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第64話 救済、困惑

「なぁ赤城、お前は信じてるのか?レンが生きているって」

地面から湧き出る触手を大剣で片っ端からぶった切って行くMD、だが攻撃は地面からだけではない、空中で待機していた無数のフェアリーが一斉に甲斐斗に向けてレーザーを発射していく。

「それを今、自分の眼で確かめに行くのだろ?」

MDの後ろから飛び出てくる赤いリバイン、LRBを使いMDに向けられたレーザーを弾くと近くにいるフェアリーを次々に斬り落としていく。

「余裕だな、たしかに確認しなきゃわからねえが。そう簡単に胸部に辿りつけるかねぇ」

そのまま二人は止まる事無く巨大なERRORの元へと走っていたが、瞬く間に地面から触手が生え直り、先程の倍の数のフェアリーが空中から狙撃を開始し始め、近づいていく事に触手の数は増していき、巨大ERRORから出ている砲身と銃口は近づく敵を容赦なく撃ち続ける。

さすがの甲斐斗と赤城も、この激しい弾幕の前では近づく所か、攻撃を回避するだけでもやっとだ。

フェアリーの攻撃を回避していたリバイン、だが足元の地面から突然に触手が湧き出るとリバインの両手に巻き付き始めた。

「っ!?しまった……!」

触手により身動きを封じられたまま地面に叩きつけられるリバイン。

それを狙うように機体の周りの地面から次々に触手が湧き出ると、胸部に向けて一斉に襲い掛かった。

赤城が目を開けるとそれは見えた、無数の触手が一本の巨大な触手に変わり胸部を向かってくるのが。

すぐさまその場から逃げようとしたが、機体は触手によってしっかり固定されている為身動きがとれない。

その時、両腕に巻きつく触手目掛け二発の青いレーザーが触手を焼き切ると、リバインはすぐさまその場から離れる。

胸部を突き刺そうとした触手は地面すれすれで止まると、目の前にいるリバイン目掛け突き進む。

「穿真!彼女の援護を!」

突如リバインの前に現れたエンドミルは、両手のドリルで向かってくる触手を簡単に貫き、破壊していく、ドリルに夥しい血がつくものの、回転するドリルの遠心力を使い血を吹き飛ばす。

「おいおい、足だけは引っ張らないでくれよ?」

その血が自らの機体に付着していくが、穿真は気にせず巨大なERRORへと突き進んでいった。

「すまない、感謝する」

リバインが体勢を立て直していると、空中に漂うフェアリーが放電し、次々に爆発していく。

前方にいたエンドミルまで起こしていく神威は青白いプラズマを放電し続けながら誰よりも早くERRORの元へ向かっていた。

「僕は上昇してERRORの攻撃を誘導する。その隙に穿真と羅威がERRORの懐まで入るんだ。後方にはSVとMD、リバインがいる、前面突破は二人に任せるよ」

クロノはそう言うと機体を変形させて垂直に上昇していく、それを見たERRORは空中に漂うフェアリーを向かわせる。

「さあ行くぞ羅威!アクセルしか踏むんじゃねえぞ!」

「当たり前だ、今の俺にブレーキは存在しないッ!」

触手の壁をドリルで次々に穴を開け、着実にERRORに近づいていく。

その後を神威が放電しながら周りの触手を破壊し、フェアリーのレーザーを弾きながら進んでいた。

巨大ERRORからの射撃もエンドミルの巨大なドリルが次々に弾いていき、徐々にERRORとの距離が縮まろうとしている。

「胸部に行くにはあの弾幕の中を上昇していかなくちゃならねえが、行けるか?」

「任せろ、あの高さなら簡単に上昇できる」

懐に入り、上昇して胸部まで到達するだけだが、思っているほど簡単には飛び込めない。

神威とエンドミルも敵の攻撃を完全には防ぐ事は出来ず、徐々に機体の傷が目立ち始めてきた。

「二人とも!敵ERRORの両肩から高エネルギー反応!来るよッ!」

クロノの声に二人が左右に分かれると、巨大ERRORの両肩からレーザーが放たれ、左右に散らばる2機を狙い撃つ。

二人の動きに合わせてついてくるレーザーは道路にいるERROR諸共吹き飛ばし、近づく機体に照準を合わせていく。

「くっ、これでは近づく事が出来ない!クロノ!両肩のレンズを破壊できるか?!」

「ごめん羅威、それは出来そうに無い……ッ!」

空中を飛び交う無数のフェアリーは四方から黒葉花を狙い撃ち、クロノはその攻撃を避けるだけで精一杯だった、地上とは違い足元から狙われる為、可変を繰り返しながら攻撃を避け、確実に1機ずつフェアリーを破壊していく。

