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相続した物件はマヨヒガでした  作者: カブキマン


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35/60

四畳半キャンバス

 カラオケ勝負の結果、勝ったのは旭。

 と言ってもその戦いは実にハイレベルなもので100点のサドンデスが何度も繰り返された。

 どっちが先に一点落とすかとかそういうレベルで改めてコイツらやべえよ。

 後、何がビックリってカラオケマシンにもビックリだ。


『……自分で入れておいて何だけど異世界の曲もカバーしてるのね』


 テュポーンが最初に入れたのは高校の頃に流行っていたというラブソング。

 一旦現世に戻ってネット検索してみたが当然、こちらの世界には存在しない。

 テュポーンもここならあり得るかもと思って入れたようだが実際に収録されてて軽く引いたようだ。


『……神事に使う曲をカラオケに落とし込んでるのか』


 そして旭。

 こちらはそもそも流行りのヒットソングなどまるで興味はなく知識はゼロ。

 それでも家柄、神楽などには精通しているらしい。

 最初は童謡で攻めるつもりだったようだが異世界の曲があるならと入れてみればドンピシャ。

 趣が違い過ぎて異世界の曲よりある意味、インパクトが大きかった。

 総合して俺的にはかなり盛り上がったカラオケ勝負だったと言えよう。


「家具の配置はこれで良し、と」


 カラオケ勝負が終わりそれぞれの部屋に向かい自分の色に塗り替える作業が始まった。

 折角の四畳半ということで今回のテーマは貧乏大学生。

 煎餅布団に炬燵テーブルと最低限の家電のみ。特にこだわったのは家電類だ。


「うーん、良い味出してる」


 こだわったのは当然ながら性能面ではない。ビジュアルだ。

 リサイクルショップで安く買ったんだろうな感をこそ重視した。

 マヨヒガに生成してもらったものが完璧に空気感を再現している。

 実際に軽く試運転してみて痛感したね。


「いやぁ……皿の動きが正に中古のそれだわ」


 昔ながらのターンテーブル式なのだが動きが凄い。

 ガコ、ガココと音を立ててぎこちなく回るのがもう完璧。ちょっとヒビ入ってるのもポイント高いよね。

 あと電子レンジの下にある冷蔵庫も良い。冷えがイマイチ。あとうるせえ。

 絶対これどっちも寿命そんな残ってないだろってのが伝わって来る。

 壊れた後で処分にかかる費用を考えると初期投資ケチんなよ感が半端ない。

 正に俺が望んでいた通りの逸品である。


「あぁ、良い。良いぞ。この一人暮らしを始めたばかりの拙さ」


 何だろ。もう回ってる電子レンジ見てるだけで一時間ぐらいは暇潰せそうだわ。

 というかずっと回してたから実際そんぐらい時間経ってると思う。

 これがマジの中古家電ならただでさえ怪しい寿命がマッハだったろうな。


「おじさまってば本当にフェティッシュね」

「そこが良いと何度言えば分かるのか道理の分からぬ怪物め」

「だから否定していないでしょうに」


 何時の間にか部屋に入り込んでいたテュポーンが面白そうに笑い旭が噛み付く。


「おじゃましますも言えねえのかおめえらは。ママにどんな教育された?」

「お恥ずかしながらゴミのような教育を」

「あ、うん。君はそうね」

「というかおじゃましますは言ったわよ。あとインターホンも鳴らしたわ」

「マジ? あ、インターホン壊してたんだったわ」


 こりゃ失敬。


「あぁ、やっぱり壊してたのね。見た目ボロでも実際は違うからおかしいとは思っていたけれど」

「言っておくが他の部屋は違うからな?」


 テュポーンと旭が使う部屋は意図的な劣化などはさせていない。

 あくまで俺の部屋だけ。こだわりってのは押し付けるもんじゃないからな。


「ってかどうしたよ?」

「折角こういうシチュエーションなのだし、ねえ?」

「引っ越し蕎麦を用意して参りました」

「あぁ、そろそろ夕飯時か。なら仕上げは後にするか」


 というわけで三人揃って夕飯と相成った。

 炬燵テーブルの上に二人が持って来た蕎麦と天ぷらを並べて行く。

 何でも二人で話し合い旭が蕎麦、テュポーンが天ぷらをそれぞれ分担したそうな。

 案外仲良くやっているようで何よりである。


「お味は如何?」

「最高」


 駄目な蕎麦は何か喉に引っ掛かるけどそれがまるでない。

 冷やし加減も絶妙だし幾らでもいけそうだ。

 料理に関しては素人だったはずなのによくぞここまでと思う。


「テュポーンの天ぷらも美味いぜ」

「お気に召して頂けたようで何よりです」

「ふふ、ありがとうおじさま」


 微笑む女性陣に釣られ俺も笑う。

 実に和やかな食卓だと思うが、


(……これ傍から見ればかなりシュールだろうな)


 狭い四畳半で丸テーブルを囲む三人。

 一人は普通のお兄さんたる俺。ここは良い。マジで何の違和感もないと思う。

 問題は残る二人だ。

 片方はロリコン大歓喜の洋物美少女に片方は切れ味鋭い和風美人。

 高過ぎるビジュアル戦闘力と四畳半があまりにもミスマッチでちょっと笑いそうになる。


「ところで二人の部屋はもう出来上がったのかい?」

「はい。と言っても最低限生活に必要なものを並べただけですが」


 旭の方は特にこだわりはないようで直ぐに終わったようだ。

 ただテュポーンは違うようで必需品以外の部分がまだらしい。


「おじさまほどではないけど折角だし私もあれこれこだわってみようかなって」

「ほう」

「ただどういう方向性にするのかがイマイチ定まらなくて」


 頬に手を当て小さく溜息を吐く。

 分かる。分かるよその気持ち。

 何かしたい気持ちはあるのに具体的な方向性が定まらない時、すっげえモヤモヤするよな。


「意外だな。貴様、そういうものに興味はないと思っていたが」

「まあ否定はしないけど勿体ないかなって」

「「勿体ない?」」

「あっちの世界でも親元を離れて一人暮らしはしていたわよ?」


 俺と同じように大学進学を機に一人暮らしを始めた。

 だがその時は自分好みに部屋を弄るなんてことはなかったとのこと。


「新生活応援セットみたいなもので一通り揃えて終わりだったわ」


 大学生活、そして霊能力者としての活動。やることは他に幾らでもあった。

 私的な楽しみに時間をかけてる暇がなかったとテュポーンは溜息を吐く。


(……思えばその頃から限界OLの兆しはあったんだな)


 悲しいなあ。


「その後も何回か住居を変えはしたけど……ねえ?」

「……まあ、それどころじゃねえわな」

「だからこれがある意味、初めての一人暮らしみたいなものじゃない?」


 まあ、確かに直近のマヨヒガは温泉宿だったしな。

 それ以前も一人暮らしって感じではなかった。


「だから折角だし色々こだわってみたいなって」

「なるほど……そう言われると私も何だか勿体なく思えて来たな」


 旭の方はテュポーンよりはマシだろうが常にイラついてただろうしな。

 一人暮らしだやったー! 感はなかったと思う。


「お姉さんも色々やってみたら?」

「そうだな。それも悪くないかもしれん」

「良いじゃん良いじゃん。俺も相談乗るし一緒に色々考えようぜ」

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