いきなり魔王との決戦だった。
とりあえず始めました。不定期になりそですが(苦笑)。
緩やかに進めていく予定なのでよろしくお願いします。
俺、龍崎刃の前に死が迫っていた。
気まぐれでしか【無限な夜と世界】から出られない以上、怖いくらい絶対絶命であった。ようやく始まったのにいきなりピンチとは笑えない。
「『炎熱噴射』……加速」
しかし、慣れることも普通に怖い。移動用の炎の噴射を両手と両足から出して、迫ってくる『死の怪物』から逃げ回っていた。
『ギィアアアアァァァアアァァァァァァッ!!』
見慣れた怪物が1体。暗黒色に染まった鬼のような巨大な怪物が凶悪な手を伸ばして襲い掛かって来た。本体が巨体なだけに手だけでも、余裕で人を握り潰せる大きさがあった。
「『火炎弾』……!」
伸びして来た暗黒色の手をに俺は、両手から出している炎で使い散弾にして浴びせる。少量の魔力のみで使用した散弾でしかないので、豆程度の大きさしかないが、弾かれず暗黒の巨大な手に埋め込まれるのを確認すると、片手で指を鳴らした。
「『炸裂爆弾』」
『───ッ!!』
鳴らした途端、埋め込まれた弾の爆発を起こす。伸びていた手の至るところから爆発が起こり、内部崩壊が手のひらがバラバラになる。すぐに暗黒の霧が集まり再生が始まるが、この隙を待っていた。
つまり今だ。
「いくぞ」
逃げていた体を反転させる。風の飛行と違い小回りが利き難いが、決して出来ないわけではない。焦っていなければ問題なく反転出来る上、急激な加速はこちらの方が上であった。
伸びていた腕を避けながら怪物の懐へ。
まったく動揺していない怪物の視線を感じる。何するかなんとなく見当が付いていた俺は、懐に入った時には足と背中から器用に炎を出して、両手に七色の光を集めて……。
『ギィガァガガァアァァアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!』
「はぁぁぁぁー!」
怪物の顎門が大きく開くと、咆哮と共に空間をも破壊する死属性のブレスが放たれ。
ほぼ同じタイミングで両手に凝縮された七色の竜巻のような光線を放った。
『死滅の咆哮』と『擬似・集う滅びの七光の一撃』が激突。
反発し合い中心で2つの大技が火花を上げていた。
「っ……!」
『ギィィィアアアアアァァァァァ……!!』
炎の推力もフルに利用して押し留める。こちらの世界ではSランクの魔法だけあって、反則級な死属性にも対抗していたが……。
非常に悲しい話であるが、少量の魔力でも出力を高めることは出来ても、それを維持し続けるのには限界があった。この夜の空間も原因であるが、対策を打たずに真っ向から挑んだ時点で大失敗でしかなかった。
なんとか空中での体勢を維持していたが、威力が落ちていくと空間ごと体が揺れてしまう。
「っ!」
数秒しか保たせれず、衝撃に押されて吹き飛ばされてしまったが、一瞬で体勢を戻しに行く。押し出そうとする衝撃から逃れて、炎の噴射でブレスを吐く怪物の顔の横へと移動。
「ふん!」
振り上げた渾身の拳を横顔へ叩き込んだ。
『魔力融合』に入っている時のみ、使用可能なスキル『鬼殺し』の一撃を加えた。
───ビキビキ
『ッ! ギィィィィ!』
打たれた部分からヒビが生まれて広がる。俺が2種類の魔力が込めらえた一撃が奴の内部まで浸透して内部から破壊していく……筈だが。
『ッッ!』
勢いが入ったように怪物の顔が強張る。するとヒビが走っている頬の部分の広がりが止まる。徐々に時間が巻き戻ったかのように小さくなっていくと、ヒビが完全に消えて込めた『鬼殺し』の効果を無効化した。
『ギィアァァッ!』
完全に無効化し切るとこっちと視線が重なる。咄嗟に距離を取ろうとしたが、伸びるように迫って来た怪物の顔。頭突きの要領で空中に浮く俺を、ボールのようにヘディングして来た。
『ギィィィィアアアアァァァァァァァァ!!』
そこから再びブレスが吐いてきた。咆哮とも言えるが、破壊の衝撃を含んだ死属性のブレスを前に俺は───。
「ジャマクセェナ……」
【───】が起きる。ブレスに喰らい付いたことで、僅かではあるが直撃を避けて、掠るように吹き飛ばされた。
今度は体勢も戻せれず、後方に広がる夜の世界へ飛ばされたが……。
『……』
