才色兼備で優等生な幼馴染が俺にだけ超ドSな件
「ありがとう如月さん、すっごく分かりやすい」
「ほんと、解説も丁寧で理解しやすいよ。流石、学年1位!」
クラス内で女生徒の群れがある一つの机にできていた。
その机の主の名前は如月伶香
どうやら勉強会でもしているみたいだ。
「私なんかで良かったらまたいつでも訊いてね」
そこで勉強を教えている彼女は学年1の秀才で生徒会長。和風美人という言葉が似あう黒髪ロングの清楚系お嬢様な外見をしている。そのスペックを有しておきながらお高くとまっている訳ではなく誰にでも優しい完璧な人物と言っても過言ではなかった。
こうした勉強を教えるなど面倒見の良い性格もあって女生徒の人気はもちろん、その美形な容姿も相まって男子生徒の人気も高いらしい。
そして、そんな彼女、如月伶香は俺の幼馴染だ。
俺、三河大智は平凡で特に彼女と接点があるわけではないのだが、唯一、関わる機会ができるのが生徒会だった。
生徒会長の彼女を補佐するのが生徒会での俺の役割だ。
放課後、俺はいつも通りに生徒会室へと向かっていた。
すると遠目からでも生徒会室の電気がついていることが分かった。
生徒会室の明かりがついていることに気づいた俺は走らない程度に急いだ。
というのも、補佐といっても生徒会の仕事はほとんど会長自ら片付けてしまう。そのため生徒会で特に役に立てていない俺は生徒会室へせめて1番最初に着いておいてほかの役員が自分の仕事に集中できるように雑務を片付けようと心掛けていた。
誰かが先に来ているということは俺の存在意義が脅かされる事態だったのだ。
ちょっと駆け足気味になったが先生には気づかれていないので、まあ良いだろう。
廊下を走っては怒られるが今はそれどころじゃない。俺のアイデンティティの方が大切だった。
生徒会室に着くと俺はすぐに扉を開けた。そこにいたのは、俺の幼馴染。如月伶香だった。
「あれ、会長。お早いですね、雑務は俺に任せてください」
彼女は俺の唯一の仕事である雑務をこなしていた。
卒倒しそうになりそうだったが平静を装て話しかけた。
また、生徒会の役目をこなしている間はたとえ同級生であっても会長という立場を尊重して敬語で話していた……
と、いえば聞こえはいいが、実態は単純に俺が彼女にフランクにタメ口をきく度胸がないだけだ。
だって、彼女は学園内に大勢ファンがいて、そんな彼女にいくら幼馴染とはいえ馴れ馴れしく接したりすれば反感を買うのは確実だ。なるべく余計な誤解は避けたい。だから距離をとるために敬語を使ってあくまでも会長とその補佐という立場として会話をしていることを周囲に強調していた。
俺はただ平穏な生活をしたいだけだった。
「あら、三河くん。そうね……分かったわ、あなたの仕事をとっては悪いもの」
そういいながらも彼女の雑務をこなす手は止まらなかった。
「あれ?会長……雑務なんて俺に任せて会長は自分の仕事に集中してていいんですよ?」
そう俺が訴え掛けたが彼女の手は止まらない。むしろさっきよりもペースアップしていた。
このままでは俺の役割が……俺の居場所が無くなってしまう……
血の気が引いていくのが自分でもわかった。
彼女の方を見てみると、そんな顔面蒼白になった俺を見ながら口元がにやついているようにみえた。
そう……俺の幼馴染は誰にでも優しいと思われているが俺に対してだけはなぜか超ドSだった。
今もこうして役割を失くしてしまった俺を見て満足そうに微笑んでいる。
その表情はこの事情を知らない者が見れば天使のように見えることだろうが俺にとっては悪魔でしかなかった。
すると、俺が意気消沈しているのに気が付いたのか
「ごめんなさい三河くん。今日は私の補佐としてあなたに手伝って欲しいことがあったから雑務をさせるわけにはいかなかったのよ」
なんだそうだったのか。それならそうだと早く言ってくれればよかったのに。
「もう人が悪いな~会長は。早く言ってくださいよ。会長の補佐をするのが俺の役目なのでぜひ頼ってください!」
手伝って欲しいことがあると聞いた俺は元気が戻っていた。頼られるのが嬉しいのもあるが、本来の会長の補佐としての役割をやっとまともにこなせることに安堵していたからだ。
「実は今日、他の生徒会役員と話したのだけど生徒会で学園生活や人間関係など様々なことで悩める生徒達を救済するための相談室をつくろうということになったの」
「え?そうなんですか。確かに学園生活を送るうえで悩みを相談できる場所があれば良いなと思ったことはありますが……というか何で俺だけその話を聞かされていないんですか?」
「そこで、三河くんにはその相談室で生徒の相談を受ける人になって欲しいの」
彼女は俺を無視して勝手に話を進めた。
「いや待ってください。何で俺なんですか?全然、わけが分かんないよ……」
もうパニック状態に陥っていた。なぜ俺が相談室の相談役に選ばれてるんだ?俺にそんなことできるのか?というか急すぎるだろ!何で俺だけ何も知らされていないんだ……
などなど色々なことが頭に浮かんで、もう俺の脳内は収集がつかなくなっていた。
「あら……あなた、さっき自分の仕事がなくなりそうで青ざめていたじゃない。それにあなた言ったわよね?会長を補佐するのが自分の役目だと」
「三河くんは自分の言ったことをたった数秒で撤回するようなそんな責任感のない人間だったの?」
伶香は自分がさも正当であるかのような態度をとっているが、そもそも生徒会役員で俺だけ何の話も聞かされていなかっただけでなく、相談役にまで強引に抜擢するという自分の非を棚に上げて物を言うのをやめて頂きたい。。。
しかし、確かに伶香の言うことも一理あると俺はなぜか納得している面もあった。というのも、俺は会長を補佐するためにこの生徒会にいる。そして俺はついさっき、会長にもそう言ったばかりだ。
ここで己の発言を撤回するのは簡単だが、そんな責任感のないふるまいをしていては生徒会役員として他の生徒に対して示しがつかない。
彼女にうまく乗せられているようで癪ではあるが、ここは相談役を引き受けることにした。
「分かりました。もう決まってしまった以上は責任をもって務めさせていただきます」
「そう言うと思ったわ。三河くんは責務を投げ出すような人ではないものね。」
そう言いながら彼女はにっこり笑った。いや、俺に相談役を引き受けるように誘導したのは他でもない貴方ですけどね!
