【ネトゲの美少女フレに会いに行ったら男だった件】......あれ、あなたネカマじゃないって言ってませんでしたっけ?まじかよ、とりあえず飯行くか。
ある日、私はひとつのネトゲ、つまりネットゲームに出会った。
それは、MMORPGと言うやつで、そのゲームの世界ではもうひとつのリアルが広がり別の人生があった。
キャラクターを作る時、私は女を選んだ。私はいつも他のゲームでは男キャラクターにするのだが、今回は自身と同じく女にした。
事前情報では、男の装備できる物でオシャレな物は少ないらしいと知っていたのと、女性専用装備で私が欲しくなってしまった装備があったから。
「......ふん、ふん。 こんなもんかな」
作り上げた自分の分身となるキャラクターは、リアルの自分とは全く似ていない。
けど、そんなもんだろう。大抵の人は誰もが少なからず容姿にコンプレックスを持っている物だ。
私もそう。作ったキャラクターのように、頭髪は腰まであるロングでもないし明るい茶髪でもない。ついでに整った顔立ちでもない......地味な地味子だ。
まあ、そんなわけで私はもうひとつの世界を手に入れた。この世界なら自身のリアルにも苛まれないし、学校のようなクラスカーストにも悩まされない。
別談いじめられているとか言うわけではないけれど、最近息苦しくて、そういうのもあって私は二度目のMMORPGへと足を踏み入れた。
始まるオープニングムービー、流れる壮大なBGM。それらすべてが私の新たな人生を祝福しているようで何だかとても嬉しい。
「......あ、私のキャラ。 可愛い」
この世界ではどんな事が待ち受けているのだろう。わくわくとどきどき、全てが混ざり、私はいつの間にか笑顔になっていた。
白魔導師のアリスが生まれ落ちた。
そして時は流れ、一年後。
「この! 違うでしょ、そこは......あああああ、また被弾してるー! 範囲踏まないでよおおおお! こっちもいっぱいいっぱいなんだよおおおお!」
手に汗握るボスレイド。その最中、敵の攻撃により味方がどんどんHPを0へと変えて地に伏していく。
「ヤバいヤバいヤバい! 泣きそう! だって皆クリア済みって言ってたのに! 何で」
パニックになる私。それもそのはずこのパーティーは本来なら、たくさんクエストを受けたくさんクリアし、どんどんアイテムをボスからドロップさせる為のいわゆる周回パーティーだったのだ。
しかし蓋を開けてみれば、明らかに手慣れていない戦闘経験の浅いプレイヤーが何人か見受けられていた。
どんどん積み重なるプレイヤーの山。一応復活させる魔法はあるのだが、あまりに死ぬスピードが早いため、追いつかない。
そして私は見てはいけないものを目にする。このゲームでは基本的にチャットで会話をするのだが、そこに書かれているものが私の心を砕いた。
『ヒーラーなにしてるの』『早くおこせよ』『アリスさん、ヒーラーだよね、回復ちゃんとしないと』
ええええ、私、ちゃんとヒールしてたよ!?あなた範囲攻撃、踏んでましたよね!?
何で私なの!?......え、もしかして、私が悪い?
今まで結構やれてると思っていたけど、私下手だった?と、とにかくこの場は謝ろう。
戦闘が全滅という形で終了し、すぐにパーティーを抜ける者と残った者にわかれた。
『すみません、私の回復が遅くて。 すみませんでした』
とにかくこの場を修めて早く立ち去りたい。その一心で打ったチャットが彼らに火をつける。
『いやあ、これ高難度クエストだからね。 ちゃんと確認しないと』『いいかい、君には関係ないかもしれないけど、こっちだって時間無駄になってるんだから』『やっぱりこのジョブのやつは地雷率たけえな』
に、逃げられない!?なんでそんな事いうの?
早く消えたい......ヤバい。こんな思いするなら、もうこのゲームから、消えたい。
『ねえ、言い過ぎじゃない?』
え?
