表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】レイののんびり異世界生活~英雄や勇者は無理なので、お弁当屋さん始めます~  作者: 夢子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/104

喧嘩を売るなら買ってやる!

 ジュダス・ギャイルの罪を暴き、無事捕縛(ラップ)したことで、ギャイル侯爵家に強制捜査に入ることが決まった。


 責任者はこの国の王子であり、A級冒険者でもあるギルフォード。


 そして副責任者はジェラルドの側近タロイ。


 格下の侯爵家相手に次期国王であるがジェラルドが捜査に向かう訳にはいかず、ジェラルドはお城にお留守番だ。


 そして当然王弟のジェイクもお留守番。


 二人ともとても悔しそうな顔をしていたけれど、そこは仕方がない。


 本来ならタロイとその仲間たちだけで行くところだけど、ギルフォードは母親の件があり兄たちに懇願した。


「ギャイル家には私を向かわせて下さい!」


 ギルフォードのお願いに兄たちは頷いてくれた。





「ねえ、ギルフォードさん、ギャイル家のお屋敷ってアレだよね? メッチャでかくない?」


「まあ、侯爵家だからね、あんなものだよ」


「ふーん、あるところにはやっぱりあるんだねー」


 ギルフォードの討ち入りに、レイは当然ついてきた。


 メイソン、ゾーイだけでなく、ケンとカークも一緒だ。


 ギャイル家の屋敷を見上げレイは「ほへー」と間の抜けた声を出す。


 ギャイル家の屋敷は王家の持ち物だというギルフォードの屋敷よりずっと大きい。


 侯爵家だからか、それとも自分の家の力を誇示するためのアピールなのか、それとも使いたいお金が沢山あるからか。


 わざわざ王城に似た色合いを選んで作った屋敷を見て、住んでいる者の性格がレイには分かるようだった。


(王女が降嫁したとか、元宰相がいたとか、ジュダス・ギャイルにとって王族の血を引いていることは自慢だったんだろうなー)


 レイが呆れた気持でいると、王城から近いギャイル家にはあっという間に着いてしまった。


 そして王家の馬車が屋敷に着けば、先ぶれを受け取ったギャイル侯爵夫妻とその娘フアナが待ち構えていた。


「ギルフォード殿下、我が家にお話があるとの先ぶれを頂き、居ても立っても居られず待っておりました」


 何を勘違いしたのか玄関先にいたギャイル家の皆は着飾っている。


 娘のフアナに至っては、馬車から降りたばかりのレイのところまで香りが来るほど香水臭が酷い。吐きそうだ。


 それに (昼間っから夜会に出るのかい?) と聞きたくなるほど化粧も濃いしドレスも派手だ。


 レイは後ろからギルフォードを気の毒そうに見つめた。

  

 (これ、絶対フアナ嬢への婚姻の申込みだと思われているよね?)


 真剣顔のギルフォードはレイの同情には気づいていないようだった。



「あの、殿下……そちらのお嬢様は……?」


 ギルフォードに夢中になっていたギャイル家の者たちだったけれど、ギルフォードの後ろにレイがいることにやっと気が付いたようだ。


(この人たち、私が小さいから見えなかったとか言わないよねー? ()るよ)


 年下であるトイとジェフリーに身長で負けたレイは少し卑屈だった。


 フアナが胸を張りふふんと勝ち誇ったような顔をしているので尚更だ。


 子供相手にライバル意識を持つフアナはイタイ女性そのもの。


 ギルフォードはレイの方へ視線を送り、紹介するか悩んだような表情を浮かべた後、手招きしレイを隣に立たせた。


「……こちらは愛し子様だ」


「なんと! 我々に愛し子様をご紹介いただけるのですか?」


「あら、まあ、愛し子様でしたの……フフフッ、確かにそれ以外で小さなお子様がギルフォード様のお傍にいるはずがありませんものねー」


 クスッとフアナがレイを見て笑う。

 このちんちくりんな子供はギルフォードの傍にふさわしくない。

 その目がハッキリとそう言っていてレイは喧嘩を売られたと感じた。


(ほうほうほう、私に喧嘩を売るのかね、フアナ嬢……ならば百倍返しにしてやろうじゃないか!)