伶香は俺のことを責任感が強いみたいに言ってるが、こうして相談役を引き受けたのはなかば、彼女に対しての意地という側面もあった。
まあ、それも恐らく彼女の計算通りなのだろう……。―――
―――そして、月日は流れ相談役としても自分で言うのもなんだがなかなか板についてきた。
生徒の相談といえば進路のことや人間関係のことなどさまざまであったが、当然まともなアドバイスなど俺にできるはずもなく、いつもただ話を聞くことくらいしかできなかった。
しかし、何故か生徒会の相談室は生徒の間で評判が良いらしい。
その理由は、相談に来るほとんどの人は悩みに対する自分なりの回答をすでに持っている。ただ自分の話を聞いて欲しい人が多いように見受けられる。
だから、ただ聞いているだけの俺でも役に立っているということだろう。
今日も一通り、相談役をこなして時間的にこれが最後かとか考えていると伶香が入ってきた。
「どう三河くん、調子は」
「おかげさまで、自分で言うのも何ですが俺の相談役結構評判良いんですよ。これで生徒会に少しは貢献できているでしょうか」
「そうね。生徒会であなたが相談役に適任だってみんな満場一致だったわ。私たちの目に狂いはなかったということね」
俺抜きで行われた相談室を開くかどうかの話し合いで俺はそんな風に言われていたのか。ちょっとうれしかった。
「しかし、なぜ俺だけのけ者だったんですか?今思えば俺にも話してほしかったですよ」
「もし、その話し合いの場であなたに相談役のこと話しても引き受けてくれなかったでしょう?だからギリギリまで隠してたの」
彼女はふふっと笑ってそう言った。その通りだ。俺は恐らく話し合いの場で相談役のことを言われていたらはっきり断っていただろう。俺の行動を全て予測済みというわけか。ただただ驚くしかなかった。
そんな驚いた俺をみて、彼女はシニカルな笑みを浮かべている。昔からそうだ。彼女は俺に対して優位に立っているとき、いつも心底楽しそうに笑っている。どうやら俺がたじろぐ姿を見るのが相当に好きらしい。
「ここに来たのはあなたに相談があるからなの」
彼女は唐突にそう切り出した。
「え?相談って何ですか?」
思い当たることなど一つもなかった。彼女は学業も常にトップで欠点らしい欠点も見当たらない。強いて言うなら俺にだけドSということくらいか。
「あなたは私のこと好き?」
ん?思考がフリーズした。
どういうことだ?好き?なんでいきなりこんなことを聞いてくる?
彼女のことだ絶対何か意図があるに違いない。
俺をまたからかう口実に利用するつもりか?動揺した俺をみてまた満足そうに笑う彼女の姿が目に浮かぶようだった。
ならこんな質問に大真面目に答えてやる必要はない。いつもいつも彼女の都合の良い展開に持っていかれるので俺もたまにはお返ししてやりたい気持ちになった。
「好きですよ。昔から」
どうだ、言ってやったぞ。いつも、いつも俺がたじろぐ姿を見られると思うなよ。
俺は彼女の予想もつかないような返答しようと考えていたらこんなことを自然と口にしていた。
「三河くん、実は私もあなたのことが昔から好きだったの」
まだ続けるつもりか?強情な人だな。なら俺も引くわけにはいかない。
「だったら俺たち両想いってことですよね」
「敬語…」
「え?」
「敬語やめて欲しいな」
なんだか彼女の様子がおかしい。あれ、引き際が分からないぞ。どこまでこんなやり取り続ければいいんだ?
そんなことを考えていると彼女が近づいてくる。
あれ……やばいぞ…
これもしかして本気か?
「ごめん伶香!、いつもの悪ノリだと思って適当なこと言ってしまった!でも好きだというのは本当だから」
好きというのは本当だ。人として幼馴染として……
しかし、恋愛として好きなのかどうかは分からなかった。今まで自分の気持ちを考えたことなどなかったから……
彼女に並び立つなど想像すらしたことがない。だって俺と伶香とでは立場もスペックも違いすぎる。
だから俺は無意識のうちに壁を作って敬語で接することで、自分の感情にふたをして自分に言い聞かせていたのかもしれない。
ふと彼女のほうを見ると、さっきまでのシリアスな表情とは打って変わっていつもの俺がたじろぐ姿を微笑んで眺めている幼馴染の姿がそこにはあった。
「ふふ……やっと敬語やめてくれたのね」
ああ……また彼女の思い通りになってしまった。
やっぱり彼女は超ドSだ。
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