チャットに流れる一文。それはそれまでの物と違い、私を助けてくれる物だった。
『確かにヒール遅い事はあった。 けれど、それは君たちが床舐めてたからだろ? それでこの子はヒールが遅れていたんじゃないの?』
『は?』『お前、そいつのフレ?』『俺らが悪いってのか?』
助けに入ってくれたその人は、青い髪の女騎士で、ジョブは騎士。大きな盾と片手剣で敵をひきつける役割。
さっきの戦いではこの人が最後まで一度も倒れずに戦っていた。それどころか敵にデバフをかけて私の負担を軽減してくれていた。
『お前、俺達の称号みてみろよ? わかるだろ? Sランクってついてるだろ? これは難易度の高いクエストを何個もクリアしなければ貰えない称号なんだよ。 それをつけてる俺達に非があるなんて......そんなわけねーよ』『お前のつけてる見たこともねーような称号......ん、あれ?』
私もその騎士の称号をみて、あ、と固まる。これは、高難度クエストの中の高難度......孤独の搭をクリア、しかもソロでした証。ゼロイレイザー。
『えええ、初めて見た』『嘘だろ』『化物かよ』
『ガチ勢こわ』
などと口々に言い彼等は消えていく。ああ、私......助かった?
『なんだあいつら。 大丈夫?』
『ありがとうございます。 すみません、私、下手で。 それでこんな事に』
『下手じゃないよ。 このパーティーであそこまで生き残れたのはあんたの力が大きいよ。 自信もって』
や、優しいーーーー!!
『でもこれでゲーム怖くなっちゃったかな。 まあ、もし良かったら』
ポーン。とゲームからお知らせ音がなる。
フレンド申請=アキラ・アオイ
『私で良ければいつでも誘って。 知らない人よりましだと思うし......気持ち的にね』
『あ、ありがとうございます』
その出逢いからまた一年。
私はアキラと毎日のように冒険し、会わない日はなかった。
彼女は女騎士で、キャラクリがとても私好みでカッコ良さと美少女性を兼ね備えていた......そして、その優しくも強い性格にも惹かれていった。
花火の上がる季節も雪の降る季節も、同じものをゲームの中で見て感じて過ごす日々。
そんななか、私は彼女ともっと仲良くなりたいと思って、もしかしたらあまりよろしくないのかもしれないけれど、リアルの話をしてしまう。
『あの、一応言っておくんだけど、私、たまにオッサンみたいな発言してるんだけど......女なんだよねw』
どきどきした。それでも、私はこの人にリアルの私を知ってほしいと思うようになってしまったのだ。
ああ、リアルが嫌でこの世界に来たのに。けど、私はもっとこの人と仲良くなりたい。
すると、少しして返信がくる。
『ああ、うん。 私も女だよ! 大丈夫、安心してw』
この瞬間、私は歓喜したのを覚えている。やった、もしかしたら女同士なら、リアルでも遊んだり通話したり仲良くできるかもしれない!嬉しい!と。
『あ、ホントに!?』
『ああ、うんうん』
◇◆◇◆◇◆
俺は、今混乱している。
その理由は簡単だ。急にネトゲのフレが、私は女だと言い出したのだ。
もう訳が分からんかった。だって、この人さどうみてもオッサンの発言と行動してたんだぞ?
俺のキャラクターのパンツ覗いたり、こないだも「可愛い! 可愛いねえ......はあはあ」とか発言してたり。
俺だってアリスさんが男だと思って下ネタ言いまくってたし。
ん、いや、待てよ?これはあれか?予防線を張ってるんじゃないのか?
いや、きっとそうだ。今までの行動や発言があまりにも男っぽいから、ネカマばれを恐れた故の発言......そうだろ?アリスさん?
じゃあ、俺の方もとる手段は同じ!同じネカマ同士だからな、あんたの考えはわかった!
『ああ、うん。 私も女だよ! 大丈夫、安心してw』
よし、これで良いだろ。......良いんだよね?今更、女とか......嘘だよね?
だ、大丈夫だよね?怖くなってきたんだが!
あ、明日、学校だった。早く寝ないと。
ネトゲを落とす前に交換した連絡先。そこに表示されていた名前は穂乃花。
いやあ、徹底してるな......流石だ。尊敬するよ。
俺の方は、アオイってネトゲ名と同じ本名だったからあまり気にすることも無かったけど。
女でもアオイっているだろ?