 ギルフォードの母を追い詰めたギャイル家。

 そしてギルフォードをいじめたフアナ嬢。


 喧嘩を売るなら買ってやる!


 友人であるギルフォードへのこれまでの悪事の仕返しを、レイはしてやる気満々だった。





「それで、ギルフォード殿下、本日はどのようなご用件で?」


 豪華な応接室に通され、ソワソワしているギャイル侯爵がギルフォードに問いかける。

 ジュダスはエルフのような美男子オジだったけど、ギャイル侯爵はその辺に居そうな普通のおっさんだ。それもジュダスよりだいぶ年上、たぶん五十代ではあるだろう。


 まあ着ているものが一流品なので侯爵だとは分かる。

 その横で黙り込み薄い笑顔を浮かべるギャイル夫人の方がレイは威厳がある気がした。


「ジュダス・ギャイルのことで話があって来た。ジュダスの行動についてギャイル侯爵はどれほど把握しているのかな?」


「ジュ、ジュダスですか? フアナではなく? え、ええ、その、弟は私が結婚する際にこの屋敷を出ていき、今は別邸で暮らしておりますので、私はたまにしか顔を合わせません。妻や娘が時折様子伺いでジュダスの下に行っておりますが、ジェラルド殿下の信頼も厚く元気でいると聞いております」


