白樺先輩と黒木後輩
三ツ葉ちゃんが学校に復帰した放課後。僕は上機嫌になりながら、学校の雑草を引き抜いていた。
僕は帰宅部だけれど、今日は機嫌が良かったからね。一年の手伝いをすることにしたんだ。三ツ葉ちゃんがいるだけで、オアシスみたいに感じるよ。普通の中学校なのに!
「学校卒業したら、先輩はどこに行く予定なんすか?」
「そうだね。僕としては近くの〇〇高校に行く予定かな」
「へぇー。先輩にしては、普通のところにいくんですね。もっと、都会の先鋭!みたいなところに行くと思ってたっす」
後輩くんは、植木鉢を移動している手を止めた。そんなに意外そうな顔をされると気になるじゃないか。
「どうしてだい?君も知ってのとうり。僕は三ツ葉ちゃんが大好きだからね、離れたくないんだよ」
「まあ、先輩の三ツ葉先生大好きっぷりは、校内でも有名っすけど。先輩はこう、都会から勧誘がきていてもおかしくないかなって」
根が張って引き抜けない雑草を、後輩くんは尻もちをつきながら引き抜く。
「僕はここがちょうどいいのさ。都会に行ったら、なんだろうねぇ。調子に乗ってしまいそうだからかな」
「先輩が調子にのる?そんなことありえませんよ。先輩ほど真面目な人、俺は見たことないっすから」
「後輩くんは優しいよね。黒木くんの弟だと思えないよ。黒木くん、僕にだけ厳しくてさ」
「兄貴は、先輩と自分自身を重ねてますからね。この間一人にしちゃったからですかね。兄貴、今すごく機嫌悪いんですよ。どこが似てるか、全然教えてくれないっす」
僕は雑草をゴミ袋につめる手を止め、後輩くんの顔をまじまじと見つめた。黒木くんと似ているなんて冗談じゃない。正義感の強い彼と、悪役っぽい僕のどこが似ているのだろうか。良い子の黒木くんが可愛そうだ。
「うーん?そうだねぇ。後輩くんには言っても構わないかな。僕と黒木くんの共通点は、二面性があるところだろうね」
「先輩のは上手な世渡りだと思うっす。でも、兄貴に二面性があるんですかね?」
「まあ、あるんじゃないかな?黒木くん、周りの人間に影響を受けやすいみたいだし」
「あっ!確かにそうっすね。兄貴、ヒーローものが好きだけど、それ以上に悪役が好きみたいですし」
僕らは雑草除去を終え、鞄を持って校舎を出た。生徒の人数自体が少ない学校だからか、近くの学校と合同で部活をしている人も多い。放課後の学校は、誰も通っていないと錯覚させるほど、静まり帰っていた。
「そういえば、先輩の二面性ってなんですか?」
後輩くんは、うやむやになったはずの話しを掘り返した。僕は根っこから引っこ抜かれた雑草を思い出す。雑草達はこんな気持ちだったのかな。僕は人間で良かったと、心底思いながら答える。
「僕の二面性ねぇ」
あんまり人に言えるようなことじゃない気がするけど。この後輩くんは、黒木くんをグレードアップしたような性格だし、やっちゃダメなことも理解してるだろうしなー。
誰にも言わないって約束できるかい?なんて言ったら、黒木くんに言っちゃいそうなんだよね。なんだかんだで兄弟だし。
「別に秘密にしなくてもいいけど、これから喋ることを聴いても、後輩くんは僕と仲良くし続けてくれるかな?君と仲違いしたら、僕は立ち直れないよ?」
僕は道端のベンチに腰掛けた。年月が経って錆びた鉄は、体重の軽い僕が腰掛けても悲鳴を上げる。この前少女が乗ってる時も、このベンチは危ない音を立ててたからね。今度学校の投票箱にでも、このベンチのことを書いておこう。
「ところでさ、後輩くん。最近の話しと、昔の話し。どっちの方が良いと思う?」