第1話「10年間」
海翔と中学で出会って、親友のまま10年。
ずっと仲良く過ごしてた。
その間、ずっと片思い。
海翔の恋を応援しながら一番近くにいるなんて――バカみたいだよなと、たまに思う。
あいつの恋愛相談に乗ったり、彼女とのデートの下見に付き合ったり、
カッコいいデート服を一緒に選んだりもしてきた。
海翔はモテるから彼女は途切れないけど、あまり長続きもしない。
新しい人と付き合う時も別れる時も、そのたびに、
胸の奥が小さく締め付けられる。
でももちろん、そういう意味では元々期待なんかしてないから、本当に小さく痛むだけ。
海翔がいろいろな子と付き合う中で、
オレも何度か告白された子と付き合った。
デートとかなら出来るけど、
どうしても、触れる気になれなかった。
当然、しばらく付き合った後で、振られる。
「結くんって、私のこと、好きじゃないでしょ?」
今日もそう言われて、彼女と別れてきたところ。
――当たり。完全にバレてる。
自分を好きかどうかって、女の子は皆、鋭いよな……。当たり前か。
オレは、自分が海翔以外を好きになれないのも痛いし、
オレを好きだと言ってくれる相手にも、ほんとに申し訳ないと思ってる。
好きになれたらいいのに、とも、本気で思ってる。
別に、別れる前提で付き合ってるわけじゃない。
オレを好きだと言ってくれる子を、海翔よりも好きになれたら。
どんなに楽しいだろうと、いつも思って、付き合う。
――結局、それは叶わなくて。
別れるのって、やっぱり、かなりメンタルやられる。
あいつ以外の男には興味ない。
だから、告白された女の子と付き合ってみるけど、
どんな子と付き合っても、
あいつと同じように、好きになれないって。
――呪いにでもかかってるみたいだ。
疲れて、ソファに仰向けになって、
電気をぼーっと見つめる。
「私のこと好きじゃないでしょ」
この言葉。何人に言われてきたんだろう。
手を出さないからっていうのもあるかもだけど、
それ以外のところでも、バレてる気がする。察知するんだろうなぁ……。
海翔は、オレの「好き」に、10年間気づかないのに。
気付きもしないで、オレに恋愛相談とかしてくるのに。
……鈍いよな。
って、まあそれは当たり前か。
オレは、バレるようなこと、一切してない。
親友に完全に徹してきた。
あいつの恋をめいっぱい応援してきてるんだから気づくわけがない。
「……なんか――疲れた、な……」
このまま一生、
オレはもしかしたらずっとあいつを好きで、
誰にも触れることもできずに、一人で、ずっと。
海翔が女と付き合うのとか、
結婚して子供とかできて幸せそうにしてるのを、
応援しながら見て生きていくのかな。
お前も早く良い奴探せよ、なんて言われたら……
――消えたくなりそうだな。
勝手に想像した言葉に、喉の奥が痛くなって――
見つめていた電気が、滲む。
バカみたいだ。
勝手に想像して、勝手に、こんな気持ちになって。
――あいつと会うの……やめようかな。もう。
離れるしかない気がする。
離れれば、好きって感じることも増えないから。
そしたら、忘れていけるかもしれない。
そう思うのに、それはそれで切なくて、
どうしようもない気持ちになる。
ああもう――なんかもう……
マジで、呪われてる。
その時、家のチャイムが鳴り響いた。
時計を見ると、もう宅急便とかが来る時間ではない。……誰だろ?
インターホンの画面を見ると、海翔だった。
なんとなくホッとして。
――はっきりと、嬉しくて。でも、まずい、と気づいた。
「ちょっと待って」と伝えて、慌てて顔を洗う。
泣いてたのバレないかな。
鏡で確認してから、玄関に急ぎ、ドアを開けた。
3話で完結予定です♡
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