だがフェアリーの数は増える所か、徐々にその数を増していった。

「クロノ、無理をせずに一度下がるんだッ!」

「僕は大丈夫だ、こんな所で落ちやしない!」

その時、神威とエンドミルを尋常ではない速さで追い抜いていく二体の機体がいた。

レーザーの照準が二人に向いている為邪魔が無く、その速さを生かしERRORの足元にまで近づこうとしていた。

「恐らく俺達に照準が向けられる。その間に羅威と穿真は胸部まで行くんだ、早く!」

愁の狙い通り、最も近い敵に向けて両肩のレーザーがライダーとアギトに照準を合わせる。

だがライダーの素早さ、アギトの速さに全く追いつくことが出来ない。

レーザーを避ける中、ライダーは空中に漂うフェアリーの弾幕を避け、擦れ違いざまに切りおとしていく。

「着地は控えて、素早く高く跳び続けて……」

「わかってる!エコは念に集中しろ!」

ライダーが地面に着地したかと思えば、瞬く間に跳び上がり巨大ERRORに近づいてく。

「うん、言われなくても……してる」

気付けばライダーとアギトはERRORの懐に入り込んでいた、ERRORの肉体から生え出ている銃口と砲身からは一斉に射撃が開始される。

ライダーはそれを避けると鍵爪と腰に付いてあるレールガンで次々に銃口を破壊し、アギトも神威の活路を切り開く為に邪魔な武装は全て破壊していった。

ERRORの両肩に付いてあるレンズが次の照準を狙う為に動いた時、そのレンズの前方からは甲斐斗の乗るMD、そして赤城の乗るリバインが互いに大剣を構えて突き進んできていた。

「馬鹿が、釣られすぎなんだよ。行くぞ赤城!あの目玉をぶった斬るッ!」

既に右肩の目の前に来ていたMDは、大剣を振り上げると、出力を上げて特攻して行く。

「承知!」

それに合わせてLRBを振り上げるリバイン、既に左肩の目の前まで来ている。

そして同時に剣を、刀を振り下ろした。

突き刺したまま一気に降下していく両機、レンズの傷が出来た場所から瞬く間に亀裂が広がると、溶液を溢れ出しながらバラバラ砕け散っていく。

二体の機体は出力の限界にゆっくりとその場を離れながら地上に降りていくと、それに合わせて2体の機体がERRORの足元から浮上していた。

ERRORは先程の攻撃に苦しむがるように体全体を震わせ、肉体の至る所から触手を伸ばし始める。

周りの地面はERRORの触手で溢れ返り、血生臭い赤い海が広がっているように見える。

地上へと下りようとしていたMDだったが、その様子を見て浮上を試みるが浮上する気配が無い。

「やべ、出力が上がらん。ちと無理しすぎたなぁ……」

すると、1機の機体がMDの腕を掴むとそのまま空中を平行移動していく。

「さすがに2機だと浮上は出来ませんが、これぐらいなら」

上空で戦っていたクロノが甲斐斗達に気付きリバインとMDを回収しに回っていたのだ。

黒葉花を狙い撃っていたフェアリーも、今は全て胸部へと向かっている為動ける事が出来た。

「すまない、レンは任せたぞ……」

冷却状態に入っているリバインも当然動く事が出来ず、黒葉花に連れられたまま移動していく。

赤城は機体の中ではレンの様子を心配し、段々と遠ざかっていく神威を見つめていた。


───激しい弾幕の間を潜り抜けていく2体の機体、あと少しで胸部にたどり着ける距離まで近づいていたが、ERRORの肉体の隙間から無数に出てくる触手は一斉に襲い掛かっていた。

「羅威!胸部に行ったら何するか、わかってんだろうな?」

「心配無い、このERRORがDシリーズを元にして出来た物体なら!」

ついに2機がERRORの胸部へと辿りついた、神威とエンドミルは互いに背を向け合い、エンドミルは空中から打ち続けるフェアリーのレーザーを巨大なドリルで延々と弾き続け、神威は両手に溜めていたプラズマを最大にまで増幅させると、その両拳を胸部にある操縦室がある部屋の左右に勢い良く突っ込む。

「出力最大、これで───決めるッ!」

操縦桿のトリガーを引いた後、勢い良く前方に押し倒す。

神威の周りに青白いプラズマが纏いだし、黄金に光る装甲が輝き始める。

膨大な電気が両腕を伝いERRORの肉体の中に流れ込み、その衝撃に腕を入れているERRORの肉片が一瞬で焼き焦げていくが、胸部にある操縦席には電流を流しておらず、その周辺の肉だけが次々に破裂していく。

電流は巨大な肉体を持つERROR全体に行き渡り、肉体から出ている触手が痙攣を起こしながら破裂していき、神威本体からも電流が放電して周りのフェアリーを破壊していく。

