ショータイム加藤
グラヴノトプス目線です。
………分かっていた。
この力に頼る事が、間違っている事くらい。
………分かっていた。
復讐するべき相手を間違えている事くらい。
それでも、溢れる憎悪を、憎しみを抑えることができなかった。
その結果、アポロア様が何で生かしてくれたのか、何を託してくれたのかも忘れ、借り物の力に酔いしれて暴れてしまった。
けど、そんな俺に使徒殿は優しく手を差し伸べてくれた。
身をもって諭してくれた。
そんな力に頼るな、と。
お前の頼るべき強さはそんな物ではない、と。
なのに、その事実を認めたくなかったから子供のように癇癪を起こして、暴れて、挙句に先祖の仇と手を結んで使徒殿を殺そうとして、魔族の先達の誇りに泥を塗った。
本来、それは許される罪ではない。
泣いて謝ろうが、命をもって償おうが、決して許されない罪だ。
けれど、使徒殿は決してこの未熟者を責めなかった。
そのとき、盲目していた復讐心は消えた。
アポロア様が託してくれたものに、ようやく気づくことができた。
気づくのが遅すぎた。
多くの同胞たちに迷惑をかけた。
だから、きっとこれは罰なのだろうと思う。
こんな愚者だから、結局最後まで謝るべき相手に謝罪の1つも口にすることさえできなかった。
我ながら最低だと思う。
でも、敵の手にかかるより、使徒殿の手にかかるのはずっと良い。
使徒殿、申し訳ありません………
最後まで迷惑をかけることになる方は、優しく俺の頭を撫でてくれた。
それだけで、叛逆者には勿体無い幸せだった。
来世では、今度こそこの方に忠誠を誓える魔族の戦士となりたい。
…………………やつの罠が、動く。
海魔が俺様の全てを飲み込んでいく。
エンズォーヌは強大な存在だ。
それでも、使徒殿は魔族の守護者だ。こんな邪神なんかには絶対に負けないだろうという期待が、俺様の中にはあった。
後悔はある。
逆恨みで襲いかかり、邪神なんかと手を結んだこの愚か者にも手を差し伸べてくれた方がいる。
冷たいけど、その実とても思いやりがあって、信念があって、力を溺れることのない心があって………そして、とても温かい手。
頭を撫でてくれたその手は、とても広くて深い慈悲があった。
だから、この方を傷つけた自分自身の片をつけられないことを後悔している。
そして、この方と出会えたことが幸福に感じている。
だから、良いんだ。
俺はもう、救われたんだから………。




