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第76話 夫々、意思

───夜が開け、朝日に照らされるBNの艦隊。

本部に向かうまで幾度とNFと戦闘を行なっていたが、結果はBNの大勝利であり、BN側の被害は最小限に抑えられた。

エリルの乗る紫陽花、そして紳の乗る白義が猛威を揮いNFの基地や部隊は呆気無く落とされていた。

まさに無敵の存在、BNの艦隊は何の問題も無く着実にNFの本部へと向かっていく。

それまでの間、クロノ無き部隊メンバーはロビーで待機していた。

羅威と穿真は無言のまま椅子に座りテレビに映る映像を見つめている、その後ろの椅子に香澄と雪音の二人が座っていた。

テレビはほぼ全てNFとBNの決戦についてのニュース映像がながれ、NF本部に各基地の軍隊と部隊が集結してきていた。

その映像を見ていた羅威が微かに反応する、NFの艦隊の横にSVの艦隊も並んでいたのだ。

「羅威、お前は止められるのか?」

同じ映像を見ていた穿真が口を開くと、それに続けて後ろに座っていた香澄が口を開く。

「この艦に残ってるって事は、覚悟は決めたんでしょうね?」

香澄の言葉に羅威は後ろに振り返らず、テレビに映る映像を見つめながら答えていく。

「俺は愁を殺すつもりは無い。だが、必ず俺の手で止めてみせる」

その羅威の言葉が生半可に聞こえた香澄は、更に言葉を尖らせた。

「止めるんじゃだめ、殺すつもりでいかないと。あんた死ぬわよ?」

「死ぬつもりも無い、絶対にな」

羅威の言葉を聞いて香澄は黙り込む、腕を組みじっと羅威の後姿を見つめていた。

するとロビーにパイロットスーツを着たままのエリルが片手に缶ジュースを持って入ってくる。

「ふぅ、おっ、皆ここにいたんだ」

羅威達を見つけると、羅威の隣に座り買ってきたばかりのジュースを開けて飲んでいく。

「よーエリル、お前大活躍してるじゃねえか。あの紳と肩を並べて戦場に出てるんだからな」

「私と紫陽花があれば当然の事よ、っま、穿真もせいぜい頑張ってねー」

「なっ!てめぇ…絶対俺の方が先に昇格してやる……」

余裕の表情で缶ジュースを飲むエリルに怒りの闘志を燃やす穿真、するとまたロビーの一人の女性が入ってきた。

「あー、ここにいたんだ。羅威ったらリハビリの時間忘れてるでしょ?」

白衣に身を包んだアリスは両手を腰につけ怒ったように羅威を睨む。

「ああ、もうそんな時間か……」

「もー!時間も無いんだから早く来てよー!」

椅子に座っていた羅威の手を掴むと、羅威を立ち上がらせそそくさとロビーを出て行く二人。

「すまないなアリス、いつも世話かけてばかりで」

手を引っ張られながら口に出した言葉に、アリスは笑顔で振り向いた。

「いいのよ、羅威の世話は全部私が見てあげるんだから。一緒に頑張ろ!」

いつも自分を励ましてくれるアリスの言葉と笑みを見て、羅威も小さな笑みを見せた後二人は医務室へと向かっていった。


───NFは一夜にしてNF本部の軍備を増強し、既に戦闘準備は出来上がっていた。

横一列に並ぶ戦車の後ろでは綺麗にギフツが並び、その後ろにはリバイン等が立ち並ぶ。

そして数十もの艦隊も並び、後はBNが来るのを待つだけであった。

勿論NFの最高主力艦アルカンシェルは上空で待機、本部に押し寄せるBNを待ち構えている。

NFにいる赤城と由梨音も既に機体に乗り込み、二人で話し合っていた。

「赤城少佐!ついに私にもリバインが支給されましたよ!これでバリバリ活躍できます!」

赤いリバインの横でノーマルカラーのリバインがテスト操作を行なうように両腕を動かし始める。

「浮かれるな、機体の性能に頼りすぎると痛い目に遭うぞ」

赤城の鋭い指摘に調子に乗っていた由梨音も興奮を抑えしっかりと操縦桿を握る。

東部軍事基地において戦場出て帰ってきた生き残りの兵士はわずか赤城と由梨音だけだった。

だが二人は英雄として扱われる訳ではない、本部の人間は何故この二人だけが生き残ったのかが不思議だった。そして思われる、裏切り者ではないのか、戦場から逃げ出したのではないのか、命を懸けて戦っていなかった、と……。

東部軍事基地に帰ろうとしていた赤城だったが、既に基地としての機能を果たしていないため帰る事すら出来ず、本部に留まり続けるしかない。

「了解しましたっ!これで私も赤城少佐をしっかりと援護するよう頑張ります!」

「全く、由梨音はいつも元気だな……助かるよ」

「はい!私はこの元気で一生赤城少佐についていきます!だから、一緒に頑張りましょう!」

もうすぐ戦闘が始まるというのに満面の笑みを見せる由梨音、そんな由梨音の笑顔についも励まされてきていたと実感する赤城もふと笑みを見せた。

「ああ、共にな。だから由梨音……絶対に生きて帰るぞ、でなければ減給だ」

「了解!一緒に帰りましょうね!赤城少佐!」


───既にNFの本部に到着していたSV、その創始者であるフィリオとアリス達はNF本部の地下室に来ていた。

照明に照らされた明るい部屋に辿り着くと、その部屋にある巨大な機械の扉の前まで歩いていく。

フィリオ達の目の前にある何重にも重ねられた分厚い扉、その扉が轟音と共にゆっくりと開いていく、扉の隙間からは暗闇で何も見えないが、扉が完全に開ききった後、全ての照明が灯り暗闇が消える。

