門は突破できそうです
「次、証明出来るものを出しなさい。」
「デルフィーナ・チェーリア・マスケリーニ。こいつは連れの下男です」
「その下男を証明出来るものは?」
「立場的に持ってるはずがないでしょう、それに血まみれだし、我々は寝てる時に野盗に襲われてるんです。その時に全部失いました」
「なるほど……んじゃこの下男の名前は?」
「な、名前……」
「……凌羽」
「リョーハか、喋れるなら問題は無さそうだな」
自分の名前は森下凌羽。
最初の父親は自分が10歳になる前ぐらいに亡くなった。彼は日本人ではなく、子供の名前はロシア風に名付けられた。最初の父親とはあまり喋らなかったが、自分を呼ぶ時は別の呼ばれ方で呼んでいたのは今でも覚えている。
それが原因か、学校では暴行、盗難、とにかくいじめられ、母親が再婚してからは日本人の父親にも暴行毎日だった。
この名前は外国人受けは良かったのだが、まさかこんなところで発揮するとは思いもよらなかった。
「……ありがとうございます」
「では次!」
とりあえず検問は突破した。この女の子には後でなんとお礼したらいいか。
「あ、ありがとうございました」
「え、なによ急に」
「ここまで来たら、あとは自分の力で何とかできるかなーって思って」
「そ、そう……」
「何はともあれ、ありがとうございました……えっと、お名前なんでしたっけ」
「デルフィーナ、フィーナでいいよ」
「フィーナさんに迷惑かける訳にも行かないんで、自分はここら辺で」
「ちょっと待ちなさいよ!な、なに勝手に1人で行動しようとしてるのよ!!」
え?ど、どうした急に。バグかなんかか?目が漫画によくあるグルグル状態になってやがる。
「あ、あなたは私の下男なのよ!勝手に離れるとはいい度胸じゃない!!」
「え、えぇ……?」
「そうして門を超えたのだから、大人しく従いなさい!」
「断る理由も断れる理由もねぇ……」
確かに、あの衛兵を突破したのはフィーナさんのおかげだし、出くわしたら大変だしな。ここは大人しく従っておいた方がいいってことか。
「お、仰せのままに……」
「かしこまりすぎ、呼び捨てでいいから、フィーナって」
「ふぃ、フィーナ……」
「……凌羽だっけ」
「そう、森下凌羽」
「名が先だなんて、珍しい名前もあるのね」
「あー、この苗字嫌いだし、こっちの人の名前みたいに変えたい。」
「それって家に対して失礼だと思わないの?」
「思わない」
全くもって思わない。長年続いている家だろうがなんだろうが、この家には嫌な思い出しかないのだから。
「そ、そうなのね……」
「なんか、ごめんなさい」
「いや、深い事情があるのよね、これ以上深入りするのはやめとく。それに、敬語はやめてよね?」
「ごめん」
「すぐ謝らない!」
「ごめ……なんて言えばいいんだ」
「そりゃもう、今日はいい天気だね、とかあるじゃない」
「今日はいい天気だね」
「ごめん、私が悪かったわ」
アレクセイが、リョーシャとかリョーハになる意味がわからんのです。