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強大な敵

(ひいらぎ)南天(なんてん)をくわえいつものように彼女のもとへ行くと、凄まじい声が聞こえた。

低く唸る犬と猫の声。

微かな違和感に近づくと、大きな犬とにらみ合っている小さな彼女の姿があった。

彼女の毛は血でどす黒く染まっており、犬の口や爪も同じ色で染まっていた。


「ルナ!」

「来ないでっ」


駆け寄ろうとした足が止まる。


「へえ、小さな彼氏の登場かい?」


ソイツの目つきは、僕を芯から凍りつかせた。

恐怖から?

いいや、怒りからだった。


僕は冷静に切れるタイプなんだな。

なんて考えてしまうほどに頭がはっきりとしていた。


「これからデートなんです。申し訳ありませんがお引き取り願えますか」


花を置き、ゆっくりと近づく。


「はあ?お前何言っちゃってんの?俺はこの子猫ちゃんに礼儀ってものを叩き込んでんだ、よっ!」


ゴミ箱が派手な音をして目の前を転がっていく。


「低脳な輩はどこにでもいるんですね。そういえば…、そんなに尻尾を丸めて何を怖がっているんですか?

まさか僕みたいなねずみが怖いんですか?」


そう。よく観察しているとすぐにわかる。

ヤツは下から見上げるように僕を睨み、汚れた尾は足の間に挟まっていた。

これは決して強者がとるような姿ではない。


「てめえいい加減にしろよ。食われてえのか!」

「彼女の一部になるなら大歓迎ですが、貴方のような方の一部になるなんて…。

死んでもごめんです。鳥肌が立つようなことを言わないでください」


ぶるると身を震わせる僕はなかなかの役者だと思う。

が、口で勝ててもこの体格差ではまるで勝てる気がしない。

彼女は前足の傷が酷いのか、立っていることすら辛いようだ。

走って逃げることはできないだろう。

僕が今できることはなんだ。


「調子に乗ってんじゃねえぞこら!」


とうとうキレて攻撃してきた。

右フックを後ろに飛んで避ける。

するとすかさずぎらつく牙で噛み付いてくる。

空を切った鼻面に爪をたてる。


二度攻撃され一度返す、それが何度も続いた。

攻撃は全てかする程度で交わしていたが、一撃の衝撃が重い。


―くそ、僕がもっと大きければ…っ!


その時、目の前が揺れた。


鉄の味がする口内。

遠ざかる犬。

揺れる視界。

背中に走る衝撃。


飛ばされた僕は脳震盪を起こして、立ち上がることが出来なかった。

ふらつく意識と足をしっかりさせようとするもうまくいかない。

その間にヤツは動けないルナに向かって一歩、また一歩と迫っていた。


「どうする子猫ちゃん、頼みの騎士はもう起きれねえみたいだ。

お前も辛そうだなあ、かわいそうに。俺が楽にしてやるよ」


ふざけるな、彼女に近づくな!


「近づくんじゃないよ、この外道」


威嚇するルナ。

しかしヤツは下卑た笑みを絶やさずゆっくりと近づいていく。


どうすればいい。どうすれば彼女を助けられる。

必死に頭を回し、ある方法にたどり着いた。


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