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最弱聖剣士  作者: アルケー1号
10/11

クエスト後のギルドにて

記念すべき十回目です。うぃーい。まあまだ見てくれている人はいませんが……

 一通り食べ終わった後、レジャーシートを片付け、帰りの支度をする。

「じゃあ帰るか」

 あんなにお腹が空いていたのに、ご飯を食べたら満杯になってしまった。

「もう動けないよ……」

 キャリは食べすぎたせいか、見るからに体が重そうで、ずっと座ったままだ。俺もさっきまではあんな感じだった。これは旨すぎる料理が悪い。よって、シャルマ氏……無罪。

「忘れ物は……ないですね」

 荷物はシャルマの空間魔法により、全てが空間にしまわれた。やっぱ便利だな、空間魔法。俺もいつか使いてーな。

「ふふっアイル様もいつか使えるようになりますよ」

 心の中で呟いたつもりが口から出ていたようだ。気を付けないと……

「キャリももう行くぞ。早く立て」

 ほって置いたらいつまでも座っていそうなキャリに向かって声を掛ける。

「わかったー」

 そんな気迫(きはく)のない声を出しながら、俺の頭の上に乗っかってくる。ご飯を食べ終わった直後のせいか、とても重く感じる。

「ちょ、ちょっとキャリ重いって」

「えぇー。ならあと一時間くらい待ってて」

「……分かった。シャルマ行くぞ!」

 キャリを乗せたまま進むことを選ぶ。今日はキャリに鍛えてもらったってこともあるしね。

「はい」

 こうして三人はアヴァビア平原を後にするため、歩き出した。

「ところでさ、火の魔玉を取りに行く時に、ダンジョン的な、物があるってキャリは言ってたんだけどさ、どんな感じの?」

「うーん、そうですね。ダンジョン的なじゃなくて、ダンジョンそのものなんですよね」

 おぉー。なんか盛り上がりそうな展開だな。

「火の魔玉の場合だったら、魔物が守っているみたいな感じです。古い文献に載ってたので今どうなってるかは詳しくは分からないですが……」

「火の魔玉の場合は? 他のはどんなんだ?」

「今は、火の魔玉の事に集中してほしいのですが……まあ別にいいですけど。水の魔玉の場合は、謎解き。木の魔玉は、迷路。風の魔玉と雷の魔玉、土の魔玉は、火と同じくダンジョンです」

「でも、そこまで分かってるんだろ? だったらシャルマ達だけで行けたんじゃないか? シャルマもその強さなんだし」

「いや、先ほども言った通り古い文献なのであまりあてにならないんですよ。一応ダンジョン手前までは行ったんですが、そのダンジョンの奥部に行くための扉にエクスカリバーをかざさないと無理なんですよ」

「そうなのか」

 エクスカリバーの為のダンジョンだからかな?

 声に出さない疑問を頭に浮かべる。


 今日はたくさんの事を学んだせいか、帰りの話はほとんど覚えていない。キャリが俺の頭の上で吐いた事は覚えているが……なんだよ酔ったって。そのせいでまたシャルマに水掛けられたし……。

 今はギルドに来ている。日が落ち始めたこの時間はゴールデンタイムなのか、いつもより盛り上がり方がえげつない。

「ごめんな、付いてきてもらって」

 さっきクライブさんと約束したことを果たすため、シャルマには付いてきてもらっている。キャリは先に帰ってもらっている。

「いや、全然いいです。全然いいので早く紹介とやらを終わらせましょう」

 あ、これ絶対嫌な感じだ。

 顏からして、ヤダなオーラが出ている。早く終わらせないと俺がどうなるか分からない。やはり匂いがキツイのだろう。今朝(けさ)より人も多いのでもっとやばい。やばやばだ。

 匂いから自分を守るためか、シャルマは服を鼻まで持ってくる。

「ただいま戻りました。クライブさん」

 何かの書類を見ている受付嬢に話しかける。朝と違って眼鏡を掛けている。なかなかに可愛い。

「あ! アイルさん! 大丈夫でしたか?」

 赤ふちの眼鏡をはずしながら、口に出す。書類を見る時だけの眼鏡のようだ。

「はい。全然問題なかったです」

 あまりの可愛さに少々デレデレしてしまったが、自分で抑える。

 すると、後ろから裾を引っ張られる感覚がここに来た目的を(おも)()させた。

「まずはこれを……」

 そういい、ポーチからクエスト承認カードを取り出す。

「はい、ちゃんと承りました。ていうか出来たってことが信じられません」

 半分驚きで半分からかうような感じで言ってくる。一言で言うと可愛い。

 クライブはゴールドをどこからか持ってくる。

「はい! しっかり二万ゴールドあるかどうか確認してくださいね!」

 今までは稼ぎの少ない採取クエストしかやってきてなかったので、確認という確認をしたことは今まで一度もなかったので、少しの感動を覚えると同時に二万ゴールドという重さにビックリする。今までのクエスト十回分だ。