ブレスを止めた怪物は追撃に来ない。警戒するように目を向けるだけで、夜しかない空間の中でも倒れているこちらを捉えて見せた。
「よっ……こらしょっ!」
死属性のブレスを受けたが、体に異常がないことを感じるとすぐに起き上がる。
相変わらず攻めて来る気配はないが、放って置くと遠距離攻撃を乱発される可能性が非常に高い。
まずは空間による『属性の弱体化』の解決と強化に移った。
「来い───『継承された神ノ刃』」
『時空属性』で時空間に入れていた白銀の聖剣を取り出す。神々しい一振りで俺には勿体ない1品であるが、どういうわけか俺の剣扱いになっている魔法剣だ。
しかし、この神々しい白銀の剣でも相手にはまったく効かない。『物理攻撃』や『聖属性』による耐性が異常に高く、曖昧な実体化をしている怪物では何処を斬ってもあまり意味がない。巨体全体を消し去れるくらいの一撃があれば倒せる可能性もあるが、ハッキリ言って全体像が測れない位の無駄なデカさを誇る怪物なので、その案は最初から加えてなかった。
「ふっ」
だから勢いよく頭上高くへ放り投げた。神々しい聖剣をだ。
肉体を強化していたので思った以上に高く放り上がる聖剣は、一定の高さまで上がると聖剣に仕込んでいる【時空】のチカラで空間に固定させる。
剣先を下すると支配者のように見える。さらに仕込んである【天地】と【聖】のチカラも解放。すると神々しい光が白銀の刃から漏れ出して、やがて真っ黒な夜の世界に太陽を生み出した。
自然界を支配する最強の属性。
天地系統の魔法『天地王の絶対領域』を発動させた。
発動された属性によって一定空間を属性領域にするが、【天地属性】は自然界の属性である。定まった属性色もなく、発生させる領域の種類も複数存在した。
今回選んだのは───『光』。
無限の夜の世界であっても照らす太陽の光は、俺の天地属性を強化。
さらに『光』に類する全ても強化させた。
『なるほど、天地のチカラを強化する為に聖剣を利用したか』
と、そこへ夜の向こう側から怪物の声が……。心底楽しんでいるような口調と俺を試すような視線を送りながら少しずつこちらに近付いて来る。
「こんな場所じゃなかったら使わない手だ。なんで最下層がこんな闇しかないんだ」
『修業にちょうどいいだろ? 自然界から閉ざされたこの夜の世界では、『天地属性』はチカラを発揮出来ん』
だから嫌なんだ。そう口にしても意味はないので、楽しげに喋る怪物を他所に別の魔法を発動させる。
夜の世界に照らす光を浴びて『召喚系の魔法陣』が浮かぶ。
輝きが増すと光の中から巨大な『白き龍』が召喚される。自然界のチカラである【天地属性】を利用した『召喚魔法』だ。怪物程のサイズではないが、大きさよりも頼れる能力を持っているので、充分頼りになる龍だ。
『面白くなってきたな』
「まだだ───“天地融合”」
『オオ! そこまで出来るようになったか!』
さらに発動中の『魔力融合』も強化させる。嬉しそうに声を上げる怪物を見るとやってしまった気もしたが、怪物相手では1段階目の融合強化で挑むの無理があった。
「『天地王の極衣・陽光型』」
最高レベルの『天地融合』に入ると、目の前の怪物とは別の魔法の師から教わった、Sランクの最高位の身体強化へ移った。発動させた途端、太陽のような薄い橙色のオーラが俺を覆った。髪も瞳また変化しているが、そこまで確認する余裕はなかった。
ただ1つ言えるのは───準備は整えた。
照らされる光と纏う光の衣で作り上げた剣を握り締めて、わざわざ待ってくれた怪物を見据えた。
「魔王……行くぞ」
『ククククッ! ……来いッ! そのチカラでオレに勝ってみせろッ!』
こうして決戦が始まるが、ここまで来るのに本当に苦労した。
何年掛かったか正直分からないが、この戦いの果てでようやく俺は師匠や怪物の魔王から合格を貰えた。
異世界のダンジョンを経験した中でも、1番濃い1日の話であった。
どうしてこんな目にあったかと言うと、元の世界に置ける私生活と不運にもこちらの世界の魔力を宿した俺自身が原因であった。
いきなり最終対決みたいな感じですみません。
次から何故こうなったかの話から始めます。流れ的には中学3年生の春頃から始まり、帰還後は一気にテンポが進んで高校生になる予定です。
シリアスは少なめですが、ラブコメやバトルはいい感じでいけたらと思いながらやっていきます。無理かもしれませんが(汗)。