目の前に広がる巨大な空間、見渡す限りの壁には何かの文字が延々と刻み込まれており、その中央には一枚の白い石版が立てられている。

床には巨大な陣のようなものが描かれており、複雑な模様が入り組んでいた。

「本当に神が復活するのか?」

横に立っていた騎佐久がそう問うとフィリオは無言で頷いた後、一歩ずつ歩き始め。その後ろをアリス、そしてゼストの二人がついていく。

「全てのNFが期待してる、神の復活を。私も一人のNFとして楽しみにしている、後は任せたよ」

騎佐久は黙ったままの三人にそう告げると、小さく笑みを見せたながら後ろに振り返り部屋を後にする。

だがフィリオは騎佐久の言葉を聞く程の余裕が無かった。巨大な白い石版の前に佇み、ただじっとその石版を見つめ続ける。

そして足元を見れば、それが巨大な陣の中心であることがわかった。

「全ての準備は整いました、後は第1MGだけですね」

「でもお姉様、やっぱりこんなの……」

「アリス、何も言ってはなりません。時が来るまで待ちなさい、いずれ彼はここに訪れます」

フィリオは陣の中央に跪き、両手を顔の前で合わせるとただひたすら祈り続けた。

祈りなど、力には勝てない事を知りながら……。


───朝日に照らされ、甲斐斗が寝ていたベッドの上でふと目を覚ますアビア。

まだ眠そうな顔をしながら目元を擦りゆっくりと起き上がる。

そして顔を横に向けると、そこに寝ていたはずの甲斐斗の姿が消えていた。

「……いない」

いかにも不満気な顔をした後、自分の来ているパジャマに手を当てる。

するとパジャマがいつもの自分の私服に変わっていき、元のアビアの姿となる。

そして部屋を出ると、もう一つ隣の部屋を開けて部屋の中へと入っていく、そこには熟睡したまま起きる気配の無い青年ロアが寝ていた。

そしてアビアはロアに歩み寄ると、躊躇いなく頬を強く引っ張り始めた。

「いっ、痛!ちょ、何してるんですか!」

予想通りの反応に無反応のままアビアは顔を近づけると口を開いた。

「ねえ、甲斐斗知らない?」

「えっ、甲斐斗?何も知らないけど……いないの?」

予想していた返事を聞かされ腕を組みながら考え込むアビア、青年はベッドの横に置いていた剣と拳銃を腰に着けると、部屋にある一つの窓を開ける。

「マルス、君は甲斐斗を見たかい?」

ロアの声を聞いた龍は、朝日を遮るように顔を出し何やら伝えようとしていた。

そしてロアは振り返ると、腕を組んでいたアビアに声を掛けた。

「甲斐斗なら機体に乗って何処かに行ったらしいよ」

突然現れた龍にアビアが驚くと思ったが、アビアは何食わぬ表情でいる。

「あれ、龍を見ても驚かないんだね」

「ねー、甲斐斗がどこに行くかはわかるの。連れてってくれない?」

「僕の話し聞いてる……?まぁいいや、甲斐斗の所に連れていってあげるよ」

そう言うとロアは窓から小屋の外に出ると、アビアも続いて窓を上り外に出る。

龍は体勢を低くして二人が乗りやすいように座ると、ロアが龍の背中に座り、その後ろにアビアが座る。

「へー、すごーい。暖かいんだね」

初めて乗る龍の感触に少し興味を抱くアビア、二人が座った事を確認した龍はゆっくりと立ち上がると、二枚の巨大な翼を羽ばたかせ始めた。


───俺は小屋の近くに止めてあった自分の機体に乗り込みNF本部に向けて機体を走らせていた。

それにしても、何なんだこの胸騒ぎは……息がし辛い程胸が苦しい。

何かを暗示させているのか?俺に、何かを伝えようと。

落ち着けない、焦りが俺を取り巻く、俺は何に怯えているというんだ……。

……何かが起ころうとしている、それも途轍もない事が。

「ミシェル、待っててくれ。今すぐ、お前を助けに行くから……だからっ!」

『─ERROR─』

「は……?」

目の前のモニターに突如ERRORという警告表示が現れた。

何度も何度も、覆い重なりながら全てのモニターがERRORの表示で埋め尽くされていく。

気付いた時には背部から無数の触手が現れ、俺の体に巻きついていく。

そして右肩に触手が突き刺さっていくと、左目の中にも無数の触手が入り込んでくる。

俺は何の抵抗も出来ず、体全体を触手に覆われていき視界が暗闇と化した後、段々と意識が消えていく……。

甲斐斗の乗るMDの足元から突如地面を裂いて現れる巨大な触手。

地中から出てきた無数の触手はMDに絡みつき機体を捕りこんでいくと地面の中へ引きずり込み、機体は姿を消した。


───時は来た、本部で待ち構えるSVとNFの前に次々と現れるBNの機体と艦隊。

アギトに乗っている愁もその様子をじっと見つめていた。

艦隊のハッチが開き、次々にBNの機体が姿を見せる、その中に神威と良く似た機体が姿を現した。

「俺は今更、迷う事は出来ない……」

愁はそう言うものの、心の中では未だにさ迷っている。

フィリオの為に戦うと決め、誓った愁。だがそのフィリオが自分の元から離れる、自分に力が無いからだ。

悔しい思いを何度もしてきた愁だったが、慣れる訳でもなく、耐えられるものでもない。

だから───。

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