「はいきっちり二万ゴールドあります」

 今日はいつもより高い奴を食べようかなと考えると同時に、ポーチに二万ゴールドを入れる。

「で、その方がパーティの方ですか?」

 あ、そうだ。そのためにシャルマがいるんだった。

 思い出し、シャルマの方を見るとようやくかと言うようにしゃべり始めた。

「はい。この度アイルさま……アイルさんとパーティを組ませていただきました、シャルマ=ルスライと申します」

 公共の場での呼び方が良くないと気付いたのか言い直す。てかもう既に「様」付けちゃってるだろ。

「シャルマさんですね。分かりました。それと……アイルさんとパーティを組んでいただき本当にありがとうございました。アイルさんはとても素晴らしい人なのですが、なかなかパーティを組んでもらえる人がいなかったのです。本当にありがとうございました」

 何故かクライブがシャルマに礼を言う。なんか恥ずかしい。

 シャルマも礼を言われるとは思ってなかったようで、口元が拍子を抜けした顔をしている。

「いや、お礼を言われるようなことはないですよ」

「そうですか? まあ私が勝手に言っているだけなのでいいですけど」

 何か変な間が出来てしまった。それを埋めるために話を繋ぐ。

「あ、あのドロップ品の買い取りはどこで行われているんですか?」

 コボルトの牙を持っていたことを思い出し、聞く。

「それは右側のカウンターで行っています」

 右側に指を差し、どこにあるかを示す。

 そこにはいつもは使わないカウンターがあった。

「分かりました。ありがとうございます」

「はい。またのご利用をお待ちしております」

 頷きながら、カウンターから立ち去る。

「いい人でしたね」

 シャルマは鼻を服でより深く覆う。

「ああ。俺は何回もあの人に助けられたよ」

 思い出を頭の中で流しながら、歩く。

「あ、先に戻っててもいいぞ。換金するだけだし」

「いや、もうすぐで終わるのなら付いていきます」

 今戻るのも、もうちょっとで戻るんのも変わらないと判断したらしい。

 ポーチからコボルトの角を取り出しながら、クライブに言われたカウンターに向かう。

「はい、ご用件は?」

 クライブとはまったく違い、義務的に聞かれる。

「このコボルトの牙を換金したいのですが……」

「はい、分かりました」

 手に持ったいくつものドロップ品を渡す。

 コボルトの牙は子供用のナイフに使われるようだ。こんな五センチくらいの小さい牙をどうナイフにするのかは分からないが……

「……十三個、牙がありましたので、六千五百ゴールドとなります。確認をお願いします」

 簡単にコボルトの牙は取ることが出来るので、そこまで高値にはならないかなと思っていたが、思ったよりも高くついた。

 袋に入ったゴールドを確認する。

「はい。大丈夫です」

「またのご利用をお待ちしています」

 最後まで義務的に言い終わった。もう話すことはないとそのまま振り返った瞬間、一番目に映したくない人がいた。

「お? アイルか? 何でここにいるんだ?」

 驚いた顔をしたテレンスだ。Bランクの冒険者ともなるとこのカウンターには頻繁(ひんぱん)に来ることになるのだろう。

「えーと、コボルトのドロップ品を換金しに……」

 一瞬、嘘を付くかどうか迷ったが、ここのカウンターにいるからには嘘を付いていても仕方ない。

「おぉ、ようやく倒せるようになったのか。まあ、俺は三歳の時に倒したけどな!」

 周りの取り巻き立ちも健在らしい。

「おい! みんな聞いてくれよッ! アイルがコボルト(・・・・)を倒すことに成功したらしいぞ!」

 その呼びかけに俺に意識が向いていた奴と向いていなかった奴が反応する。

「本当かよ」

「あのアイルだぞ?」

 コソコソと喋り声が聞こえ、やがてザワザワとなってくる。

 テレンスはもう興味が無くなったのか、俺を肩で吹き飛ばし、カウンターの受付嬢に話しかける。その受付嬢も何もなかったかのようにテレンスの話を聞く。

「……ぶつかりましたよね?」

 帰ろうと思い、立ち上がると後ろから聞き慣れた女の人の声が聞こえる。

 声の聞こえる方向を見ると、顔を下に向けたたシャルマがいた。

「ぶつかりましたよねッ?」

 一回目はテレンスの耳には届いてないと判断したのか、二度目の声は大きくなった。

「な、なんだよ」

 二回目は聞こえたのか、シャルマの方を見る。

「アイル様に謝罪を……」

 さっきの大声とは裏腹に低く、冷静に言葉に出す。

「はっ! 嬢ちゃんがアイルのパーティになった奴か」

「はい。そうですが何か……」

「残念。はずれを引いたな。可哀そうに……そんな雑魚とパーティ組んじまって」

 心の底から嫌悪感が溢れ出るような言い方だ。

「はずれなんかじゃありません。アイル様は……アイル様はとても素晴らしい方です!」

「アイル様って。なんだそれ。洗脳でもされたか?」

 笑いのネタにするためにシャルマを侮辱(ぶじょく)する。

「もう飽きたわ。行くぞ!」

 言いたいことを全て言い終わったのか、換金カウンターに向かう。

 すると、何かまたしようとしているシャルマの姿が見えた。

「シャルマ行くぞ……」

「……はい。分かりました」

 やるせない顔をしながら、案外素直に出口に向かう。

 そして、ギルドを出た瞬間、安堵とともに自分に嫌悪感(けんおかん)がやってきた。シャルマが侮辱されているのに、怖くて言い返すことが出来なかった自分に……

 今回はギルドが主な舞台でした。いやーテレンスが非常に嫌な奴でしたねーはい。

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