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結局
「結局、ついてこられたのですね」
言葉を、落とすような口ぶりで深琴は言った。その調子は、初めて出会ったそれに似ていた。
「なぜ、なぜ。なぜ今なんだ」
そんなことを言っても、仕方ないではないか。僕はわかっていた。なぜ今なんだなんて言われても、深琴には関連もない話なのだから。
でも諦めがつかなかった。否。諦めというより、執着心だろう。
彼女の言葉は、あどけなかった。
「道流さんと、あの海を見た時。私、思ったんです」
あの透き通った青のことだ。あの色を見せては、いけなかったのだろうか。
「あぁ、帰らなくてはと。この海が、そう言っているのだと」
勘づきのいい僕は気付いてしまった。あの強い眼差しは、その意思は、遠い記憶に残るはずだったあの塔への想いだったのだ。
「なぜ、そこまで塔に帰りたがる? 」
「・・・・・・帰らなくてはいけないのです」
彼女が中に入るのを、僕は見届けるしかなかった。木の板は閉じた。そこにあるのは、冷たい余韻だった。最後に目に焼き付けた君の後ろ姿を僕は忘れたことがない。




