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【完結】レイののんびり異世界生活~英雄や勇者は無理なので、お弁当屋さん始めます~  作者: 夢子


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王都出発と赤薔薇

「メアリ、お世話になりました。毎日のお世話を有難う、とても心地よい王都生活になりました。全部メアリのお陰だよ、本当に有難う」


「レイ様……」


 レイがお礼を言えばメアリが目を潤ます。

 ぎゅっと抱きしめ合いハグをするとレイも泣きそうだ。

 メアリはレイに優しすぎて離れるのが辛い。

 だけどどうにか堪えて今度はベイリーの方へ向く。


「ベイリーも、有難うございました。タウンハウスでの生活はとても過ごしやすかったです。ベイリーがルオーテの街へ来てくれる日を楽しみに待っていますね」


「レイ様、有難うございます。こちらを整え次第ルオーテへ向かいます。どうかそれまでギルフォードの様のことを宜しくお願い致しますね」


「うん、任せといて、いっぱいご飯を食べさせてふくふくにしておくからね」


「フフッ、はい、宜しくお願い致します」


 ギルフォードがルオーテ辺境伯になるということで、ベイリーとメアリ、その他数名の使用人たちがギルフォードの領地へ来ることになった。


 領主邸は元ビアス領主の屋敷となる。

 ギルフォードは慣れない領主仕事に屋敷の管理、それから冒険者の仕事まである。


 S級冒険者になったし引退したらと思ったけれど、ギルフォードは若いし、冒険者が本職だ。

 領主仕事は譲れても冒険者の仕事は譲れない。


 それに「ロビン・アルクのような冒険者に僕はなる!」と気合を入れているので止める気はない。


 それにビアスの領主付き補佐官のオルトと、王妃であったアンジェリカがギルフォードの傍にはいてくれるので心強い。


 それにギルフォードには親友でもあり幼馴染でもあるメイソンとゾーイがいる。


 教え子であるケンとカークもギルフォードの力になるだろうし、レイだって街の清掃には協力する気満々だ。


 なのでギルフォードの進む道にはなんの憂いも無いし、ベイリーとメアリが来てくれたら尚更だろう。


 レイはその日が待ち遠しかった。


「レイ、そろそろ行くよ」


「はーい、ギルフォードさん、確認はもう終わったの?」


「ああ、もういつでも出れるよ、何の問題もなかったからね」


 愛し子(レイ)の送迎のため王城から来てくれたタロイと旅の行程の打ち合わせ中だったギルフォードは、確認が終わったようでレイに声を掛けてきた。


 ギルフォードがレイの傍にいるベイリーとメアリに視線を向け微笑む。


「二人ともここ数週間お世話になったね、有難う。ルオーテへ来るのは急がなくてもいいからね。無理をせずゆっくり来て欲しい、僕の方もビアス領主の屋敷を確認する時間も必要だからね。義母上が来る前に義母上の部屋だけでも完璧にしておかないと」