エンドミルはその様子を確認すると急いで神威の元から離れると、ゆっくりと地面に降りていく。

「羅威!まだ奴の動力回路には届いてねえぞ!」

神威は膨大なエネルギーの出力に機体は大きく振動し、操縦室内は赤いランプが点灯していた。

だが操縦席で聞こえた穿真の声に、羅威は神威の最後のリミッターを外すと、正面を向いて声を荒げた。

「とどけぇええええぇえええええ─────ッ!!」

操縦室の計器の数値が上限を超え、亀裂が走った時、神威の周りのプラズマが消え、電流が止まる。

操縦室の装置の電源が次々に消えていき、かろうじで点いているのはモニターの電源だけだった。

両腕は刺さったまま抜く事ができず、ERRORの胸部のハッチがある目の前で停止した。

だが、それはERRORも同様だった。触手の動きは全て止まり、空中に漂うフェアリーも次々に地面に落ちる。

攻撃も止まり、完全に機能が停止したERROR、その場は一瞬にして静寂に包まれた。


「成功……したのか……?」

羅威は操縦桿を握り締めたままじっとERRORを見つめ様子を窺っていたが、動き出す気配は感じられなかった。

「よし、よしっ!後は玲を、玲を助け出すだけ……!」

焦る気持ちを抑えきれず、すぐさま機体を動かそうと補助電源のスイッチに手を伸ばそうとした時、目の前のモニターが突然切り替わり、その場にいた全部の機体は強制的に通信が繋がれた。

モニターに映る一人の少女、両腕と下半身は触手に埋もれ、背中には幾つもの触手を伸びている、かろうじで見えるのは胸部と頭だけだ。

もはや機体の中には見えない、操縦席一面に血管が脈打っており、内臓のような物まで見える。

「お兄ちゃん……」

その中に玲はいた、力無く頭を上げ、微かに笑っているようにも見える。

「玲!作戦は成功した、助かるんだ!だからもう少しだけ頑張れ、今すぐ俺が助け出すから・・・!」

早く助け出したい、その一心で羅威は神威の補助電源を入れると、神威の眼に光が戻り、機能が復活し始める。

そして神威の手をフェリアルの胸部に近づけようとした時、あの女性の声が聞こえてきた。

『残念だけど、それは無理よ』

先程と同様、その場にいる機体全てに聞こえてくる声。

そして映像が切り替わると、そこには操縦席に座り、パイロットスーツに身を包んだ神楽の姿が映し出された。

『羽衣は後10分後にバリオン砲の発射をするの、貴方達は今すぐこの町から離れた方がいいわよ?』

突然現れた神楽に驚く一同だが、すかさず赤城が反応を示した。

「待て神楽、何故お前がそのような物に乗っている!何をする気だッ!?」

『簡単な事よ、町ごとERRORを消すだけ』

二人の話している間に黒葉花は上空に上がり、遠く離れた場所で待機している羽衣の姿を捉えた。

その羽衣の映像を各機体に流すクロノ、その映像を見た穿真達の顔色は一変した。

「おいおい。あれはBNの艦隊を一撃で全滅させた機体じゃねえかよ!」

穿真の言った事は当たっている、間違い無く羽衣はあの時に現れた機体だ。

「愁……あの機体を止める事は……?」

「無理だよエコ、距離から見てあの機体に近づくには僅かに時間が足りない」

SVすらどうする事も出来ない。しかし、戦闘は終わったはず。なのに何故神楽は攻撃を行なうのか……。

「神楽、この町にはNFの指揮官がまだ残っている。それにERRORは止まった。後はレンを助け出すだけだ!」

レンを、玲を助けだす。その名前で今まで黙っていた羅威も声を上げる。

「そうだ!玲は目の前にいる、助け出せるんだ!」

『無理よ、レンちゃんは既にERRORの一部。人間じゃないの』

その素っ気無い神楽の態度に、羅威は腸が煮えくり返る気持ちだった。

「お前がERRORにしたんだろうがぁッ!お前が玲を、玲をッ!」

怒りと憎しみに満ちた羅威の目は、神楽にはどの様に見えたのだろうか。神楽は表情を変えないままじっと羅威を見つめている。

「やめて……おねえちゃんを、わるく……言わない、で……」

羅威の表情を見て玲は悲しそうに口を開いた、だが口を開いた事より、何故神楽を庇うような事を言うのか羅威にはわからなかった。

「玲!どうして奴を庇う!?奴はお前の記憶を弄り、肉体まで……ッ!」

「だって、おねえちゃん、だもん……ふたりとも、けんか。しないで」

『レンちゃん……』

一瞬見せた神楽の悲しげな表情を見て、玲は小さく微笑んだ。

「わたし、思いだしたよ……ぜんぶ……」

「思い出した……?」

羅威はそう聞くと、玲は小さく頷き、口を開いた。

消されていた全ての記憶を語り始める玲、それは果たして、思い出と呼べるものなのだろうか。

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