 ニコニコ顔で答えるギャイル侯爵。

 ギャイル侯爵はどうやら弟の行動を全く把握していないようだ。


 フアナさえギルフォードの妻になればギャイル侯爵家は安泰。

 そう考えている普通の貴族男性に見えた。


 だけど夫人は違う、ジュダスの名が出た途端笑みが消え顔色が悪くなる。

 この人は何か知っている。

 レイのシックスセンスがピンときた。


「……夫人は、メッサリア様は、ジュダスから何か話を聞いていませんか?」


「……私は……」


 メッサリアはそこまで言いかけて黙ってしまう。

 きっとギルフォードが来たことでジュダス・ギャイルに何かあったと悟ったのだろう。


 楽観的なギャイル侯爵とは違い、メッサリアの方は多少は周りが見えているようだった。


 なのにメッサリアはギルフォードの母親を追い詰め毒を渡した。

 その愚行にはそれなりの理由がある。


 そう思っていたが、彼女の様子を見れば思ったよりも単純なことなのかもしれなかった。


 何故ならフアナ嬢が()()によく似ていたからだ。


「メッサリア様、貴女、ジュダスのことをどう思っていますか?」


 突然のレイの声掛けにギャイル侯爵とフアナは「?」と疑問を浮かべたけれど、メッサリアにはその一言だけで伝わった。意味を理解しビクリと体が震えだす。


()()()()()、貴女、何かをジュダスに頼まれましたね?」


「……っ!」


 その言葉だけでメッサリアを脅すのは十分だった。


 メッサリアは急に立ち上がると部屋を出ていこうとする。


 もちろん忍者(タロイ)がそれを許すはずがない。

 タロイに腕を掴まれ、ゾーイに取り押さえられたメッサリアは「違う違う」と喚き出す。


 意味が分からないギャイル侯爵とフアナはぽかんと間抜け顔だ。

 だがハッとするとギャイル侯爵はギルフォードに怒りを向けた。


「ギルフォード殿下、それに愛し子様も、妻に何をするのですか! メッサリアは侯爵夫人ですよ!」


 怒るギャイル侯爵にギルフォードもレイも冷めた目を向ける。

 ここまで来てもメッサリアが何かしでかしたと、この侯爵は分からないようだ。


「ギャイル侯爵、我が母に毒を渡し、飲むように勧めたのは貴方の妻です!」


「は?!」


 ギルフォードの言葉が理解できないようで、ギャイル侯爵はまた間抜け顔だ。

 だけどフアナはキッと目つきを鋭くし怒りを露にする。


「嘘よ! お母さまがそんなことするわけないわ!」


 フアナがギルフォード……ではなく、何故かレイを睨んでくる。

 八歳にしか見えない少女にこの女はどこまでも喧嘩を売りたいようだ。

 レイは笑顔でそれに応えることにする。


「本当のことですよ、フアナ嬢」


「なんですって!」


「それに多分メッサリアはジュダスと恋愛関係にあったのではないでしょうか? ねえ? メッサリア……」


 「離して」と喚いていたメッサリアが、レイの言葉を聞き大人しくなる。

 それこそ「そうです」と言っているようなものだが、首をふるふると横に振り違うと意思表示する。


「お、お母さまがそんなことするわけないでしょう?! 貴女、子供のくせに生意気なのよ!」


 フアナは結局レイがギルフォードの傍にいるのが気に入らないのだろう。

 母親のことよりも、レイが子供だと主張したいようだ。


「私が子供? ですか? 喚き散らす()()()の方がよっぽど子供のようですがねー?」


 レイはくすくすとフアナを見て笑う。

 今のレイは悪役令嬢気分、背は低いし座っているがフアナを見下してやった。


「な、なんですって! この私を馬鹿にするだなんて許さないわよ!」


 ギルフォードとあまりかわらない年齢のはずなのに、フアナの言動や行動はまるで子供だ。

 レイは(こいつ喧嘩相手にもならないなー)と思いながら、呆然としたままのギャイル侯爵に声を掛ける。


「ギャイル侯爵、私は鑑定が出来るんですよ、それもとても詳しくね……」


 意味深な言葉を掛け、レイはゆっくりフアナを見る。


 『本当に貴方の子供なのか鑑定して上げましょうか?』


 レイの視線の意味をギャイル侯爵は理解した。


 「やめて! フアナは関係ないでしょう!」


 メッサリアもレイの言葉の意味を当然理解し、叫び出すが世の中そんなに甘くない。

 ゾーイに押さえつけられ、叫ぶことを止められる。


 そんなメッサリアの様子にギャイル侯爵は十分に答えが分かったようだった。


「そんな……まさか、メッサリアとジュダスが……」


 自分を裏切っていたのか? ギャイル侯爵の言葉は続かなくても分かる。

 視線がメッサリアとフアナの間を行き来する。


 ギルフォードはギャイル侯爵から視線を外し、今度はメッサリアと向かい合う。

 

