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神の弟子は魔法使い  作者: ルド
中学生編
2/3

ぼんやりとした回想とメイドさん。

『残念だが、ここまでだ。刃』


───ああ、夢か。

切っ掛けとは言えないが、この父の一言が生活を変える一応の切っ掛けではあった。

ちょうど中学に上がった頃の話である。


『魔法の才がないものは、この家には置けない。粘りに粘ったが、ここまでだ』


魔法を扱う家でなければこんな目には合わなかった。普通の家ならこんな風に言われたりもしない。


魔法が存在する俺の世界では、魔法を取得するには専用の魔道書が必要だった。魔道書にはそれぞれ属性とランクが存在しており、自身の属性の適性と魔力量によって取得可能な魔法は決められていた。

大抵の者の適性属性は1つか2つ、まれに複数の適性者もいるが、大半は2つ程度に絞って上級の魔法取得を目指していた。


だから重要視されたのは、扱う者の魔力量であり、俺の1番の問題であった。


『取得出来たのは初心者用の初級魔法のみ。魔力量がちっとも増えん以上、それより上の魔法は一切取得出来ん』


困った話だよなぁー。他人事だけど、どうしようもなかった。何年も頑張ってみたが、結果的に『大して変化なし』という結論が出てしまい、これでは父の嘆きも仕方なかった。


『兄さんはもういいですよ。家は私がどうにかしますから』


冷めた目をした妹は、そう言って父に賛同した。

1個下の彼女は、俺なんかとは違い生まれた時から恵まれた素質を持っていた。家の存続なんて魔法を開花した妹が居る時点で無いに等しかった。


『推薦を貰ったから警務部隊に入る。魔力が足りない以上、家も継げない貴方と付き合ってもきっと周りが認めないわ。……貴方もこれからのことをちゃんと考えた方がいい』


子供の約束とはいえ将来を誓い合い、中学に上がった時には告白する筈が、その前にあっさり幼馴染にフラレてしまった。


『仕方ないって刃。才能なしじゃ、この世界じゃやってけない』


『諦めが肝心です。まだ中学生なんですから、他の道を探す方が良いかと』


『人には良き不向きがある。お前の場合は魔法が不向きだったってことだよ』


『もし本気で目指そうと考えているなら、今からでも遅くない───諦めなさい』


ハッキリ言って散々であった。影響力が強い父親が切り出したからか、周りの大人達や同年代の人達も溜まりに溜まったモノを吐くように、次から次へと言いたいことだけ言っては、手のひらを返すように避けて行った。心の中であんな大人になりたくないなぁ、と固く誓った。


そして、中学に進学した途端、俺は母方の祖父の家に厄介になり、姓を龍崎に変わった。新しい学生生活が一瞬で灰色になり、孤立するまで時間も掛からなかった。一部のクラスメイトから目が死んでいるといつも言われているが、これは昔からなのでどうでもよかった。

シリアスで鬱感がある回想ではあったが、幼馴染や妹を除いてあまり気にしてなかった。引越ししてしばらくしたら顔どころか名前も……お、覚えてる人もいるよ? 


ただ、言い訳させてもらうが、そんな覚えたくもないセリフの記憶なんて───



『オレの弟子になってみないか?』


『すみません。お金は持ってないです』


『いや、詐欺師じゃないから。一旦落ち着いて話を聞きなさい』



こんな体験したら大半が消し飛んでもしょうがないだろう? 回想シーンを比べても最初の名無しの人達の会話なんて……ショボくない? 覚えててもイラつくだけだし、幼馴染や妹のセリフは忘れ難いけど、この時はそれどころではなかった。


