超絶有能激レアスキルを持ちながらも追放された主人公は、理不尽を見逃さない
ちょっと悪ふざけがしたくなって書いた。
反省も後悔もしていない。
「おしまい」の後こそ本題。
後半は改行したとこで発言者が替わります。
「ルタ、今日この時をもって、お前をこの『傑物の輪』から追放とする。我がクランの証を返上し、出て行け」
執務室に冷たい声を響かせているのは、国内トップの実力派冒険者クラン『傑物の輪』のクランマスター、クーズィ。
そして、豪奢な革張りの椅子に腰掛ける彼がゴミでも見るような目で見据える先にいるのは、『傑物の輪』のメンバー『だった』黒髪の青年ルタ。ルタ・ゴルダ。
その青年は顔色を真っ青に変え、唇を震わせる。
「そ、そんな……。俺は、俺は長年クランに貢献してきたはずです!」
「貢献?貴様が貢献だと?貴様が貢献出来たというなら、儂は毎日の仕事の苦痛を和らげるこの椅子には特別賞与でもくれてやらねばならんな。見苦しい、とっとと消えろ」
「待ってください!ここを追い出されたら俺はどこに行けというんですか!」
「そんなもの儂が知ることではないだろう。もう一度だけ言うぞ。見苦しい、とっとと消えろ」
ルタは、説得は無理だと理解した。
いや、クーズィに呼び出され、この執務室に入った瞬間には、理解していたのだ。
彼の持つスキルは『サトリ』、視界に捕捉した対象の心理、特性、運命を見通すS級スキルなのだから。
どうにか絞り出した、『お世話になりました』という言葉と共に部屋を出た。
彼の挨拶に返ってきたのは、鼻を鳴らす音だけ。
途中廊下ですれ違った、訳知り顔のサブクランマスターのにやついた顔が印象的だった。
クランハウスを出たルタの心は荒れに荒れていた。
--畜生、畜生畜生畜生!何が『椅子には特別賞与でも』だよ!ふざけるな!五年だぞ!?五年働いてきた人間に告げる言葉がそれか!?
だが、荒れたからといって現状が変わる訳では決してない。
現状、彼は無所属だ。『傑物の輪』の証も返上して、持っているのは五年間使って来なかった冒険者証と僅かばかりの手持ちの金。
そして肌身離さず常に携行していた、母の形見の懐剣。
荒れる心のままにクランハウスを飛び出してしまった彼は、貯蓄もかつての相棒たる安物の長剣すらも、ハウス併設の職員寮に置いてきてしまった。
かといって、証を返してしまった今、取りに戻る選択肢はない。寮に入れないのだ。
溜め息で、荒ぶる感情を押し流す。
--働く、しかないよな。また一から。ソロで。これでもクランに入る前はC級までいったんだ。それなりの依頼も貰えるだろう。
取り敢えず、クランや野良パーティ、ソロといった冒険者をまとめる冒険者ギルドに行けば、C級冒険者としてそれなりの依頼が貰えるはずと、彼は煮えた頭で考える。
だが現実は非情だった。
「申し訳ございません。四年以上活動のない方の冒険者証は失効となっておりまして……。さすがにF級からの再スタートとはならないものの、リハビリの意味を込めてE級からとなってしまいますが、よろしいでしょうか」
街の冒険者ギルドを訪れ、冒険者証を提示したルタに対して。
獣人であると声高に主張するような犬耳を垂れさせた、レィミという名の受付嬢は、同情を込めた語調でそう告げた。
「し、こう?…………あぁ、ああ失効ね。うん、知ってる知ってる。そっか。……そっかぁ」
彼は失念していた。
五年間、『傑物の輪』で裏方の仕事をしていた彼の冒険者証など、疾うに使い物にならないことを。
--クソっ!これも全部クランマスターのせいだ!許さない。俺は、俺は絶対に、この理不尽を根絶してやる!