「ギルフォード様、それこそ我々の仕事でございます」

「そうですわ、ギルフォード様、私たちがなるべく早くルオーテへ参りますので」


 二人の言葉にギルフォードはゆっくり首を振る。

 その顔はどこか子供のようで、楽しみが目の前にあるそんな様子だ。

 ギルフォードがアンジェリカを迎え入れることを心待ちにしていることが分かる。


「私が義母上のために動きたいんだ、レイも力を貸してくれると言ってくれているしね」


「うん、任せて、私、リノベは得意なの! じっちゃんの家を可愛くリノベしたのは私だからね!」


 胸を張るレイを見て皆が楽しげに笑う。

 リノベの意味は分からないが、子供が張り切っている姿は可愛らしくて和むのだろう。

 忍者タロイまでクスッと小さな笑みを漏らしていた。


「さて、じゃあ、そろそろ出発しようか、帰りも長旅になるからね」


「はい、じゃあ、メアリ、ベイリー、またね。ルオーテで待ってるからね」


「はい、レイ様、またお会い致しましょう」

「レイ様、気を付けて下さいませね」


「うん!」


 馬車に乗り込み二人に手を振る。

 王都からの出発だけど、田舎に住むおじいさんとおばあさんの家に遊びに来た孫気分でちょっと嬉しい。


 タウンハウスを出て王都の街を見ながらギルフォードに声を掛ける。


「ギルフォードさん、これから忙しくなるねー、辺境伯爵様だもんねー」


「ああ、そうだね、やることは山積みだよ、だけど楽しみしかないかな。僕の傍にはレイがいるし、皆がいるし、それに心強い味方達も王都から来てくれるからね」


「うん、私もたくさん協力するから()()()いい街にしていこうね」


「……僕とレイで()()()?」


「うん、だってギルフォードさんの作る街は()()()でもあるんだもん、世界一住みやすい街にしてランキング一位にして見せるんだー」


「……」


 ワクワクが止まらないレイの前、ギルフォードは何故か頬を染めていた。

 嬉しいからかな? 

 レイはこの時そう思っただけだったのだが、この日の夜、その理由が分かるのだった。




 トントントン。


「レイ、まだ起きているかい?」


「ふぇ? ギルフォードさん? どうしたの? 何かあった?」


 王都からの帰り道。

 王都に近い高級宿へ泊ったレイたち一行。


 ケンやカーク、ゾーイと一緒に宿で過ごしていたレイとは別行動で、ギルフォードとメイソン、そしてタロイは街の視察に出たようだった。


「ちょっと用事で出てくるけど、レイは大人しくしててね」


「うん、勿論だよ、ゾーイさんたちと部屋で遊んでるねー」


(自分の領地の参考にでもするのかな?)


 そんな考えだったレイは深く考えることなどせず、いってらっしゃいとギルフォードたちを当たり前のように見送り、そして宿自慢のお風呂に入り、皆とトランプを楽しみ、そしてそろそろ寝ましょうかということでゾーイと別れ就寝……と思っていたらギルフォードが声を掛けてきた。


 なにか緊急ごと? とレイが思うのは当然で、急いで部屋の戸を開けてみれば薔薇の花束を持ったギルフォードが立っていた。


(えっ? ギルフォードさんと赤薔薇? メッチャ似合うー! 笑)


 キラキラ笑顔のギルフォードに赤薔薇はピッタリで、王子様そのものな姿にレイは「おおう」と思わずそんな声が出てしまう。


「……レイ、今、大丈夫かな?」


「うん、大丈夫だよ? なんかあった?」


 もしかしてお母さんのことでも思い出して寂しくなっちゃったのかな?

 そう思ったレイはお姉さん気分でギルフォードに声を掛ける。


「ギルフォードさん、良かったら一緒に寝る? ベッド大きいし」


「いやいやいや、それはまだ早すぎるよ。それより、その、ちょっと、僕の部屋に……星が凄く綺麗に見えるから……レイに見せたくて……」


 一緒に寝るのが早すぎると断られ、レイはもうとっくの前に一緒に寝たよね? と思ったが、そこには突っ込まず星を見ようという言葉には頷く。


「天文観測、私()()()()、嬉しいな」


「そ、そう? なら良かった……」


「? うん、じゃあ、ギルフォードさんの部屋に行こうか」


「あ、ああ……」


 なんだか様子の可笑しいギルフォードとギルフォードの部屋へ行く。

 そしてベランダへ出れば、確かに綺麗な星が見え、レイは「うわー」と感嘆の声を漏らした。


「ギルフォードさん、ほんと、キレーだね、見せてくれて有難う。みんなで夢中になってトランプしてたから外を見るなんて意識してなかったよ」


「う、うん、なら良かったよー」


 レイが話しかけても何となくギルフォードは上の空。

 いや、なんだかそわそわして落ち着かない、そんな様子だ。


 もしかして襲撃でもあるのだろうか?


