レイの準備と恋愛事情?
レイが「王妃に会いたい」と言ったことで王都へ行くことが決まった。
それと共にギルフォードからある依頼を受けることになった。
それは「王子様の解呪」だ。
ギルフォードの甥っ子であるジェフリー君という名の王子様が、どうやら呪いのせいで体調を崩しているらしい。
ケンやカークが持っていた栄養ドリンクをゾーイの兄タロイに持たせたそうなので、きっと体調は戻っていると思うが、もし呪いだった場合ジェフリー君は再び体調不良になるのは確実。
なのでギルフォードは愛し子であるレイに「解呪」の指名依頼を出したいと申し込んでくれたのだが、レイはその話に快く頷いた。
貴族とか、貴族とか、貴族は大っ嫌いだけど、別に貴族に会いに王都に行くわけではないよね。
私はギルフォードさんの家族に会いに行くのだ!
貴族の言いなりになる訳じゃないんだからねー!
と、そんな言い訳を自分自身にしたレイ。
あれだけ毛嫌いしていた貴族だけど、ギルフォードの家族は別枠、王族だ。
と、そんなことも言い訳にしてでもレイは王都に行きたかった。
何故ならそれは、依頼であれば無料で王都に行ける! から。
それもギルフォードという案内人付き!
それが嬉しかった。
それにレイはこの世界に来てからまだ一度も街で遊んでいない。
ルオーテの街が汚すぎて歩きたくないのが原因だ。
楽しみにしていたショッピングも、買い食いも、レストラン巡りも何もかもしていない状態なので欲求不満となっていた。
なので嫌いな貴族に会うことになっても王都に向かいたい。
そんな気持ちの傾きがあった、それは確かだった。
(あのエイリーンさんも王都には色々なものがあって楽しいよって言ってたんだよねー、期待が高まるに決まってんじゃん! ムフフ)
すぐにでも出発だと思ったのが、王妃様との面談を考えると『お伺い』に時間がかかるらしく、そんなに急いでも意味がないので、レイは王都へ向かう準備をゆっくり始めた。
手作りの可愛いワンピースを準備し、そして男装用の衣装も当然準備する。
それにギルフォードの家族へのお土産、それから途中の宿泊で必要なものもちゃんと揃えた。
王妃様に会うならドレスがあった方が良いかなぁ? と考えれば、ギルフォードが用意してくれるといった。
きっと王城では色々なしきたりもあるのだろうと、レイはギルフォードのその言葉に甘えることにした。その上ケンやカークの護衛役の衣装も揃えてくれるらしい。
流石お金持ち!
そう思ったがやっぱり良心が痛む。
あまりにも至れり尽くせりだからだ。
「あのね、難しい解呪をお願いするのだからこれぐらいは当たり前なんだよ」
「そうなの? いいの?」
「当然だよ。それに解呪できたらちゃんと依頼料も払うから安心してね」
「ふぉお! ギルフォードさん、私、頑張りますね!」
握り拳を作り、レイはギルフォードに宣言した。
呪いの一つや二つ、このレイ・アルクが解呪して見せましょう!
王都が楽しみで仕方がないレイは強気だった。
(それにしても解呪ぐらいでこんなに準備してもらえるなんて、ラッキーだよねー、ギルフォードさんと知り合いでマジでよかったー)
誰にも解けない呪いを解く役目を引き受けながらも、レイはいまいちその価値が分かっていないようだった。
「ドルフさーん」
「おう、レイ、こっちだ、こっち」
今日、レイは冒険者ギルドの前でドルフと待ち合わせをしていた。
ドルフの昔のパーティー仲間がルオーテの街に戻ってきたため、レイとも顔合わせをすることになった。
牛丼の発明者としてドルフが紹介したいそうだ。
律儀な人である。
「こっちが俺の冒険者仲間のエイトだ」
「俺はエイトだ、坊主、ドルフから色々聞いた、俺たちのために本当にありがとなっ!」
出会ってすぐエイトはレイに頭を下げた。
その横に立つドルフは顔が赤い。
エイトにどうレイのことを話したのかは分からないけれど、どうやら自分たちの恩人のように話してくれたらしい。
レイはテレテレで可愛いドルフを見て(いいもの見れた)とニコニコしながらエイトに挨拶を返す。
「エイトさん、初めまして、ドルフさんの友人のレイです。どうぞよろしくお願いします」
得意の四十五度で挨拶をすればエイトはダハハと楽しげに笑った。
ドルフの横に立つエイトは細身で成人男性にしては少し背が低いため、ちょっと頼りなさそうに見えるが笑い方は豪快だった。
「それでお店はいつから始めるんですか?」
ギルドの食堂に入りドルフとエイトに話しかける。
お祭りの売り上げで牛丼屋を始める話は出たが、どうするかはドルフとエイト次第。
二人の話し合いがどうなったのか、レイは気になっていた。
「ああ、商業ギルドに登録するのも今更めんどーだからよ、ギルド内で始めたいってギルド長に話したんだ。そしたらギルドの端にある使ってない小屋があるからよー、そこで牛丼屋始めても良いって言ってくれたんだ。あそこなら一般人も買いに来れるからよー」
「おおう、流石ギルド長、気が利くぅー」
「だな」
小屋がどこかはレイには分からないが、ギルド長の気遣いには感動した。
モーガンが怪我をした時も出張扱いにしてあげていたし、優しい上司だとエドガーの株が一気に上がった。
「まあ、二人で改装して、店はエイトが管理して、俺は手伝い程度だなー」
「エイトさんが店長さんってことですか? ドルフさんは?」
「ああ、俺は冒険者を辞めるつもりはないから、オーナーって感じか? それにお前のことも心配だしな」
きゅんっ。
(やだー、ドルフさんてばカッコいい!)
