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【完結】レイののんびり異世界生活~英雄や勇者は無理なので、お弁当屋さん始めます~  作者: 夢子


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王妃様とのお茶会

「今はヨハネの薔薇が見ごろなのですわ、ですので今日はこちらの東屋で薔薇とお茶を楽しみましょう」


 レイたちは薔薇の宮殿の廊下を通り、中庭へと移動した。


 てっきりどっかの応接室に通され、豪華絢爛な部屋で堅苦しいお茶会でも始まるのかと思っていたレイは拍子抜けだ。

 まあ個室だと警戒されると思っての王妃なりの気遣いなのかもしれない。

 ただでさえギルフォードと王妃の仲は注目されている。

 いらぬ勘繰りを避けるために『外』という開けた場所をワザと選んだのかもしれなかった。


「さあ、愛し子様、こちらのお席へどうぞ」


「有難うございます」


 案内された東屋には大きな丸テーブルが置いてあり、椅子は三つだけ。

 レイとギルフォード、そして王妃の席が準備されていた。


 東屋の周りには白いバラが咲いていて、王妃の言う通り本当に綺麗で見ごたえがある。

 薔薇には詳しくないレイだけど、その香りと薔薇の美しさに感動を覚えた。


「今日は折角ですので薔薇の紅茶を準備させましたの、ビリジアン王国で有名なローズティーですわ。愛し子様のお口に合えばいいのですけど……」


 メイドが出してくれたお茶は薔薇紅茶で少しピンクがかった色だ。

 お茶請けは薔薇の形をしたクッキー。


 薔薇の宮殿だけに薔薇尽くし。

 内緒だがレイはちょっとだけ笑いそうになった。


(えーと、何かあったらヤバいから一応解毒魔法掛けとく? お茶とお菓子に掛ければいいかな? 解毒!)


 レイは誰にも気づかれないようにそっと解毒の魔法を掛ける。

 どうやらお茶にもお菓子にも毒は入っていないようで、ホッとする。


 もし毒があれば何かしらお茶とお菓子に動きがあるはずだ。

 じっちゃんに内緒で毒キノコを食べた時はキノコがキラキラと光っていた。


 毒持ち程キノコは美味しいと聞いていただけに一度食べてみたかったのだ。

 残念ながら食べた毒キノコは美味しくはなかったし、じっちゃんにも怒られ最悪な日となったけれど、今思えば楽しく懐かしい思い出だった。


「義母上、頂戴いたします」


 王妃が最初にお茶に口を付けると、ギルフォードが王子様らしい笑顔のままそっと紅茶を飲んだ。

 きっとレイよりも先に毒見としてお茶を飲んでくれたのだろう。


 解毒が終わっていますとはこの場で言い出せないだけに、もどかしさが募る。


(ギルフォードさん、普通に飲んで大丈夫だから!)


 ジュリエッタだったらレイの心の声をキャッチしてくれるけれど、残念ながらギルフォードには無理だった。笑顔だけど警戒している。そんな表情でお茶を飲む。


 ギルフォードがお茶を飲んでいる背後からはメイソンの緊張具合が伝わって来て、レイは (メイソンさん、急に切りかかったりしないよね?) とちょっとだけドキドキしていた。