 そんな考えが浮かび、レイは空だけでなくあっちこっちへと視線を送る。

 だが街は静かなもの、誰かが潜んでいる気配も様子もない。


 ここには忍者がいるのでそれも当然だ。

 忍者の気配ならずっと感じている。


 ならギルフォードの変な様子は何なんだ?


 レイのギルフォードへ向ける疑問の乗った視線は赤い薔薇の花束で遮られた。


「レ、レイ、これ、僕からのプレゼントだ……」


「プレゼント?」


 今更誕生日のプレゼント?

 そう思ってみれば確かに薔薇は十二本。

 レイの年齢の数だった。


(ギルフォードさん、そこまで誕生日プレゼントを渡せなかったこと気にしてたんだぁ……)


 レイの誕生日の日、ギルフォードはレイの家に来ていた。

 お誕生日おめでとうの歌を唄ったレイを見て「プレゼントを用意してない」とギルフォードは机に突っ伏していた。


「有難う! ギルフォードさん、めっちゃ嬉しい! 薔薇なんて初めてもらうよ!」


 薔薇の花束なんて前世、今世ともに初めてのレイはギルフォードに笑顔でお礼を言う。

 遅れていても誕生日プレゼントは嬉しい。

 それに薔薇はこの世界では貴重だ。

 お金持ちのギルフォードらしいプレゼントで嬉しくなる。


「よ、喜んでもらえて良かったよ……その……その薔薇が、僕の気持ちだから……」


「薔薇がギルフォードさんの気持ち?」


 はて? おめでとう? という意味なのか?

 それともアンジェリカと友人おめでとうということなのか?


 薔薇の本数の意味など知らないレイはちょっと困惑気味だ。


「レイ、これからは僕と()()()ルオーテの領地を良くしていこう」


「うん、勿論だよ、ギルフォードさんの仕事を手伝えるのが一番の楽しみだよ」


 街を大改造! やりたい放題だ。

 ニヤニヤ笑うレイを見て、ギルフォードはホッと息を吐きレイの前に膝をつく。


「レイ・アルク嬢、君はまだ幼い、僕はこれから大人になる君の足かせにはなりたくなかった、でも君と一緒に歩む未来ほど楽しいものはないと気づいた。だから……幼い君からの求婚を受け入れたいと思う。まだ君が大人になるまでは時間がかかる、だけどどうか僕の手を取って欲しい。レイ、僕は君が大事だ、君が成人したら僕と結婚して欲しい、どうかお願いします」


 ギルフォードの言葉を聞き、レイの思考は一時停止する。


 誰が誰に求婚?

 誰と誰が結婚?


 意味が分からず 「はい?」 と疑問の声が出た。


「有難う、これでこれから僕たちは婚約者同士だ。レイ、少し年上の僕だけど、どうか宜しくね」


「はい?」


 レイがまた疑問の声を上げると、わー! という歓声と拍手が周りから聞こえてきた。

 振り返るレイの瞳には友達の笑顔が映る。


 メイソン、ゾーイが笑顔と拍手で「おめでとうございます」と声を掛けてくる。

 ケン、カークが笑顔と拍手で「レイ、おめでとうございます」「レイ、やったな」と声を掛けてくる。

 そしてタロイが笑顔と拍手で「ジェラルド様に報告ですね」と声を掛けてきた。


 いや待て!

 誰が結婚するんだよ! 

 話はそっからだ!