ってか、ネカマでも女の名前が連絡先に入ってるのってどきどきするね。
他は妹と姉ちゃんと母さんくらいだし。
ポーン♪
「......ん、メッセージ? 」
『今度の日曜、一緒に出掛けない? さっき話した例のネトゲコラボ一人で行くのキツそうだからさ』
例のネトゲコラボとは、ネトゲとカフェがコラボし、そのゲームにちなんだ料理を期間限定で出すというリアルのイベントだ。
その料理を注文すると、ゲーム内で使えるシリアルコードが貰えて結構良さげなデザインの装備が手に入る。
ああ、俺もあれ欲しかったんだよな。そうそう、俺もアリスさんと同じで一人じゃ行けないから諦めてたんだよな。
まあ、確かに同性なら緊張もしないし良いか。
『わかった。 良いよ!』
『ありがとー! やったぜ!』
アリスさんと俺は奇跡的に近くに住んでいて、そのコラボをしている町まで電車で一時間くらいでつくくらいの所らしい。前に言っていた。
◇◆◇◆◇◆
~当日~
よし、美容院行ったし、メイクもバッチリ。初めて会うんだから第一印象は大切だよね。
買ったばかりの白いスニーカーを履き、ワンピースをはためかせる。
遅れないように、早めに行かないとね。
待ち合わせの場所には大きな時計台があり、そこの近くの噴水を目印にしていた。
アオイさん来てないな。居るのは、同い年くらいの男の子。少し長い髪で黒い帽子をかぶっていた。
この人も待ち合わせかな?
......通話、しちゃおうかな?番号は知ってる。けれど、今日まで怖くてかけられなかった。
わかってる。会う方がハードル高いっていうのは。
けど、通話と違い、一度こうして会う約束をしてしまえば会わざる得ない。心臓の鼓動が激しくて死を予感するレベルだけど、こういう強制力を使ってでも会いたい、友達になりたいと思う相手。
......ん?て言うか、なんか、あの男の子こっちチラチラみてない?
時計台の方を見て、私を見て......首を傾げて、目を見開いている?
そして携帯を取り出し、操作して......
ポーン!あ、私の携帯がなった。
ビクッ!と、男の子の身体が跳ねた。
私はこの時、少し真理へと到達する道筋を見つけた気がした。そして、携帯からなるネトゲのBGMとこれからボスレイドでも始まるかのような確かな雰囲気を感じていた。
携帯のメッセージを確認する。
『あの、まだつきませんか?』
......居るのか、ここに。
『来てますよ』......送信。
男の子の携帯からネトゲのボス戦のBGMが鳴った。マジかよ。
て言うか、なんでそのBGM設定してるの?相手ボスなの?
お互いに顔を見合わせる。
「......あ、もしかして、アリスさん?」
「え、あ、はい......お、男の方だったんですね」
「ご、ごめんなさい、俺......ネカマばれしないように予防線張ってるのかと。 ずっと男だと思ってて」
「あ、ああ......」
「だって、あんな変態的な行動する人が女だと思わないでしょ!」
おい!
「おい!」
あ、口に出て......まあ、いいや。
「アオイさんだって下ネタばっかり言ってた! 私が女ばれする前から! 変態はあなたでしょ!」
「だって、あんなに可愛いキャラでオッサンみたいな事言いまくりで、中身も可愛い女だなんて思わないだろ!」
「「え!?」」
いや、お前が驚くなよ!あ、お前って言っちゃった。まあ、いいか。
か、可愛い......くっ。この感情は、オーバーヒールかましたのを指摘された時に似ている。違うか。
「い、いや、違う。 悪いのは勝手に思い込んでネカマ認定した俺か......ごめん。 俺が悪かった」
......。
「あ、あの......私も。 私も勝手にアオイさんの事女だと思ってた、から。 ごめんなさい」
時計台を見るともう直ぐで十二時になろうとしていた。予約......しているのは十二時半。
そんな事を考えていると、彼も同じ事を思っていたらしく。
「と、とりあえず、飯行かないか? せっかく予約したんだし。 俺のおごりで......御詫びの印」
あ、この感じ......あの時、レイドで初めて助けてくれたときの感じに似ている。
また助けてくれようとしているんだ。
思えば、この人にはたくさん助けられてきた。難しいクエストだって、学校が辛く苦しい時だって、ネトゲの向こうにいたこの人が助けてくれたんだ。
「......い、行かねえの?」
「行く。 けど、割勘だから。 この借りはネトゲで」
「わかった」
でも私の着信音をボス戦BGMにしたのは許さない。
そういや、アリスの誕生日に欲しがってたオシャレ装備買ったんだよな。
スゲー高いからいらないって言ってたけど、あれで許してくれるかな。
そんな事を考えながら、アオイはアリスの笑い顔を眺めながら歩いていた。
そして二人は末永くネトゲの世界で、そしてリアルで仲良く遊ぶのでした。
~おしまい~
読んで頂きありがとうございました!
もし、ご好評でしたら今後の作品作りの参考にさせて頂きます!
ありがとーございますφ(゜゜)ノ




