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木枯らし
深琴はウッドチェアに腰をかけて、ただミルクのたっぷりと入れた茶葉茶を飲んでいる。
時折、深琴は喧騒を起こしている木枯らしを見る。みぞれに混じって木の葉も巻き込まれている。
「・・・・・・もうこんな季節か」
窓から顔をそらせば、深琴はうたた寝を始めていた。僕は彼女を観察するのをとても面白く感じていた。
「・・・・・・静かだ」
オルゴールも、いつしか鳴り止んでいた。聞こえるはずのおじいちゃんの声も、いつものように聞こえない。
机の上に順序よく並べた本の中から、厚い皮の日記帳を開いた。ペン立てから青いインクの万年筆を持ち出して、文字の羅列を作っていく。
何かを書こうとして、一向に僕は困る。なにを綴ろうか、なにを祈念しようか。深琴を横目で見てから、筆は進みだす。何かを書かなくては。生きる証を、書かなければ。僕の心は常にその焦りだ。