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ホラー小説集

ブラウン管テレビの悪夢

作者: 大浜 英彰

「お祖父ちゃん…その古いテレビ、液晶のに買い換えたら?」

 部屋へ遊びに来た孫娘の質問は、娘にも昔聞かれた物だった。

「コイツが動く間は御払い箱にしたくなくてな。」

「物を大切にするんだね。さすが私のお祖父ちゃんだよ。」

 孫娘は嬉しい事を言ってくれるが、俺がブラウン管テレビを捨てられないのは、そんな誉められた動機からじゃないんだ。

「あれは俺が小3の頃だったかな…」

 気付けば俺は、妻や娘にもした事が無い昔話を切り出していた…


 どの家にもカラーテレビが普及し出した時期だけあって、あの頃は型落ちのテレビがゴロゴロ捨ててあってな。

 俺みたいな男の餓鬼は、捨てられたテレビに危ない遊びを仕掛けたもんさ。

 真空管もブラウン管も中が真空になっているから、割ると良い音がしたんだよ。

 煉瓦のブロックをぶつけて割れる音を楽しみ、中に花火や爆竹を仕込んで遊び、最後は分解した部品を戦利品として持ち帰ってな。

 そうして粗大ゴミのテレビを壊して遊んでたら、そのうち変な夢を見たんだ。


 夢の中の俺の目前には、大量のテレビがピラミッドみたいに積まれていた。

 やがて、積まれたテレビのブラウン管全てに、俺の顔が映し出されたんだ。

 まるで死人みたいな、薄気味悪い顔の俺がな。

 そして画面の中の俺が目を閉じた次の瞬間、テレビのピラミッドが連鎖反応を起こすみたいに爆発したんだ。

 怖くなって逃げ出しても、そこにもテレビが待ち構えててな。

 とうとう俺は追いつめられ、四方をテレビに取り囲まれちまったんだよ。

 四方を囲むテレビの爆発に悲鳴を上げた次の瞬間、俺は子供部屋の布団で目を覚ましたのさ。


 一緒にテレビを壊して遊んでいた友達連中も、俺と全く同じ夢を見たらしい。

 クラスのガキ大将が「テレビを壊して祟られたんだ。」と言った事で、この遊びは俺達の間で避けられるようになったんだ。


 今から思えば、あれは邪険にされたテレビ達の恨み節だったのかも知れん。

 考えてみれば、最初の頃のテレビは観音開きの扉が付いたキャビネットに納められていて、仏壇みたいに大切にされていたんだからな。

 それがアチコチに無造作に捨てられ、俺みたいな悪餓鬼に面白半分で壊されたんじゃ、恨みたくもなるだろうよ。

 このテレビを使い続けているのは、罪滅ぼしのつもりなのさ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 物を大切に使う [一言] この作品を読んだあと、ブラウン管TVの寿命を調べ、そこから実際に自分で修理して使い続けている方のブログを知りました。 作品そのものも去ることながら、新しい分野へ…
[良い点] 祖父ちゃんの見た夢が、テレビの怨念なのか、もしくは集団罪悪感みたいなもので、皆似たようなものを見てしまったのか、想像力をかき立てられました。 個人的に、そうかも知れないし、違うかもしれない…
[良い点] 不思議な雰囲気で面白かったです! 『俺』はある意味『ブラウン管テレビ』でとことん遊んだのですね。不謹慎かもしれませんが、きっとその遊びが楽しくて仕方がなかったのでしょう(^^)テレビの『祟…
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