プロローグ
プロット・・・なしw
今の日本において武を極めることにあまり意味はない。つまり武に全てを捧げた自分の半生もまた無意味なものに近い。
しかし、自分はたまらなくこれが好きなのだ。
ありとあらゆる道場に通いまくった。さまざまな先生に師事した。
武芸百般
30に届く手前でこう呼ばれるようになった。
あらゆる武術、格闘術に精通し遺憾なく発揮できる自信がある。
だが結局、現代日本においてこれほどまで無意味なことはない。
わたしの技術は武であって格闘技ではない。
ボクシングでは4回戦クラスのプロにも勝てぬだろうMMAでは名前も知らない選手にも敗北するだろう。
だが武器を、暗器を、急所攻撃を使っていいのなら・・・。
眼球を、金的を、喉を、背部を、攻撃していいのなら・・・。
ありとあらゆる格闘技チャンピオンに勝利できる自信がある! 断言できる!
正直、自分は子供でしかない。アラサーにもなって危険なおもちゃを振り回したがっているクソガキなのだ。
年齢も武道もこれは解決してくれないのだ。
だからこうやって郊外の山に入って山籠りもどきをしているのは、大人になれない自分を紛らわせている。
「ブルルルルル・・・」
猪だ。かなり大きい、普通の猪は体高が70cmほどだがこいつは1m以上ある。流石に見上げるほどではないが自分の胸の高さくらいはある。
夜間の森林では野生生物と角でバッタリ・・・なんていうのはよくある話なのだ。
「へへへ・・・。範馬勇次郎みたいにホッキョクグマは無理だがテメェくらいなら多分なんとかなるぜ・・・」
なんとかなるというのは強がりもある。普通の猪ならともかくこのサイズは初めてで突進されれてしまえば自分はひとたまりもない。
自分から猪まで5m程だろうか、猪は臨戦態勢でいつこちらに突っ込んできてもおかしくはない。
猪から目を離さないように20cmばかりの木の枝を拾い、こちらも戦闘準備が整った。
「フッッ・・・!」
「ブモォ!?」
猪が飛びかかるその瞬間、猪の眼球に枝を投げつけて刺した。
生物は攻撃を行う瞬間だけは痛みに対する耐性が弱くなる。覚悟をしているなら急所の攻撃も耐えられようが、攻撃に移り変わるその時は痛みの覚悟を手放さなければならない。
「こうなっちまえば俺の勝ちよ!」
枝が刺さり視力の失った方から猪に飛び込み腰のナタを下から振り上げて猪の頸動脈を切断することに成功した。
「よっしゃぁ! これで当分の食料には困らんぜ!」
これまでにない大物を仕留めた確信からつい大声が出てしまう。死と隣り合わせになることで噴出したアドレナリンが収まらない。
「ブヒィ・・・・・・!!」
「あ!?」
猪がその図体に似合わない情けない鳴き声を鳴らしながら踵を返して全力で駆け出してしまった。
「またんかい!」
自分もまた全力で追跡したが野生動物とヒトの脚力の差は残酷である。
人類最高を誇ったウサインボルト並、あるいはそれ以上速度を動物は山林の斜面でいとも簡単に出すことができる。猪もその例外ではないのだ。
この羽原 駕梁がいかに体力自慢といえどもそこまでの脚力は持ち合わせていない。
「クソ! また飯抜きだ!」
4日目を迎える山籠りでようやく会えた獲物を追跡するもあっという間に見失ってしまった。
「腹減ったな・・・・・・」
空腹が自分の底にある不安不満を呼び起こしてしまう。
わかっている。こんな山籠りもどきでは自分の願いは満たされない。
ただ古の武術家の真似事をしてなんとかその場しのぎのストレス発散をしているだけだ。
苛立ちを覚えた喫煙家がタバコを吸ってとりあえず落ち着こうとするのと同じなのだ。
「はぁ・・・」
武術の世界では自分は一目置かれるだけの技量はあるとわかっている。しかし、ひとたび一般社会に出れば自分はアラサーにもなってアルバイトで食い繋ぐ情けない大人でしかない。
自分の技術は世の中で飯の種にならないことは重々承知つもりだが、それでも認められたいという承認欲求からは逃れられていないのだ。
「帰るか・・・」
結局何も得られることは何もない。山籠りをしていまさら強くなるわけでもない。むしろいい歳して何をやっているんだという情けなさをより自覚するだけだった。
「しかし、ずいぶん奥まで来ちまったな・・・・・・」
気づけば獣道しかない山の奥まで来てしまった。
「どこだここ?」
見慣れない場所まで来てしまい、帰り道を見失ってしまった。
「もしかして・・・・・・遭難したか・・・?」
頭によぎったワードを口にしてしまった瞬間にどっと脂汗が吹き出すのがわかる。
何度も入った山だからと油断していた。カッコつけてナタとナイフだけ持って着の身着のままで山に入り、3日も飲まず食わずだったので獲物を見つけてつい冷静さを欠いてしまった。
「まずい・・・・・・」
悪い現状を自覚してしまうと同時に一気に自分のコンディションを自覚してしまう。
4日間飲まず食わずであること、十分な休息もとっておらずすでに疲労困憊であること。
それでもなんとか帰途につくために足を進め続けた
「ぉおお・・・お?」
歩みを進め続けていると眩暈がするようになってきた。空腹と疲れで体が鉛になったかのように重い。しかし帰途は見つからない。足をなんとか進め続けるも見知った場所に出ることない。
焦りと死の恐怖に耐えはするものの、ストレスとなり体の負担はより増していった。
(意識が・・・)
心を折ることはなく歩みを続けたものの疲労のピークに達した体が動かなくなりついには倒れてしまった。
意識を手放しそうになる中木々の間から夜明けの光が差し込もうとしていた。
(綺麗だな・・・)
日の出の暖かさと美しさに包まれながら駕梁は静かに意識を手放した。
ガチで思いつきで書き始めたものなんでどんな作品になるとかもわかんないです。
完結を目標にしてちまちま書いていこうかなと思います