「メッサリア……ジュダスが誰とも結婚しなかったのは、貴女を愛しているからではない」


「えっ?」


 ギルフォードの言葉にメッサリアは眉を寄せる。

 ジュダスに何を言われたかは分からないが、ギルフォードの言葉を全く信じていないようだ。


「ジュダスは……あなた達を最初から選んでいなかった。まだ幼いジェシカ王女の王配になる気でいたんだよ」


「えっ?」


 ジェシカ王女は十二歳、そしてジュダスは三十後半、貴族ならばあり得る結婚かもしれないが、子供を作る義務のある王配となればあり得ない。


 なのでメッサリアはここでもまだギルフォードの言葉を信用しようとはしなかった。

 ギルフォードがジュダス本人が言っていると再度言えば「嘘よ!」とまた騒ぎ出した。


「あの人は私を愛してるって言ったわ! それに、私たちが王位に就くには、あの子が邪魔だってそう言ったのよ!」


 王妃の子供たちにはさほど興味を示さなかった王様が、ギルフォードには深い興味を持った。

 その上側妃にしたエミリを王様は深く愛し、また子供を作る可能性もあった。


 フアナがギルフォードと結婚したとしても、ジュダスには大きな徳はない。

 そもそもジュダスは王位を欲していた。

 欲しいものはそれだけだった。


「メッサリアを連れていけ」


「はっ」


 ギルフォードの指示でタロイの部下がメッサリアを連れていく。

 ギルフォードの母親に毒を盛ったも同然だ。

 軽い罪では許されないだろう。


「ちょっと、何なの? なんでお母様を連れて行くのよ! ねえ、お父様も何か言ってよ!」


 茫然としているギャイル侯爵はフアナに揺さぶられても動かない。

 妻と弟の裏切り。

 その上二人は王族相手に犯罪まで犯していたのだ。

 この先のギャイル侯爵家の未来が見えたのだろう。


 フアナをギルフォードの妻とし、王妃の父親になりたかったギャイル侯爵とは欲の次元が違う。

 真っ青になり動かなくなったギャイル侯爵の代わりに、レイがフアナに優しく教えてあげた。


「フアナ嬢、ギルフォードさんが何故この家に来たのかまだ分かりませんか?」


「えっ?」


 レイを睨みつけるフアナは、今自分がどんな顔をしているか分かっているのだろうか。

 ()()()()に良く似た美人顔が台無しだ。

 まあ化粧が濃い時点でだいぶマイナスだけど。


「ギルフォード様は私に婚姻を申し込みに来たのでしょう? だからこの家に来たのよ」


 そんなことも分からないの? とフアナが薄っすらと笑みを浮かべレイを睨んでくる。

 その顔を見てギルフォードは子供時代を思い出したのか暗い顔だ。


 フアナが浮かべた笑みは、レイの大っ嫌いな貴族の顔だった。


「貴女馬鹿ですね、ギルフォードさんが貴女みたいな女性と結婚する訳がないでしょう?」


「なんですって!!」


 扇子で殴りかかろうとしてきたフアナの腕をレイは掴む。

 そしてにっこりと笑って現実を教えた。


「貴女はギャイル侯爵夫人メッサリアとジュダス・ギャイル不貞の子です」


「はぁ?」


「そして貴女の両親は自分たちが王位に就くため、愚かなことに王家の人々を殺そうと企みました」


「な、何を言っているの……そんなわけ、あり得ないわ……」


 信じたくないフアナだろうが、ギャイル侯爵のあまりの様子にレイの言葉を聞いて不安になったようだ。「ギルフォード様」と助けを求めるように声を掛けたが、レイが腕を握っているのでギルフォードの傍に駆け寄ることは出来ない。

 フアナが離して欲しそうにレイを睨むが、そんなこと絶対にするわけがない。

 これまでのことを考えれば、フアナの腕の一本や二本なんて折ってやってもいいぐらいだった。


(子供時代のギルフォードさんを苦しめたこと、これぐらいじゃあ許されませんよ!)


 レイはまたニコニコと笑い、フアナに話しかける。

 ギルフォードが言われた言葉をお返しするために。


「フアナ嬢は可哀そうな人ですね、両親に恵まれず、父親だと思っていた人は助けてもくれない、貴女はこれからずっと一人ぼっちで生きていくのですよ、本当に可愛そうな人。まあ侯爵家の娘として生きてきた貴女が、平民となってどこまで頑張れるかは私には分からないですけど、めげずに頑張ってくださいね……」


「そんな……そんなこと……」


 ある訳ない。

 フアナはそう言いたかったようだが言葉は続かない。

 ギャイル侯爵や周りの様子を見れば誰の言い分が正しいのか、フアナにもやっと理解できた様だった。


「ギルフォードさん、行きましょう。ここにはもう用はありません、私たちのお家に帰りましょう」


「ああ、そうだね……でもまずは王城に行かないと、兄上たちが心配している」


「ああ、確かにそうですね。じゃあ王城へ行きましょう。……フアナ嬢、どうぞお元気で」


 床にしゃがみこんだフアナにレイは手を振りギルフォードと部屋を出る。

 これからギャイル侯爵家は隅々まで調べ上げられる。

 もちろんジュダスが住んでいた別邸もだ。


(ちょっとフアナ嬢は可哀そうだったかもだけど、まあ、いじめっ子は成敗しないとねー)


 ギルフォードの背中をさすり、点滴をする。

 泣いていないけれど、母親の死因がハッキリと分かったのだ。

 今はギルフォードの傍に寄り添っていたかった。


「ギルフォードさん、ルオーテに戻ったら美味しいもの沢山作るからね、楽しみにしててね」


 レイの言葉にギルフォードはいつものキラキラした笑顔を浮かべる。


「うん、レイの作るごはん、楽しみにしてるよ」


 そう言って笑ったギルフォードは、もう落ち込んだ顔などしていなかった。

こんばんは、夢子です。

本日もお読みいただきありがとうございます。

またブクマ、良いね、評価など、応援もありがとうございます。


フアナはジュダスによく似た美人です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