協力プレイゲーム
やあ!僕は黒木くんの友人の白樺だよ。協力プレイのゲームを黒木くんとしてたんだけど、行きたい方向が逆なんだよね。いったん休憩したいところだし、一度このゲームの分岐をやってしまおうかな。そうと決まれば黒木くんに話しかけなくちゃ。
「ゲームを始めてから一時間だよ。そろそろこの協力プレイも終盤なんだから。いったん大魔王ENDに決めてしまおうよ」
「いやだな。遊ぶ前に決めただろ?友情ENDを先にするってな。白樺は忘れっぽいところがあるよな」
「そういえばそうだったね。先に友情ENDを終わらせてしまおうか!」
僕らが同じ選択肢を押すと、画面が切り替わり映像が流れ出した。魔王が魔神に話しかけ、魔神を説得している感動的な場面だ。僕は最後まで見ずに、空になったコップを二つ持ち上げた。
「黒木くん。僕は麦茶を足してくるからね、二人の友情を最後まで見届けてね」
黒木くんは画面に食いつきながら、無言でうなずく。僕は後で映像を見ることにして、一階のキッチンへと足を運ぶ。
「三ツ葉ちゃん、大雨なのに大丈夫かな?」
キッチンについた僕は、小窓をなんとなく見る。窓についた水滴の影は、流れることをやめないようだ。僕は不安になってスマホを開いた。
「急用ってなんだろうねぇ」
三ツ葉から届いたメールには、急用ができたので出かけます、と一言書いてある。僕の心配は過剰な部類に入るだろうか?
「考えててもわからないや」
僕はスマホを胸ポケットの中に入れると、麦茶を二つのコップにそそぐ。僕らのコップは色で見分けられるようにしてある。同じ場所においても混ざることがないので安心だよ。
僕はコップを持って階段を上がる、冷たい氷の入ったコップが、僕の手の平を冷たくしていく。早く自室の机に置いてしまいたいね。
僕は最後の段を飛ばすと、扉が開け放たれ自室に入った。黒木くんが机に突っ伏している。
「どうしたの黒木くん。二人の友情ENDを見終わったところでしょ?」
「うっ、あんなにいい終わりかたをするとは思わなかった。白樺が選んだゲームと思いたくない」
「黒木くん、それはわかったよ。だけどね、いったん机から離れてもらっていいかな?コップが置けないんだけど?」
「白樺。お前に優しさは無いのか?」
「黒木くん。僕は今、手が冷たいんだよ。君の首に手を置かないのが僕の優しさ」
僕は黒木くんにどいてもらってから、机の上にコップを置いた。カランコロンと氷がぶつかり合い、涼しげな音を響かせる。
一時間後
「白樺!大魔王END、とっても血生臭いぞ。やっぱりこれ、お前が選んだゲームだ!!」
「黒木くん、そんなに僕を褒めないでおくれよ」
「褒めてないぞ、白樺の趣味は俺と合わん」
「そう言わないでよ、黒木くん。平和な終わりかたも結構あるんだよ。先にネタバレを見てきた僕が言うんだからね」
僕は黒木くんに声をかけながら、スタートボタンを押す。
「わかった。お前を信じるぜ」
黒木くんは瞳に光を取り戻すと、コントローラーをしっかりと握った。黒木くんは良い子だよね。その先にあるのは、魔界という地獄だよ。
「黒木くん。今日のうちに二人プレイの場所を終わらせてしまおうか!僕らならやり遂げられるよ!」
「白樺!お前たまには良いこと言うな」
「たまには余計だよ、黒木くん」