 祝福に照れてデレデレする新S級冒険者に対し、レイは冷静に声を掛けた。


「すみません、ギルフォードさん、そもそも私、誰とも結婚する気が無いんですけど」


「はっ……?」


「ってか、私からの求婚って何? 結婚ってどっからでたの?!」


「えっ……?」


「それと」


「な、なに?」


「薔薇十二本の意味、私分からないんですけど?」


 レイの言葉を聞き、ギルフォードはその場に手をついた。

 そして他の皆は何事もなかったような顔をして部屋から出て行った。


 残されたレイはクスクス笑う。


(まさか私が求婚していることになっているとは……)


 一体いつだろうと思い浮かべてみるが、全然分からない。

 誤解を生むような態度など、見せたことは一度もないはずだ。


 これが異世界の摩訶不思議?

 それともレイの言葉使いのせいなのだろうか?


 疑問一杯だが、とりあえずレイは友人を励ますことにする。


「まあ、ギルフォードさん、まずはお友達から始めましょうか?」


「えっ……? そっからなの? えっ? 僕、友達だとさえ思われてなかったの?」


「ぶふっ!」


 ショックを受けるギルフォードが面白い。

 レイは項垂れるギルフォードの背中を摩りながら、にやにや笑う。

 微妙に頬が赤いがそこはレイ本人も気づかない。


(まあ、前向きに検討してみても良いかな、ギルフォードさんお金持ちだし)


 結婚なんて……と思っていたレイだったけれど、ギルフォードとならいいかなと、結婚についてちょっと考えを改め始めていた。


「ギルフォードさん、未来はどうなるかは分からないんだよ」


「何それ、占いみたいで怖いんだけど」


「まあ、諦めたらそこで試合終了ってことですよ」


「ますます意味が分からないよね!」


「アハハ!」


 元気を取り戻し、レイに突っ込むギルフォードを見てレイも笑う。


 じっちゃんを亡くした時はこんな楽しい未来が待っているだなんて分からなかった。


 取り敢えず生きていくだけ稼いで静かに暮らそう。


 そう思って街に出たけれど、今は友達が沢山できて家族のような人たちもいる。


「ギルフォードさん、有難う、私、とっても幸せだよ」


 そう言って笑ったレイは、愛されるために存在する愛し子らしく幸せな笑みを浮かべていたのだった。



おわり

こんばんは、夢子です。

遂にレイの物語が完結いたしました。

今回は百話を目標にネタを作り、毎日投稿を決めて頑張って書いてきました。


途中インフルエンザにかかり、ストックが無くなり毎日投稿の危機に陥りましたが、皆様の応援のお陰で何とか乗り切ることが出来ました。本当に有難うございます。

それと心配をしてお声がけくださった皆様有難うございました。


投稿中、ブクマ、評価、いいねを下さった皆様。

本当に感謝しかありません。有難うございました。

毎日数値をチェックするのが私の楽しみでした。

増えている日はハッピーを頂き仕事も頑張れました。


それから誤字脱字報告、感想を下さった皆様。

読んでくださる方がいることを実感でき私の執筆の糧となりました。

有難うございました。


今回のお話の主人公レイ君は、綺麗好きでキレやすく、変なところで小心者。

そんなイメージで書いてきましたがいかがだったでしょうか?

少しでも皆様が笑って下さったら嬉しいなと思います。


それとまだ出せていないキャラがおりまして、もしこの後評価が貰えたら来年には第二章を書きたいなーなんて気持ちもあります。

成長した?レイが気になる方はぽっちっと★を押していただけると嬉しいです。(笑)


この後は人物紹介を夜に投稿し、日曜まで閑話を投稿する予定です。

そして年内の予定としては途中で連載が止まっている踏み台令息の連載再開と、途中まで書いた短編を投稿できたらいいなと思っています。


そして来年の目標としてはちょっと重い話も書いてみたいというのがあります。

あと希望頂いたお話の続きも書いてみたいし、やっぱり笑える話も書きたいですね。


どこまで出来るか分かりませんが皆様の応援があれば頑張れる気がします。

出来ましたら今後も夢子の小説にお付き合いしていただけたら嬉しいです。

どうぞよろしくお願いいたします。


2025年12月11日、夢子でした。

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