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温泉

「これが温泉! 広いのぉ~」


 初めて見る温泉に感激するアリシア。

 もうすぐあいつらがやってくるだろう。

 とは言ってもここは混浴ではなく男女別。

 とりあえず男の方の様子を見るか。



「わしも入っていいのか? 一緒に入るんじゃ~」

「いや入るのは別にいいけど。女風呂に入れよな。そっちの様子もあとで教えてくれ」

「一緒じゃだめなのか? 寂しいのぅ。じゃあまたあとでのー」


 まったくここは混浴温泉じゃないんだよ。ドキドキするような発言はやめてくれ。

 大体男女が風呂を一緒に入るってのはだな。

 おっとここまでにしておこう。

 


「いやーいい湯だなぁ」

 

 俺は奴を待ち構えるために先に温泉に入っていることにした。

 旅の疲れが癒やされる。一度死んだこの体に温泉が沁みるぜ。

 今頃アリシアも温泉を満喫しているだろうか。

 初めて入る温泉には感動するだろうなぁ。

 

 それから数十分待ったのだが一向に奴は入ってこない。

 おかしい。時間的にはもうジャックが入ってきておかしくない時間だぞ。

 確かに温泉に入るという話をしていたし。

 もしかしたらキャンセルしたのか?

 俺はとりあえず一端男湯から出ることにした。

 このままじゃのぼせてしまう。


「アルス~!」


 突然アリシアが俺の名前を叫びながら男風呂に乱入してきた。

 おいおいいきなりどうしたんだ。

 ていうか全裸じゃねーか。

 

「ちょ、どうしたアリシア! いや違う。だめだ」

「何がだめなのじゃ!? 大変なのじゃ!大変なのじゃ!」


 全裸のまま俺に近寄ってくるアリシア。

 おいこらやめろ。


「何を慌てておるのじゃ。とにかく大変なのじゃ」


 腕に柔らかい感触が。

 これはまさか……いや考えてはいけない。考えたらだめになる。

 俺はとりあえず目をつぶってアリシアに聞いた。


「アリシア、教えてくれ。一体何が大変なんだ」

「それがの。女湯に何故かあの男、ジャックが来たのじゃ」

「なんだって? あそこは女湯だぞ」

「それがのぉ。『あれ? ここは女湯じゃなかったのか!?』とか驚きながら入ってきたのじゃ」

「は? 何だよそれ。入り口にはちゃんと男湯と女湯と別れてたぞ? で、それでどうなったんだ?」

「別に追い出されることなく普通に一緒に温泉に入っておるぞ」

「は? 何で?」

「それが分からんから大変なんじゃ。とりあえず一緒に来て見てみるのじゃ」

「俺も女湯に行くのか?」

「大丈夫なのじゃ。今は他の客はいないのじゃ」


 こうして俺は目をつぶりながらもアリシアに手を引っ張ってもらい何とか女湯に辿り着いた。

 だが女湯でも目をいつまでも閉じていては様子を伺うこともできない。

 しょうがないからうっすら目を開けて様子を伺った。


「ちょっと絶対こっち向かないでくださいね!」

「分かってるよ」


 ツンツンした感じの美少女がジャックに忠告している。

 だけど、全然キツイ言い方ではない。むしろフリのほうにも思えるぐらいだ。

 あれが恐らく騎士団長か? 一番筋肉がついていてスラっとしている。

 それでいて巨乳。いい趣味をしている勇者だなおい。

 こんなん反則じゃないか。


「あら私は別に見られてもいいんだけど? 勇者様ですし」

「私も……いいかも」


 そう言う二人はきっとエルフと魔法使いだろう。

 二人は別に見られてもいいというような態度だな。

 何故こんなにも恥じらいがないのか。

 それにしても見事な巨乳だなこの二人も。


「ちょっとみんなどうしたのよ。おかしいわよ」


 そう言って4人とは距離を取る女の子が一人。

 これが皇帝の一人娘かな。

 長い黒髪に勿論というべき巨乳。身長は高く肌は白い。

 そしてなにより気品を感じる。

 俺のタイプな娘だな。

 おっとこんなことはどうでもいいことだ。

 

 しかしやはり様子がおかしい。

 普通いくら仲間だからと言って一緒に風呂にはいるか?

