ゲーム世界に転生したのでシナリオを満喫する事にした
スマホ、タブレット、PCで出来るオンラインプレイ可のRPG、『オリジンスパイオンライン』。
キャラメイクの幅は広く、性別選択は任意、種族は吸血鬼、魔女、突然変異魔人の三種類。髪色も目の色も服装及びカラーバリエーションも豊富にある。
そしてタイトル通り、主人公は「魔物側の」スパイとなり、人間界に送られる。
目的は、人間が行う精霊神の復活の阻止と、魔神の復活+世界征服。
ただし、とある章で主人公=プレイヤーが選択するシーンが一つ。
このまま魔物側に着くか、人間側に寝返るか。
それによって、シナリオは二分する。
ここ最近俺が一番好きなゲームだ。
なら、何故俺がゲームの事について長々と考えているかというと。
「……という事で、レオを人間界へ送り込む。しっかり頼むぞ」
「………はい」
全く、本当に全く意味が分からないが、俺はゲーム世界に転生してしまった様だ。
どうやら俺は『レオ』という吸血鬼らしい。よりによって弱点が多い種族なのは何故なのか。
「我らの目的はかの魔神、ベイル様を復活させる事だ。その為には、人間界に住まう憎き精霊神、ニーファの再起を妨害し阻止しなくてはならない。忘れるなよ」
「心得ております」
ベイルの腹心、アムネスに釘を刺されたのでそう答える。
こうして俺は、人間界へ送り出された。
─────
降り立った先は、建物が並び立つ街の裏路地だった。本格的にゲームのシナリオが開始したらしい。
どの種族を選んでも支障が無いようにか、スタート直後の時間帯は深夜と決まっているが……反映されていた様で、それは本当に有難い。
広い通りに出て辺りを見渡す。時間が時間だからか、どの店も閉じているし人通りもない。とりあえず、突然現れた存在を見つけた人はいないようで一安心だ。
……人間が、邪魔をしているんだよな。
元は人のはずなのに、魔物に転生してしまったからなのか、今は邪魔をする人間が疎ましい。……種族に精神が引き摺られている、のか。
「……行くか」
兎にも角にも、今自分は日が出ている間は動けない。夜のうちに調べて回って、宿を確保して、金も確保して、自分の実力も確認しなければ。
初日にしてやることは山積みだが、シナリオがある程度進行すれば宿問題は困らなくなる。それまでの辛抱だ。
それに、ゲームの記憶があるという事は、多少なりとも使える知識がある証明にもなる。
残念ながら、すべてクリアしきる前に訳の分からない転生を強制されたが……どうせなら、こっちでゲームのエンディングを確かめてやろうじゃないか。
こうして俺は、現実となったゲーム世界で生きる事になったのだった。
息抜きなのでこれが連載になる事は100%ないです。こんな不完全体を世に解き放つな。