思わぬ言葉にレイはきゅんとした。
きっとこういうところがドルフのモテるところなのだろう。
ただそれが成就しないだけに却って可哀そうでもあるが。
「ダハハ、ドルフ、お前、接客が苦手なだけだろうが、俺に丸投げだろう?」
「うっせー、俺は祭りでちゃんと接客してたんだ、昔とは違うんだよっ」
「ダハハ、お前が接客? レイが一人で頑張ってただけじゃねーのか?」
「うんな訳ねーだろ、祭りでも俺が店長だったんだぞ! 馬鹿にすんじゃねー」
言葉は悪いながらもドルフとエイトは楽しそうで、なんだか男子学生のじゃれ合いのようで微笑ましく、一緒にいるレイまで楽しい気持ちになれた。
「あ、あのさー、話し中悪いけど、ちょっとその子に用事があるんだが、いいかい?」
ドルフとエイトの話し合いを見守っていると、女性パーティーである『バダンラの華』のリーダーベリンダが声を掛けてきた。
レイが男装の麗人みたいでカッコいいとべた褒めするベリンダは、どうやらレイに用事があるようで、申し訳なさそうにドルフたちを見つめていた。
「ああ? なんだお前、俺たちがーーイテッ!」
緊張からか喧嘩腰に返事を返すドルフの足をレイは踏む。
今会ったばかりの人に何故喧嘩腰なのか、本当にこの人は口が悪い。
ドルフさん、本気で彼女を作る気がある?! と睨みつけながら、ベリンダには笑顔を向けた。
レイの姿を見て本当の紳士というものをドルフには学んでほしかった。
「ベリンダさん、何か困りごとですか? もしかしてお弁当のことでしょうか?」
レイと言えばお弁当。
そう思って声を掛けたのだが、ベリンダは困った顔をする。
「あー、えっと、ここで話すのは、ちょっとな……」
やだー、もしかして恋の告白ですか? 大歓迎!
あり得ない想像にワクワクしているレイの横、怖い顔のドルフが立ち上がった。
「てめえ、この野郎、レイを呼び出して何するつもりだ、こいつは俺のーーイテッ!」
また喧嘩腰のドルフの足を踏む。
エイトが下を向き肩を震わせているが、泣いているわけではなくどう見ても笑っている。
ドルフとの友情はどこへ行ったのか……あとで聞いてみようと思った。
「すみません、ベリンダさん、ドルフさんは少し心配症で……」
「あ、ああ、知ってる。いつもあんたのことを守ってるのを、知ってるからな……」
ベリンダはそう言って少し頬を染める。
あれ? もしかしてそういうことですか? とレイは色々感づいてニヤニヤしそうな口元を誤魔化した。
「ドルフさん、エイトさん、僕、少しベリンダさんとお話してきますね」
「レイ、お前……」
「ドルフさん、ベリンダさんは良い人だから心配いらないですよ、いつもお弁当買ってくれる僕のお客様なんで」
そうなのか? 本当に大丈夫か? と未だに渋るドルフを宥め、レイはベリンダと少し離れた場所へ移動する。
(えー、これって絶対ドルフさんのこと教えてってやつだよね? 彼女とかいるのって聞かれちゃうかもー、キャー、やだー、どうしよー!)
異世界初の恋愛イベントにレイのワクワクは最高潮だ。
出来る限りドルフから離れ、ベリンダが話やすい空気を作り出す。
「それでベリンダさん、お話とは何でしょうか?」
「ああ、あのさー、坊主は確か、ケンとカークと仲がいいんだったよね?」
「え、あ、はい、そうですが……」
あれ? もしかして目当てはそっちだった? とドルフの恋が消え去りレイはがっくりと肩を落とす。
まあでもケンでもカークでもどんとこいだよ!
恋愛モード一色のレイの前、ベリンダは申し訳なさそうに話しを始めた。
「あのさ、あの二人の持ってる鞄って、もしかしてあんたが準備した?」
「えっ? 鞄?」
恋愛とは全く関係ないことを問われたレイは、ベリンダにすぐに答えることが出来なかった。
こんにちは夢子です。
本日もお読みいただきありがとうございます。
またブクマ、評価、いいねなど応援も有難うございます。
やる気頂いています。
エイトさんは細身な男性。
ドルフと同じく二十代です。
ちゃんと年相応に見えます。




