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だから僕は勇者を殺し続ける  作者: 白山碧水
6/6

小競り合い

かつての村の門があった所。

 

 ロロは空き地になってしまった場所に振り向くと何処からかまた声が聞こえる。


 ―スキルを使用しますか?―


 この声が聞こえる度にロロは強くなっていった。

 迷わずスキルを使用する。


 ―[ 蟻の穴 ]を発動します―


 ロロの足元に5cm程の暗闇のような穴が現れ何処からか悲しげな歌い声が聞こえてくる。    


 かつて村人が山積みになっていた場所。

 大地が黒い染みで覆われ、そして黒い水がごぼごぼと湧き出し…


 その水が5cm程の蟻の形を取って固まる。

 艶も無く気配も感じない蟻達。

 数えると赤い蟻が1匹、黒い蟻が20匹。

 

 キィキィと鳴きながら近づいてきた赤蟻と黒蟻をロロは無意識に手ですくい上げると蟻達は腕を伝って肩に乗り頬ずりしてくる。


 2匹の蟻達が何かを本能的に理解したロロは二匹の蟻を優しく撫でて残りの蟻に声をかける。


「改めてみんなよろしく、一緒に勇者を殺しに行こう」


 ぞろぞろと蟻達と肩に乗った黒蟻は蟻の穴に入っていく。

 

「じゃあリゼ、行くか」

 

 頷いた赤蟻を身体にしがみつかせてロロは村を後にした。

 

 1年でロロの身長はあまり伸びなかった。


 何回目かで燻煙燻しに成功した猪革を自分なりに切り抜き紐を通して造った猪革の上着と腕抜きと脛当て。

 大きくない背嚢を背負ってから大猪の革で作った外套を羽織る。


 鹿革で作った水筒二つと小鍋を背嚢横にぶら下げて敷物用の鹿革と猪の大革を丸めて背嚢の下にかけてある。

 腰回りに刀、短剣と水筒と矢筒をぶら下げて自分の身長と同じ長さの真っ直ぐな枝を切り出し苦心して加工した猪の牙を括りつけた槍と小弓 を持つ。


 見た目蛮族なのをロロは知らない。

 

数日後、目立たない街道沿いの木陰に陣取り休んでいると遠くで金属ぶつかる音と声らしき音が聞こえてきた。


 寝具を丸めて音がある方に向かうと欠けた車輪で立ち往生している立派な黒い馬車とその周りに倒れた十数名の銀装の騎士達と馬車を守る騎士数名。


 それを囲う様に槍を向けている暗いえんじ色の鎧を着た戦士達数十名と長い穂先と裏側に返しがある斧槍を持った巨漢の騎士が銀装の騎士達に降伏勧告を勧めていた。


 

 「閣下が霊装を所望しておられる 、今渡すのなら命だけは助けてやろう」

 

 「シタール卿、力だけを求める非道な十剣の勇者なぞに霊装は渡せん!」

 

 そして騎士盾と長剣を持った隊長らしき銀装の騎士が前に出て槍騎士と打ち合いを始める。


 しかし槍騎士の間合いに入る事も出来ず斧槍の返しで盾を引っ掛けられ盾を下にして倒れかかった騎士の腕を槍騎士は最速の突きで斬り落とす。


 腕を斬り落とした騎士の背中を踏みつけ槍騎士は

 

 「全員殺せ、あと槍を貸せ」


 配下の戦士から槍を受け取り足元の騎士の太腿に槍を突き刺し地面に縫い付ける。

 

「そのまま死ぬまでそこで見てるがいい」


 顔を蹴飛ばして槍騎士は馬車に向かって歩いていく。


「神はいないのか」


土を握りしめ隻腕になった騎士は槍を抜く事も出来ず事態を見る事しか出来なかった。

 

 健闘虚しく物量で他の銀装の騎士は突き殺された。


 槍騎士が馬車の前に立つと陣営の後方から悲鳴が上がる。


「何事だ」


 槍騎士は振り向き陣営に怒鳴る。


「何か大きい蟻が、蟻が」

 

 陣営の混乱をまとめようと背を向けた槍騎士に向かってロロは駆け出していくのであった。


書き溜めた文を消失しまして。

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