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武田さんのジェンダーチェンジ  作者: 宇佐見イニ
第一章 変化の夏休み編
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第3話 デストライアングル


「に、にーちゃんは家で、ね、寝ています!」


「ほらな、あいつ夏休みに入った瞬間から色々なスイッチ切りやがった」


(まずい…。なんでよりによっていつもはインドアなこの2人がこんなところにいるんだよ)


無事買い物が終わったことは良かった。しかしまさかこんなところでアクシデントが起こるとは(じん)は思わなかった。実に不運。すると美少女化した仁の存在に気づいたふたりは、


「ん?夏芽(なつめ)ちゃん、この子は?友達?」


「見た目日本人じゃなさそうなんだけど」


と、仁に近寄ってくる。


(大丈夫。バレるわけがない。落ち着け、落ち着くんだ俺っ)


夏芽はどうしようかとあたふたしている。助けは求められそうにない。しかし夏芽を置いてこの場から逃げ出す訳にもいかない。どうしようかと悩んだ挙句、


「そ、そうなんです、夏芽ちゃんの友達やってます、武石仁子(たけいしじんこ)ですっ」


仁子て…。


人は焦ると考える能力が極限まで下がることを実感した仁だった。横見るとあたふたしていたはずの夏芽も笑いを堪えている。


今笑ったら怪しまれるだろ!


こうなったら仕方がない。なんでもいいから理由をつけてとっととこの場から去ろう。そう思い顔を上げ、バカ2人の方を見る。裕翔(ゆうと)は何やら電話をかけているようだ。


…電話?


はっと思った時にはもう遅く、けたたましい音量でサイドバックに入っていた携帯が鳴る。急いで止めようとバックから携帯を取り出す。しかし焦りすぎたのがいけなかった。仁が取り出した携帯を見るなり、(たく)


「ん?それ仁の携帯じゃん。なんで仁子ちゃんが持ってんの?」


(まずった!)


「それに仁子って、んん?」


冷や汗が止まらない。こんなところでこの2人にこの姿がバレたら、一体どうすればいい?思考が鈍ってくる。目が回ってきた。すると夏芽が


「あっ、にーちゃんから盗んだ携帯仁子ちゃんに貸したままだったねっ。ごめんごめんびっくりしちゃったね。あ、お二人さん夏芽たちもう帰るので、お、お邪魔しましたー!」


と、手を引っ張ってその場から逃げ出させてくれた。持つべきものはいい妹。うん。怪しい感じにはなってしまったが、何とか逃げ切れた。もうあの二人には会わないようにしよう。そう思う仁だった。



家に帰ってきた。携帯を見るとあの二人からのLINEが大量に来ていた。


「なに妹に携帯取られてるんだよ」


「仁子ちゃんて誰だよ可愛いな。今度紹介しろよ」


「てか、こんな時間まで寝てんなよ」


…。よかったバレてはいないようだ。夏芽も少し疲れた様子だ。やはり外には出ない方が良いのだろうか…。するとインターホンが鳴る。モニターを見てみると、そこに写っているのは透里(とおり)だった。


なんでこんなに災難が続くんだよ…。


しかし、家にあげる訳にも行かない。バレたら一大事だ。ここは夏芽に頼るしかない。


「夏芽っ!もうひと踏ん張りだ!透里を追い返してくれないか?」


「人使い荒い人は嫌われるよ?」


もう、と言いつつも玄関へ向かう。後でアイスでも奢ってやるか。そう思いつつそっと玄関の近くへ行き、聞き耳を立てる。


「あ、えっとー、に、にーちゃんは出かけていて…、まだ帰ってこないと思うんですね。だから、えっと、今日は帰った方がよろしいかと…」


焦っているのか、夏芽の口調が変だ。


「また遊びにいっているのかしら。まぁいいわ。夏芽ちゃん、私はずっと待っているわ。夕飯でも作ってあげようかしら。上げてちょうだい?」


「え?!えと、あの!」


「どうしたの?」


「あ、いえなんでもありません…。」


おい!諦めてんじゃねぇよ!夏芽ぇ!


「じゃあ、お邪魔しますね」


透里が上がってくる。まずい。とにかく隠れなくては!急いで自室へと身を隠す。しかしあろう事か、透里はまっすぐ仁の部屋へと向かってくる。万事休す。こうなったら仕方がない。

バタンとドアが開く音が聞こえた。ドアの前には透里が立っている。夏芽が後ろで心配そうに見ている。仁はちょこんと、部屋の真ん中辺りに正座をしていた。そしてわざとらしく


「わっ、し、失礼しましたっ。夏芽ちゃんと遊んでいたのですが、もうこんな時間でしたか!し、失礼しますっ!」


と、夏芽の友達を演じ、その場を去ろうとする。しかしすぐに


「ちょっといいかしら」


と、止められた。


「な、なんでしょう?」


「あなた、夏芽ちゃんの友達よね?」


「は、はい」


「なんで仁、この子のお兄ちゃんの部屋にいるのかな?」


「そ、それは…」


「あ、えっと、夏芽の部屋が汚れていてっ、にーちゃんがちょうどいなかったから使っちゃえと思って!」


夏芽がフォローする。


「そう、私お邪魔だったみたいね?」


「あ、いえ、そんな…」


「夏芽ちゃん台所使わせてもらってもいいかしら?」


「え?あ、はい。ちょっと汚いんで掃除してきますね」


夏芽が台所へ向かう。透里はすっと仁のほうを向いて


「綺麗な髪の毛ね」


と微笑みながら近づいてきた。反射的に後ずさりしてしまう。透里はどんどん近づいてくる。やがて方を捕まれ、ふっと笑い、そして仁の耳元で囁くように


「バレないと思った?」


仁はその場に凍りついた

勉強の合間がてら書いてます

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