のコスプレにも良さはあるけれどロリの希少性には敵わないわ。
だってマジのロリがあれこれコスプレしてる場面に巡り合うなんてそうそうないもの。
年増のコスプレは探せば幾らでも見つかるけどロリは探すことにさえリスクが付き纏うし』
叩けば埃が出そうだなと思った。
私が官憲でなかったことをあの変態は感謝するべきだろう。
(……やっぱりおじさまの防御は堅いわね)
自分で言うのは悲しいがその手の性癖がある人間からすれば私は垂涎ものだろう。
しかしおじさまからは一切その手の気配がない。
子供は可愛いなあって微笑ましさぐらいだろう。
とはいえ焦りはない。時間という制約が存在しないのだからじっくり事を進めて行けば良いのだ。
(少しコスプレの路線を変えて子供が好きそうなものをやってみるとかどうかしら?)
無邪気にコスプレを楽しんでいるんだな感をむしろ盛る。
それではおじさまの子供を見る目は変わらない? だから良いのだ。
むしろ固定化が進むから不意の一撃が通る。
(それで堂々と目の前で着替える時にえっぐい下着を見せつける)
ギャップだ。
お前何ちゅうもんをとか言って来たならこう返せば良い。
『これでも実年齢は結構なものよ? まさかキャラものの女児下着をつけろとでも?』
と。
普段は子供を意識させつつふとした瞬間、女を見せる。これね。
しばらくはこの路線でやっていこうと思いつつおじさまが差し出したカップのお味噌汁を受け取る。
「……しかし」
「あら、どうかされたの?」
「いや俺とお前さんがワチャワチャやってると旭が来るじゃんよ」
「はいはいそういうことね」
丸一日楽しくやっていたがお姉さんは一度も姿を見せていない。
それが不思議だったのだろう。私は彼女が何をしているか知っている。
(でも言えないわよね。布教のために聖書を作ってるだなんて)
一族をおじさまを信仰する集団に調教するとか本当にイカレている。
あまつさえ他の御家も布教で都合の良い存在に仕立て上げるつもりとかやば過ぎるわ。
防人の家系とか言ってるけど国家の潜在的な危険因子は自分じゃない。
というか、
「そういう感想が出るということは気付いていらっしゃるのね」
「そりゃあんだけ露骨ならなあ」
「まあ。なのに何のリアクションもないなんて罪な人だわ」
「色恋において態度で察してが許されるのは漫画の中だけだよ」
円滑な関係を築きたいのなら言葉を尽くすべきだ。
じれったさやもどかしさを楽しめるのは創作の中だけだと一刀両断。
手痛い失恋とやらの経験から、なのかしら?
「まあ今告られても丁寧にお断りするだけだが」
「あら、好みのタイプではなくって?」
「タイプどうこうってより……旭ってドエライ美人じゃん?」
「そうね。スタイルも抜群だわ。私とは大違いよ」
「そう! とんでもなく目を引く容姿してんだよ」
なのにそれ以外の部分がデカ過ぎてそっちに気を取られるとおじさまは苦笑する。
脈がないから安心ね――――とはならない。むしろ、危険なシグナルだ。
私がさっき考案した下着作戦と同じでギャップを狙えるということなのだから。
「じゃあふとした瞬間に違う顔を見てしまえばグッと来るかもしれないわね」
「否定はしないよ。俺の中の乙女が刺激される可能性は大いにある」
「乙女なんだ」
そんな話をしつつ食事を終え、いよいよ本番だ。
「先に入って良いぜ」
「あら、どうせなら一緒に入りましょう? その方がきっと楽しいわ」
「いや絵ヅラが……まあでも、今更か。そうだな。じゃあそうするかあ」
というわけで二人してドラム缶風呂に乗り込む。
こんな時、私のコンパクトボディは便利だ。すっぽりおじさまの間に収まってしまった。
「ふぉぉ……!」
「おじさまってば凄い顔よ」
「いやこれ想像以上! ベクトルは違うが前の温泉と張るぐらい素晴らしい!!」
普段だと熱いぐらいのお湯だ。
けれど冷たい秋の夜風に晒されながらだと丁度良い。
そういった風情を感じられる部分もおじさま的にポイントが高いのだろう。
「ねえねえ明日は何をなさるの?」
「家具類の清掃とバスの塗装かなあ」
「ペンキを使ってペタペタするの?」
「おう。良い感じにシャレオツなペインティングを施すつもりだ」
「楽しそうね。私もご一緒して良いかしら?」
「良いぞ~」
よし明日も一緒に居られるお約束を取り付けられたわ。
わざわざ言わないでも流れでそのまま付き合えただろうが敢えて形にした。
こういう何てことのない小さな約束を通り過ぎて思い出を積み重ねて行きたいから。
「やった! ちゃんと図案通りにするから私にもペンキを塗らせてね?」
「おうとも」
絶好調だわ私。
(良いお湯だしお星さまも綺麗だしで最高ね)
とりあえず今打てる手は打てた。
後はのんびりこのまま一日を終え……。
(――――はっ!?)
閃いてしまう。まだ出来ることはある。我ながら何て恐ろしい冴え……。
もしかしたらドラム缶風呂によるブーストもあったのかもしれない。
「ランプの灯りが雰囲気あって良いなあ」
入浴後。着替えと片付けをパパっと済ませバスの中に引っ込んだ。
明日も早いし少ししたら寝ようぜというおじさまに頷きつつ私は楔を打ち込む。
「そう言えば」
「どうした?」
「おじさま家出した高校生みたいな設定で楽しむとか言っていたでしょう?」
「ああ。実年齢には触れてくれるなよ」
大丈夫。そこまで野暮ではない。
「私と一緒だと何だか別の設定になりそうじゃない?」
「!」
カッ! という擬音が聞こえて来そうなほどにその目が見開かれた。
「……連れ子同士の再婚、血の繋がらない兄妹。親はロクデナシで家庭環境は劣悪」
来た、と内心ほくそ笑む。
おじさま、こういうのも好きだと思ったのよ。
「身を寄せ合って生きて来たが耐えかねて二人で家を飛び出す……」
趣味とはいえ創作活動をしているだけあって瞬く間に妄想が膨らんでいく。
私の想定した流れが来ている。
「……ごめんな。兄ちゃんがもっとしっかりしてればお前にこんな不自由させずに済むのに」
チラチラと期待を込めた視線がこちらに注がれる。
乗らないという選択肢はない。むしろそのために切っ掛けを作ったのだから。
私はおじさまに抱き着き考えていた台詞を情感たっぷりに告げる。
「ううんそんなことないわ。だってお兄ちゃんと一緒だもの」
お兄ちゃんが居てくれるならそれで良い。それだけで幸せ。
健気な妹ムーブに感極まったおじさまが私を強く抱き返す。
(ふふ、普段のスキンシップでは絵ヅラやべえなあ……とか思っていそうな顔をしてるけど)
今はノリノリ。やってることは今の方がどう考えてもアレなのに、だ。
だってこれイメクラみたいなものじゃない。
でも良い。これで良い。こうして徐々におじさまの精神的なハードルを取り除いていくのだ。
(ロリコン化計画は順調ね。良くってよ!)
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