 しかも明らかにのぞきにきているのにあの態度。


「アルス。やはり何かの力を使っているようなのじゃ。でも一人だけ抵抗してる娘がおるようじゃの。あの娘じゃ」


 そう言って指差した先にはあの皇帝の娘がいた。

 やはりまだ完全に操られてはいないということか。

 

「どうするのじゃ? 近寄って話を聞いてみるか?」

「いやあの裸の群れに近付くのは俺には無理だ。とりあえず上がろう。いい加減のぼせる」

「了解なのじゃ!」

「馬鹿野郎いきなり湯船から上がるな! 全部丸見えなんだよ!」

「? それが何かいかんのか?」

「いかんのじゃ! いいか、女の子はめったに男の子に裸を見せてはいかんのじゃ」

「そんなの魔界では聞いたことがないのじゃ」

「人間界では常識なの!」

「じゃあ見せていい時もあるのか?」

「それはうん。そうなんだけど」

「どういう時なのじゃ?」

「うるせぇ! さっさと行くぞ」

「何で怒るんじゃ~」


 とにかく俺達は風呂から上がった。

 温泉の暑さより別の意味でのぼせちまうよこれじゃあ。

 しかしさすがに俺の常識は魔界では常識ではなかったか。

 こりゃあこれから大変だな。色々教えないといけない。

 どうか分かってくれるとといいのだが。



 そしてあいつらより先に風呂から上がった俺達は作戦会議をすることにした。


「やはり確信した。あいつは野放しにしてはならない。あんな巨乳達を連れて魔王討伐の旅など許されることではないだろ」

「で、どうやって倒すのじゃ? 奴も前回同様強いぞ。恐らく一撃で殺されてしまうのじゃ」

「いや殺されても大丈夫だ。何度もやり直せるからな」


 死んだらやり直して対策を考えればいい。

 奴の体に触れてとりあえずあの言葉ザ・リアルを唱えればいいだけなんだから。

 何度も死んで考えよう。


【無理ですよそれは。あれは前回のみのサービスです。今回は一撃で死んだらそれまでです】


 えっ?

 久々に声聞いたと思ったらなにそれ。

 おかしいやろそんなん。

 俺はてっきり今回も同じように戦えると思っていたんだが?


【常識的に考えて何度も死んでやり直せるわけないでしょう。そんな都合のいい展開が何度も続くわけありませんよ】


 いやそれは正論だけどさ。

 でも相手はチートなわけじゃん?

 だったらそれぐらいあってもいいんじゃないの?


【貴方にはそのチートを破るための力があるでしょう。一度きりのチャンスを活かす。ナチュラル勇者である貴方ならきっとできます】


 いや無理だろ。

 相手はあのチートだぞ。攻撃食らったら一撃で死ぬんだぞ。

 現に前回も何度も死んだじゃないか。

 

【うだうだうるさい。いいからやるのです】


 いやキレるなよ。

 俺のことをもっと大切に扱ってくれ。

 何か言えよ。

 ……。

 何も反応はなかった。

 どうやらキレてどっかへ行ってしまったらしい。

 ということはやはり一度きりのチャンスを活かす戦いをしなければならないのか。


「何度も死ねるのか? じゃあ何回でも挑戦すればええのじゃな」

「ごめん。勘違いだった。やっぱ無理。一撃死したらそのままだわ。どうしようアリシア」

「とりあえず触れればええのじゃろ? わしにいい考えがあるのじゃ」

「まじかアリシア。その考えってのを聞かせてくれ」

「ゴニョゴニョ」

「なるほど。それならいけそうだな! じゃあ決行は明日の朝。ここをあいつらは明日の朝出発することは調査済だ。そして次の街へ向かうための街道へ出た所を狙うぞ」

「わかったのじゃ! うまくいくとええのぉ」

「そうだな。失敗したら死ぬからな俺」

「なら責任重大じゃな」

「アリシア、頼むぞ」


 こうして作戦会議は終わった。

 何度もやり直せる前提で考えていた俺は今回何も思いつかなかったがアリシアがいい方法を考えてくれて助かった。

 きっとこの方法ならいけるはずだ。

 見てろよジャック。

 俺は絶対に転生者を許さない。ザ・リアル これが現実ということを思い知れ。




 

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