「義母上、とても美味しいです。レイ様も是非、香り高いお茶ですのでレイ様も気に入られると思いますよ」


 ギルフォードの三割増し笑顔がレイに向けられ頷く。

 「このお茶は大丈夫だよ」と表情だけで伝えてくれているが、今更 「知っています」 とは言い出せない。


 いや、そもそもホストである王妃の前で 「解毒しましたよ」 なんて言えるはずがなかった。


「うん、本当に美味しいですね、それにバラの香りが素晴らしいです」


「まあ、流石愛し子様ですわね、この香りが分かりますか? オホホ、愛し子様に気に入っていただけて私も嬉しいですわ、この紅茶は私のお気に入りのお茶ですの……」


 レイに向けられる王妃の目が優しい。

 きっと王妃様は本当に薔薇が好きで、それをレイに紹介したくてこの場を選んでくれて、お菓子やお茶も自分のお気に入りを出してくれたのだろう。


 王妃の心配りにレイは嬉しくなる。

 顔つきは確かに悪役にぴったりかもしれないけれど、レイの前にいる王妃は綺麗なものが好きな優しい女性だった。


「王妃殿下」


「はい、愛し子様、何でございましょうか」


「私のことはどうかレイと気軽に呼んでください、ギルフォードさんもいつもはそう呼んでいるんですよ」


「まあ、ギルフォードが? お二人は仲がよろしいのですね」


「はい、ギルフォードさんには()のように可愛がってもらっています」


「あら、まあ」


 オホホと笑う王妃の前、ギルフォードは何を言ってるのと困惑気味な顔で「レイ、様?」とレイの名を呼ぶ。


 ギルフォードはあまり王妃に自分の情報を与えたくないのかもしれないけれど、レイは王妃が気に入った。


 美魔女であることは努力の結晶。

 頑張る女性を応援したい。


 同じ女としてそれがレイの答えだ。

 王妃を悪役令嬢に祭り上げた犯人を許す気はなかった。


「レイ様、でしたら私のこともどうぞアンジェリカと呼んでくださいまし、親子以上に歳は離れておりますが、お友達になって下されば嬉しいですわ」


「勿論です。アンジェリカ様、宜しくお願いしますね」


「ええ、こちらこそ」


 お互いにニコニコと笑顔を浮かべ、ちょっと年の離れたお友達になった。


 そんな様子を見てギルフォードの呆れた視線が伝わってくるが、今は無視だ。

 レイのシックスセンスが冴えわたっているから大丈夫など、この場では伝えられないので仕方がないだろう。


 ギルフォードさん見守っていてね、と笑顔でどうにか伝える。


「アンジェリカ様、私、アンジェリカ様にお土産があるんです」


「まあ、私に?」


「はい、期待して良いですよ」


「まあ、オホホ」


 夜なべして作った鏡を空間庫から取り出す。

 街中では空間庫を使ってはダメだと言われていたけれど、愛し子として過ごしている今なら大丈夫だろう。


「これは私が作った手鏡です。裏には孔雀を描いてみました、気に入っていただけると良いんですけど」


「まあ、なんて美しいのかしら……」


 薔薇の宮殿に住んでいると前もって知っていたら薔薇を描いたけれど、アンジェリカは孔雀も気に入ってくれたようで、少し頬を染め見入るように手鏡の裏を見てくれている。

 作り手としては嬉しい限りだ。

 レイはニヤニヤしながら次の品を取り出した。


「これはシュシュです、髪飾りですね」


「しゅしゅ?」


 レースや宝石を付けたシュシュを何個も取り出す。

 赤や黒をメインにして多めに作ったけれど、薔薇好きなアンジェリカならばピンクや黄色も好きなはず。

 レイがテーブルにシュシュを並べていくとアンジェリカが目を見張った。


「これほどの数を私のために?」


「はい、王妃様の、いえ、アンジェリカ様の美しさを想像して作りました。きっとアンジェリカ様にはいろんな色が似合うだろうなと思っていましたが、その通りでした。アンジェリカ様は美の女神そのものです、本当にお美しい」


「まあ、レイ様ったら……」


 白く美しく整えられた手で口元を押さえ、アンジェリカが恥ずかし気に微笑む。

 

(美女のデレ頂きました! ご褒美最高!)


 嬉しそうなアンジェリカの前、大満足なレイはソフトクリームヘアー用に作ったリボン型の髪留めも出していく。


「まあ、こちらも可愛らしいですわ」


 リボン型もアンジェリカは気に入ってくれたようで、作ったレイとしてはホクホクだ。


 沢山あるのでメイドの皆さんにもどうぞと声を掛ければ、アンジェリカは「そうさせて戴きます」と答えてくれた。


(異世界は見た目が百パーセントなのかな? 王妃様めっちゃ優しいいい人じゃん)


 アンジェリカが何故悪役になっているのかはレイには分からないけれど。

 愛し子であるレイに悪感情がないことだけは分かる。


 なんやかんやしていると、メイドさんがおかわりのお茶を準備してくれた。


 レイが念のためまた解毒魔法を掛けると、レイのお茶だけキラリと光った。


(あれ? 私、毒盛られた? 絶対に光ったよね?)


 お茶を運んでくれたメイドさんをジッと見つめる。


 これだけの人がいる中、どうやって毒を盛ったのかとっても気になったからだ。


「おお、なるほど、そういうことか」


 レイが突然ポンと手を打ち頷き出したため、アンジェリカやギルフォードから視線が集まった。


「ゾーイさん、その人、毒を指に付けてます。人差し指が汚れてるから見てみて」


「……っ!」


 レイの言葉を聞き、ゾーイは躊躇なく動きメイドを押さえつける。

 抵抗する間も与えずゾーイはメイドを床に叩きつけた。


 そして同時に動いたメイソンがメイドの腕を掴み、毒がある人差し指を確認する。


「レイ様、確かに、これが毒ですね」


 メイドの指先にある半透明の毒を見つけメイソンがレイに聞いた。


「そう、その人、私のカップだけ触り方が汚かったんだよねー。その人黴菌メイド、ウイルス発生源だよ。毒が入っていなくても指が入ったお茶なんて私が飲むわけないじゃん、ばっちいし」


「……」


 捕まったメイドが自決しないようメイソンがその場にあったナフキンを口に突っ込んだ。

 むがむがと何かを叫ぼうとしているが無駄な抵抗だ。


 敵を目の前にしてメイソンとゾーイが手を緩めるはずがない。

 メイドは二人の手によって縛り上げられた。


「王妃殿下、これはどういうことでしょうか……」


 真っ青になったアンジェリカをギルフォードが睨みつける。

 もう義母上とも呼ばない。

 敵を目の前にした状態で、怒りが分かる態度だ。


「……わ、私は……」


 気丈に振舞うアンジェリカ。

 だけどその手が震えている。


 レイはアンジェリカの傍に行き、そっと手を添えた。


「ギルフォードさん、違うよ、アンジェリカ様は悪くないよ」


「レイ?」


「多分ね、これは王妃様のお茶会にギルフォードさんが連れてきた()()()を狙った犯行なんだよ」


「えっ?」


 ぽかんとするギルフォードにレイは探偵らしいニヒルな顔を向ける。


「私がもしこの場で死んだら、アンジェリカ様もギルフォードさんも責任を追及される。それに護衛のメイソンさんや、ゾーイさん、タロイさんだってただでは済まされないでしょう?」


「……レイ……」


 レイは自分に酔っていた。

 名探偵らしい自分の姿に心底酔っていた。


 犯人はまったくもって誰かは分からないけれど、この中にはいない、それだけは確実だ。

 だから得意げな顔でレイは呟いた。


「犯人はこの城の中にいる!」


 当然のことを言っただけのレイに、皆が尊敬の目を向けたのだった。



こんばんは、夢子です。

本日もお読みいただきありがとうございます。

またブクマ、評価、いいねなどもありがとうございます。


ギルフォードには実は婚約者候補がいるんですよねー。

彼女を出したいけれど出せるかな?

まだそこまで書いていないのです。

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