『結婚もしてないので息子もいません』


『どう行き着いたらそうなる。なりすましでもないから。こんな息子なんて嫌でしょう?』


異常すぎる展開に驚くべきか、それともいよいよ俺の頭も壊れたかと泣くべきか。その時はあまりのことにどう反応すべきか定まらず、しばし呆然としていた。


『変えたくないか? 自分自身を』


怪しさマックスな師匠と出会ったことで、俺、龍崎刃の世界は一変した。いや、本当に一変して『異世界のダンジョン』に来て、神様呼びが嫌いな神の魔法使いである男の弟子になった。うん、突拍子もない展開な上、胡散臭さが尋常ではなかった。


『見つけたくないか? 自分の可能性を』


詐欺師の方がまだマシな言い訳を言うだろうが、見たこともない世界で遭遇した男はそれ以上に得体が知れない存在だった。何度か詐欺師かと疑ったが、そこから始まる修業という名の地獄巡りが俺の思考までおかしな方向へと引き()っていた。


『掴み取ってみないか? たとえそれが地獄の道だとしても』


そうして、俺のダンジョン修業生活は始まった。興味本位で弟子入りしたが、それが最初の選択ミスだったのではないかと、今でも思う時がある。いや、思わずにはいられなかった。

果てしない道のりと時間の果てで、俺は見つけたのは───






なんて急展開過ぎるか。なんでこうなったか、順序立ってて説明すると……ここからかな?


進級したばかりの中学3年の春頃、暮らしている昔風の家とくっ付いてるジィちゃんの道場の掃除をしていた際だ。


『ジィちゃん? こんなところにお札が落ちてるけど、いいの?』


『ん? おお、それかぁー』


物置部屋という名の武器庫の掃除。木刀から真剣や竹槍に薙刀、鉤爪や弓など種類は様々であり、中には呪われてそうな金属ドクロや血で染まった物など、不穏な物まで混じっているように見えた。


『はて? なんじゃったかなぁ? そこら辺の霊符だったかのぉ?』


『え、霊符って……この厨二病ぽい見たことない文字が? 魔法の術式か何かなのか?』


しかし、それよりも目に入ったのは、無造作に床に落ちていた四方形の小さな御札。よく有りそうな難しい漢字ではなく、異国の見たこともない文字が陣を描いており、俺は魔法陣か何かかと思った。

ジィちゃんの呑気な声もあってか、霊符と言われてもピンと来ず、警戒心がほぼゼロだった。いや、他の怪しげな品類が視界にチラついていた所為か、それが本物のように見えなかった。それだけ描かれてい陣がヘンテコだった。


『絵が上手な子供が描いたとかなら、まだ通じそうな紙だけどなぁー。…………え?』


何気なく触れた瞬間、バチッと手に静電気が走ってその御札が灰になった。

何が起きたか見ていたのに思考が追い付かなかったが、ヤバいことになった気は嫌というほど感じた。


『『……』』


物置部屋で沈黙するのは、祖父ジィちゃんと孫(俺)。

呆然と灰とった御札を目にしつつ、同じく黙り込むジィちゃんを見るが。


『まぁ、大丈夫じゃろう』


『そこは行動でもいいから安全だと信じさせてよ』


いや、さすが俺のジィちゃんだった。俺自身あまり気にせず、夜の献立を考えてる間に忘れてしまった。


でその夜、眠った途端、俺は異世界にやって来た。

アレが異世界の入り口を開く原因になったらしい。詳しいことは聞かせてくれなかったが、その結果、元の世界から離れた『異世界のダンジョン』で修業生活が始まった。


───以上。こんな感じかな? 分かり辛かったか?





『クククッ! 面白い奴が落ちて来たなァ?』


『た、ただの牛乳配達ですがぁ……』


魔王と遭遇したのは、その次の日でした。最下層に牛乳瓶を届けるだけだった筈が……そこから始まったのは、理不尽な暴力なんて言葉すら優しく聞こえる───修業(ジゴク)でした。


『クハハハハハッ! 面白いッ! 面白いぞ小僧ッ!』


半殺しどころではない。鬼畜王の『暗黒体術』指導の際は、九割殺しも平気で超えていた。なんでも生きてんだろう俺? ───ああ、師匠がその度に完全治癒とか復活してくれてるからか。


