これはよくある断罪劇 1
ここはマナーやダンスを学ぶために造られた、学園の施設。この学園は、王都にある貴族専用の学校である。
そして今日ここで行われているのは、卒業パーティーだ。この日は卒業生が婚約者、あるいは友人と楽しげに踊る。
かくいう私もこのパーティーを楽しみにしていたが
ーーその場に場違いな怒号が響く。
「アナスタシア・フィエルテ!貴様との婚約を破棄させてもらう!!」
王太子ことセオドリクが、私に向かって叫んで来る。
周囲は驚き、ぎわめきが波のように広がる。
「観念しろ。お前はこのクリミナル・テンダーネス男爵令嬢を、深く傷つけた!」
「私が…?」
全く見に覚えございませんわ、としらを切る私に、セオドリクが怒ったように見せかけた。
「私がお前を愛さなかったからだろう。だからお前はミナルに嫉妬し、ミナルを虐めたのだ!」
「はぁ」
「机に落書きをしたのも、ノートをビリビリに破いたのだってお前だろう」
正義を気取った騎士団の子息さまが言う。
「授業の失敗をあざ笑い、ミナルを追い詰めるように仕向けたのも、貴方でしょう」
次期宰相の神童さまが言う。
「歩くミルナに、泥水を掛けたのもあんただろ!」
公爵家の後継である愚弟が言う。
側近どもが私を睨みながら言ってくる。
事実だけど証拠がない。
そして、最後に決めてとばかりに王太子が叫ぶ。
「…そして、ミルナを階段から突き落としたのもお前だろう!!」
「あらあら」
許してね、いるかどうかも分からない神様。
ヒロインさん許してあげて、貴方のヒーローを。
「でわ、反論させていただきますわ」
今からとっても悪いことします。