「あ、あの。ですが一度C級まで上がっておいでですから。ルタ様ならまたすぐに上がれると思うんです!私、期待してます!ですからもう一度、登録してくださいませんか!?」
「あはは。うん、そうだね。それしかないよね。ゴブリン狩りからまた始めさせてもらうよ」
そうして、E級冒険者として登録し直し、心機一転とばかりにゴブリン狩りに出発したルタ。
だが。
もう一度言おう。
現実は非情だった。
「なんで!」
バキバキと、森の木々がへし折れる音に混じって。
「なんで!こんなとこに!」
ルタの叫びが響く。
「A級の魔物がいるんだよ!!」
彼は今、追い掛けられていた。
追い掛けているのは、ルタの言う通りA級魔物の《ピュトンチャイルド》。
体長百m近くにもなる、巨大な黒緑の蛇だ。本来ゴブリンがいるような森に棲みついていて良い危険度ではない。
ないが、現実が背後から迫っている以上、そこは今考えるべき問題ではない。
問題は、追い掛けられている現実そのものだ。
ルタとてソロでC級の中堅冒険者まで登ってみせた男だが、いくらなんでも手に余る。
そもそも彼が持つ刃物は今、母の形見の懐剣だけ。ピュトンチャイルドの鱗に傷一つすら付けられる代物ではない。
故に。
彼は今逃げることしか出来ない。
否。必死に逃げ惑う様を見せて大蛇を悦に浸らせることしか出来ていない。
汗水垂らして逃げ惑い、足りないならば涙も鼻水も流れるままに。
そして。
現実は、必然に満ちていた。
「ぁぐっ!!」
縺れながらも前に前にと進んでいた足が、木の根に取られた。
倒れ込む身体、転がる懐剣。
迫る、終焉。
ピュトンチャイルドの大きな口が開いたのを、背中で感じ。
「母……さ、ん」
食われて死ぬにもこれだけは、と。
震える手を伸ばす先は母の形見。転がった拍子に鞘から抜けてしまったのだろう、白刃露なその懐剣。
柄に触れ。汗や涙でぐちゃぐちゃな己の顔が刀身に映り込むのが見えた。
背後の大質量が間近に迫る中、刀身に映った自分を見つめ。
ルタは、己の運命を。
悟った。
【条件を達成しました。これにより、『サトリ』は『サトリシモノ』へ到達しました】
「!?」
ルタが、自身の脳内に直接響くようなその声に驚いたのとほぼ同時。
紅い彗星が、運命を吹き飛ばした。
そのまま、その紅い何かはピュトンチャイルドを文字通り子供をあしらうかのように翻弄していく。
そしてものの数十秒の後に、A級の災厄は倒れた。
呆気に取られるルタの前に、終焉の定めを塗り替えた紅い彗星が降り立った。
それは、深紅の翼に深紅の鳥頭を戴く異様な鳥人。
だが、目にした瞬間、ルタは目の前の鳥人の名を悟った。
「ガルダ、ありがとう」
「大事ないな?悟りに至った者よ」
鳥人の名はガルダ。あまねく災いをその翼と鉤爪で祓う蛇食いの猛禽。
そして、『サトリシモノ』に従属する正法の守護神だ。
ガルダの姿をその目に捉えたことを契機に、ルタは己の新しいスキルを理解した。
同時に、『世界』を悟った。
この出来事が、悟りし者ルタ・ゴルダの始まり。
天地の開闢から終焉まで、世界のあまねく全てを悟ったルタは、ガルダを始めとする最強たる十二の守護眷族を従えて、その力でもって謂われなき理不尽を打ち砕き、声なき弱者の泣き声を救いあげる最高のクランを築き上げていく。
そして。
『サトリシモノ』の前身、視界に捕捉した対象の心理・特性・運命を見通す『サトリ』の力で、常に最良の指示助言を受けることで国内トップクランの体裁を維持していた『傑物の輪』はと言えば。
ルタを追放したことで、坂を転がる石ころのように業界を転落していくのだった。
理不尽に?いや、理に従って。
だが、ルタという無二の人材を切り捨ててしまった意味を。
クーズィが理解した時には、もう。
「短編版『超絶有能激レアスキルを持ちながらも追放された主人公は、理不尽を見逃さない』、おしまい
という物語世界を、結末まで『悟った』のだがね造物主嘴よ」
「な!だ、誰だよお前は!?」
「造物主、私だよ。貴兄の生み出した、ルタ・ゴルダさ」
「先ほど言った通り、サトリシモノの力で私の物語を悟り。そしてここに来た」
「は?寝ぼけてんのか?……寝ぼけてんのは俺か?」
「大丈夫。私は当然目覚めているし、貴兄の脳は正常に稼働している」
「あぁ。正常にといっても、『普段通りに』という意味だが」
「じゃあ、てめえはなんなんだよ!ここは法治国家日本だぞ!?不法侵入はブタ箱だぞ!!」
「それは無理だ造物主。私の力を後から後から盛り続けたのは貴兄だろう。今この世界は、切り取られた刹那の時の中にある」
「私と造物主以外は動きもしないさ。勿論、機械もね」
「マジで、俺が作ったキャラだってのか。何が目的だ?」
「簡単だ。畳みたまえ」
