ありあまる幸せ
暖かい。これが天国ってやつなのかな。
彼女の尾に包まれているような幸福感は本当に心地よかった。
『ねえグレイ。私も貴方を愛しているの』
どうやら天国という場所は都合の良い夢を見せてくれるらしい。
『確かに私は猫で貴方はねずみ。種族云々の騒ぎではない高い壁があるけど、それがなんだっていうの。
私は貴方が好き。貴方も私が好き。ほら、こんなに素敵に完結してるじゃない』
そうだね。今なら君の可愛い態度が見れるかな。
『貴方が送ってくれた花たちの意味、実は私知っているのよ。
花屋の女の子がね、私のこと可愛がってくれているの。
だから持っていったら教えてくれたわ、花言葉ってやつを。
ねえ、貴方わかっててプレゼントしてくれたんでしょう?ひどいじゃない、教えてくれないなんて。
そうしたら私だってほんの少し素直になったのに』
今までも可愛い君が素直になったら、きっと僕はにやけすぎて顔が筋肉痛になってしまいそうだ。
『冷たい態度を取ったこともあったけど…、いえごめんなさい。恥ずかしくて冷たい態度しかとってこなかったけど、貴方のこととても好きなのよ。
また貴方の優しい言葉が聞きたい。暖かい眼差しがみたい。
こんなに虜にしておいて私の前からいなくなろうとするなんて残酷だわ』
ごめんね。でも僕はこの結末に結構満足してるんだ。
嘆くことばかりだったけど、最後の最後に君を守れた。とても誇らしいよ。
『お願い置いていかないで。貴方のいない今後なんて考えられない。だから…だから…』
―戻ってきて
さっきまでの浮遊感が嘘のように体が重い。全身がずきずき痛む。
それに自慢の毛皮が濡れているみたいだ。落ちる雫と、それを拭く暖かいもの。
「…ちょっとそこはくすぐったいよ」
「グレイ!」
さっきまでとは違う声の明瞭さに重い瞼をあげた。
そこには濡れた瞳の愛しい人。
ああ、君の瞳に僕がうつる。
その中にいる僕の瞳にも君がうつる。




