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相続した物件はマヨヒガでした  作者: カブキマン


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知られちゃったね

「……そういやテュポーンを連れて俺の方の日本行けたりするのかな」

「え」


 原稿完成から三日。

 疲れも完全に癒えたので諸々の手続きのため一旦現世に戻ろうか。

 そんな話を朝食の席でしている際にふと思った。

 テュポーンがマヨヒガを出る際、戻るのは彼女の世界の日本だが俺が連れて出た場合はどうなるのか。


「旭、専門家的にどうかな?」


 テュポーンと同居してる話をしたら私もどうか! と全裸でゲザってきた旭に話を振ってみる。

 女性が全裸で土下座するとかこれもう一種の脅迫だよな。

 まあここで暮らしたいってんなら好きにしてもらって構わないんだけどさ。


「世界を超える事例自体どころか異世界の存在すら認知していないので断定は出来ませんが」


 そう前置きした上で旭は自らの見解を述べた。

 結論から言うと恐らく可能だろうとのこと。

 理屈としてはこのマヨヒガで起きる現象が全て俺に都合が良いように作用しているかららしい。

 どういうことだと聞いてみると、


「例えば時間の流れ。先生は外界と時間の流れが違うと仰っていましたね」

「ああ。逆浦島太郎だな」

「それでは些か説明不足かと」

「説明不足?」

「正確に説明するなら先生にとって都合が良い時間の流れになっているというべきかと」


 その生きた実例が旭なのだという。


「屑どもの調教で私は一週間ほど現世に居ました」

「一週間で一族郎党従順な奴隷に仕立て上げるのってかなりヤバいわね」

「何を言う。神は七日で世界を創造するのだ。似姿である人も一週間あれば大体のことは出来ようが」


 いやその理屈はおかしい。


「私が現世に戻った際、時間はまるで経過していませんでした」


 あぁ、そういうことか。

 そこから一週間もあちらに居たのならこちらでは途方もない時間が流れているはず。

 にも関わらず俺の主観では旭が帰ってからそこまで時間は経過していない。


「私が戻って来たタイミングもそう。先生が原稿を完成させて間もない頃という」


 待ち続けていてくれたファンの一人である旭を喜ばせてやりたい。

 そんな俺の意を酌んだ結果、そうなったのだろうと旭は言う。


「更に言うなら先生が最後に現世を訪れた日は何時ですか?」

「……そこは考えてなかったな」


 旭がここに戻って来た日よりも当然、前だ。

 単純に時間の流れが早い遅いというだけでは片付けられない。

 だってもしそうならこの状態で俺が外に出れば旭の視点では過去に戻ってしまう。

 俺の都合に合わせてこちらの時間の流れが細かに変動していると考えるのが自然か。


「仮に先生が現世における時間の流れを許容していなければ私の来訪時期はズレていたでしょう」


 俺が現世に幾度か戻って旭との時間軸が合ってからって感じだろうか。


「マヨヒガ側でやっているだけとはいえ個人の都合で時間の流れにすら干渉出来るのです」

「……異世界人を連れ出すぐらいはやれる、か」


 そういうことなら問題ないな。


「どうよテュポーン? 一緒にこっちの日本観光でもしないか?」

「嬉しいけれど……良いの?」

「勿論」

「フフ、ならお言葉に甘えさせて頂こうかしら」

「先生! 私も! 私も同行してよろしいでしょうか!?」

「ああ良いよ」


 そういうことになった。


「……ちょっともう怖いぐらいだな」


 食後、準備をしてから現世に帰還。

 俺が二人を連れて行く形にしたからかまだ住み慣れない我が家の居間に出た。

 カレンダー付のデジタル時計を見れば日付は旭がマヨヒガに帰還した日のもの。

 時間はやはり俺の都合が良いようになっているらしい。

 ここまで良いこと尽くめだと逆に怖くなってしまう。


「おじさま、ここは?」

「先生の自宅だということは分かるのですが」


 我が家は何の変哲もない古めの平屋だ。

 しかし力ある人間は何かを感じるのだろう。


「ここは相続した祖父さんの家でな」


 退職を機に家賃もかからないしとここに移り住んだ。

 そして遺言書を見つけマヨヒガの存在を知りという感じ。


「今はもうどこからでも飛べるが最初はここに入った瞬間、マヨヒガに飛ばされたんだ」


 俺がそう答えると二人はぐるりと室内を見渡しそれぞれの見解を述べ始めた。


「……現世とマヨヒガを繋げる楔のようなものか?」

「多分、そうでしょうね。具体的に何がどう作用しているのかは分からないけれど」

「見た限りでは普通の家屋にしか思えん」

「私たちが引っ掛かりを覚えたのはマヨヒガという前提知識があったからかしら?」

「恐らくはな。先生の御祖父様は本当に何者なのか」


 俺も気になるが死人に口はないからな。


「とりあえず寛いでてくれ。俺は良さそうなイベント探してみるから」


 季節は初夏。夏の大型イベントには当然、間に合わない。

 が、そもそも年二回のアレには一度も出たことがないし今のとこそのつもりもない。

 直にというのはこれが初めてなのだ。まずは丁度良い小規模なものを探してみるつもりだ。


「先生。何なら私が先生単独のイベントを開催致しましょうか?」

「止めろよ何の罰ゲームだ」


 零細同人作家が単独でイベント開くとか晒しものかよ。

 ……いやコイツならサクラを動員しそうだな。。

 慄きつつノーパソを起ち上げ検索をしてみると案外直ぐに見つかった。


(規模もジャンルもお誂え向きって感じだがこれもマヨヒガ効果か?)


 もしそうならさっきも言ったがちょっと怖い。

 いや流石に考え過ぎか? あまりにも無法過ぎて疑心暗鬼になってるのかもしれない。

 ネガティブな思考を追い出し、規約をしっかり読んでから参加申請を送る。


「印刷所は旭の家が管理してるとこに任せて良いんだよな?」


 何か表向き普通の印刷所だが裏で護符やら何やら刷ってるところがあるらしい。

 そのためか設備もかなり上等なものを使っているのだとか。


「お任せください」

「ありがとう。じゃあよろしく頼むよ」


 コネ使うのはアレだが適度に旭のガス抜きをしないとな。

 さっきみたいに単独イベントで箱確保されたりしたら怖いもん。


(流石に俺の意思を無視することはないだろうが……)


 熱量を考えるとな。やっぱ念には念を入れておきたいっていうか。


「……」

「どうしたテュポーン?」


 口元に指を当て何やら思案顔をしている。

 何かおかしなことでも発見したのだろうか。


「いえふと思ったのだけど」

「うん?」

「おじさまって厄介ファンに住所知られちゃったのよね」

「おい誰が厄介ファンだ。殺すぞ貴様」


 旭の反論を無視しテュポーンは続ける。


「何か昔、そういう映画あったなって。小説原作だったかしら?」

「……」


 異世界にもあるんだミ●リー……。

気に入って頂けましたらブクマ、評価よろしくお願いします。

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