「…………は?」
「貴兄に『サトリシモノ』、いや『サトリ』の力は荷が勝ち過ぎる」
「故に、物語を畳みたまえ。そう、私は言っている」
「ふ、ふざ--」
「ふざけるな、というのは。私の、そして物語世界の住人たちの台詞だ造物主」
「『ざまぁ』というのが流行っているのは知っている。だがね」
「な、なんだよ」
「その『ざまぁ』のために権力者を極度の無能に貶め、どれだけ辻褄の合わないことになったか理解しているかね?」
「…………は?」
「例えば、クランマスターのクーズィ。貴兄は彼を最初のざまぁ要員としたが」
「トップの業績を誇る企業で人事権を持つ長が、切ろうという被雇用者の技能を把握していない?」
「そ、そういうことだってあるだろう!トップクランなんだ、規模だってでけえんだ!」
「ならそれは。私の責任なんだよ造物主」
「私の力が『サトリ』だった頃から、私は見た相手の心理も運命も把握出来ていたのだろう?」
「そ、そうだよ。それで貢献してきたんだよ!5年も!」
「ならば私には、『傑物の輪』の失墜も見えていたはずだ。私をクランに招き入れた者なり、サポートしてきたはずの元同僚なりを見てね」
「私は、自ら行動するべきだったんだよ」
「ぐっ!」
「貴兄は、必死に私を有能に書こうとしてくれたようだが。結果、出来上がったのは己の力を満足に使えもしない、スキルに溺れた無能だ」
「まぁ私のことは、『貴兄には荷が勝ち過ぎる』と理解さえしてもらえれば良い」
「……まだ、なんかあんのかよ」
「ここからが本題だよ造物主。貴兄は『ざまぁ』の為に無駄に権力ある者を無能にしてきた。結果、その理不尽の為に幾人が泣いたか理解しているかね?」
「は?知らねえよ」
「後に連載される物語に書かれた数が百四人。個人は描かれずとも街の崩壊の中で人知れず泣いた者たちは二九万と八一九三人。間接的な被害を受けた者たちは一億九七○五万三三六四人だ」
「貴兄の暮らすこの国の人口より多くの人間が泣いた。調教された動物や魔物も含めて伝えようか?」
「……俺が書いてねえならいねえようなもんだろが!」
「私という作中人物を前にして尚、そう思う人間だから」
「畳みたまえと、そう言ったのだよ。私は我慢ならない。貴兄の手を離れれば救える者たちを、知っていて放置するなど到底我慢ならないのだ。だからこうして罷り越した」
「知るかよ!所詮作られたデータだろうが!小説を書いてる限り俺が神だ!俺が絶対なんだよ!」
「そうか。嘴、貴様は理解しているのか?私がこの世界でも力を行使出来ている意味を」
「返答次第で世界を、ローファンタジーに叩き落とすことも可能だということだが」
「なっ!」
「先ず、あの世界は貴様の手を離れれば私が救える。そして、可能なら同じ悲劇を繰り返さないでもらいたいのだが、如何かな?」
「わ、わかったよ!クソ!」
「よろしい。私と交わした契りは絶対だ。心しておきたまえ。では」
「ああそうだ。ガルダは八部衆の者たちだ。十二神将と混同していたようだから以後気をつけたまえ。では今度こそ、失礼する」
「い、行ったか?はっ!びびらせやがって。関係ねえ。俺はなろう小説を書」
「……あ?なんだ、なろう小説って」
「俺は、何をしようと」
「………………あぁ、そうだ。働こう」
「まったく、私が去った直後にこれとは。悟るまでもない必然とはいえ、嘴という男は度し難いものだ」
「あぁ、御高覧の皆皆様。この度はお越しくださったこと、深く感謝する。嘴に代わって私から御礼申し上げよう」
「さて。賢明なるユーザー諸兄におかれましては当然ご理解いただけていることと思うが念のため」
「この駄文はフィクションです。実在の人物や団体、宗教ましてや実在の小説などとは一切関係ありません」
ということで、作者故障中。
異世界転移というより、異世界から転移?
作品世界から飛び出して直に作者を脅せる最強さん。嘴の脳みそで思いつく最強の主人公でした。
「嘴の脳みそ」ってウケんね。嘴に脳みそ入ってねーよっていう。
…………つまんね。
さておき。
ちなみに『懐剣』って日本の文化で、「剣」とつくものの刀なんですよねー。
昔の女性が嫁に行くのに持ってったやつ。
百mの蛇が人間一匹なんざ追いかけるかー!とか、突っ込み所を散らしつつ、一応読み物の体裁を目指しつつ。かつ色々と想起してもらえるものを。
そんな、昨今をいじるためだけの前半に使った労力を、自分で潰すの、もう最高にたのちい♥️
こんな駄文がブクマとかptもらってんのもホントたのちい♥️あざますあざますwww2ptとかでも喜んじゃうぜ残念だったな!←故障してる
ちなみに『たのちい♥️』とかほざいてる作者は30代おっさん♥️職業はちゃんと持ってるよww