『アレとの体術だけだとあんまりだし、剣術も覚えてみるか?』


時々行われた剣術の人の指導が癒しに感じた。家でも剣術の勉強はあったが、全然だったから正直自信がなかった。まぁまぁな仕上げにはなったと言っておこうか。1回だけ会ったその師匠は凄過ぎて参考も何も出来なかったけど……。


『精霊魔法でも覚えてみるか?』


スミマセン……ロリ先生、俺は全然ダメでした。師匠の紹介で知り合った金髪ロリ先生から精霊魔法を勧められたが、適性が…………全くなかった。


『氷魔法でも使ってみる?』


結論から言うとなんとか使えたレベルでした。金髪ロリ先生とは別の金髪お姉さんから槍術と氷魔法を教わったが、こっちは槍術だけは非常に良かった。意外と属性適性はあったけど工夫しないと基本属性よりも使えなかった。


『回復魔法も覚えてみる?』


師匠のお嫁さん。有り難いですが、子供扱いは勘弁してほしかった。頭撫でられるなんて全然経験したことないからすっごい動揺したよ。


そんな感じでダンジョンの内で修業する俺にいろんな人が声を掛けて来た。師匠も異世界の魔法指導しながら魔力量の無さや適性属性について調べて、色々と改善案を教えてくれた。


『適性の中に【天地】があったのは驚きだな。他にも適性があるようだが、これならそちらの世界の魔法と合わせて新たな力にすることも可能かもしれないぞ?』


何年経過したか分からないが、ダンジョンを降り続けた俺は、最終決戦として最下層に住む魔王と挑むことになった。






「おや? 起きましたか」


ぼんやりと目を開けると覗き込むメイドが居た。

黒髪な少女メイド───マドカ・イグス。訳ありな娘であるが、実は俺よりもずっと年上な娘である。色々とあって家事万能な俺のメイドとなっているが、その戦闘能力もズバ抜けて高かった。


「マドカか……何日経った?」


「3日です。寝過ぎですよ刃」


起きるとそこは、ダンジョンのセーフティースペースにある俺の部屋。最下層からベットに運ばれたか、重傷状態も治されて寝かされていた。ちなみに服は寝巻きの格好であるが、そこは深く訊かないでおこう。なんかパンツまで変えられてるけど。


「それが死闘の末に生き延びた友に対して言うセリフかよ」


「懲りずに死にかけた友には、ピッタリな言葉ですが? 契約しているのに私を召喚しなかったんですから」


「喚べるかよ」


反則気分になるから。特にあの魔王が相手だと。

ゆっくり起き上がながら体の感覚を確かめる。一応治療されてるようだが、絶対に不調がないとは限らない。3日も寝ていたこともあるので、慎重に手足を動かして確かめる。


「で、どうなったけ?」


「覚えてないんですか?」


「部分的には……かな。前回よりは暴走状態には慣れてたけど」


「暴走と聞くと慣れない方がいい気がしますが」


「暴走が避けられないならいっそコントロールした方がいい。って言うのが師匠のアドバイスだから」


異常は特になし。問題なく動かせる手足を振ったりしていると、お腹が目覚めたか。すっかりお腹が空いていた。


「まずは食事にしましょうか。あの人も話があるそうですから」


「師匠かぁー」


説教でないことを祈りたい。いや、流石にそれはないか。

最下層で気絶してしまったが、相手が化け物であるのだからしょうがない筈。


ぼやけた記憶の中で肝心の最下層が粉々に崩壊したような気がするが、俺は悪くないと言い聞かせつつマドカと共に食堂へ向かった。


急なお知らせですが、最近忙しさが増して精神的な疲労がヤバい為、ちょっと更新が次回からさらに遅れると思います。たぶん二週間に1回ペースです。

始まったばかりなのに本当にすみません。負担にならないペースでのんびりとやっていくので、今後もよろしくお願いします。

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