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第61話 血、惨劇

「入るぞ」

神楽の部屋の扉が自動的に開くと、外から赤城が入ってくる。

辺りを見渡し神楽を探すが、そこに神楽の姿は無い。

「神楽、いないのか?」

一通り見渡した後、順々に部屋を見ていくと、ある一室の部屋には見覚えのない扉があった。

不思議に思った赤城はその扉の前に立つと、扉は自動的に開き地下に通じる階段が姿を見せた。

「まさか、これは……」

赤城は足早に階段を下りると、そこには思っていた通りもう一つの研究室が存在していた。

しかし研究室は赤い警告ランプが点滅しており、至る所にあるモニターはERRORという文字が映し出されている。

そしてその研究室の片隅には、神楽がうつ伏せになって倒れていた。

「神楽!?」

急いで倒れている神楽に駆け寄る赤城、すぐさま体を仰向けにすると、手袋を脱ぎ脈を確認する。

脈に異常はなく呼吸も正常だが、神楽は意識を失っており声を掛けても一向に起きない。

神楽を抱かかえた赤城は急いでその地下室から出ると、すぐそこのベッドに神楽を寝かせる。

「神楽、お前は地下で一体何を……」

その時だった、突如基地内にけたたましい程の警報音が鳴り響いた。

「レン、まさか……!?」

悪い予感がする、赤城はベッドで寝ている神楽にシーツを掛けると、足早に神楽の部屋を後にした。


───基地内に警報が鳴り響き、武装した兵士達が基地内を駆け回る。

すると兵士達の前を横切る一人の少女がいた、少女は服を着ておらず、兵士達の足が止まる。

小銃を少女に向けると、一人の兵士がその少女に声をかけた。

「おい、そこの女。そんな姿で何をしている」

兵士の声に少女の足が止まる、そしてゆっくりと振り向くと、少女は無表情のまま兵士達の手を伸ばす。

「助けて」

少女が一言呟いた瞬間、伸ばした腕から何本もの細い触手が皮膚を破り突き出てくると、目の前にいた兵士達に襲い掛かった、触手はまず兵士達の手と腕を突き抜けると、目を突き刺しそのまま脳を貫通する。後ろにいた兵士達も同様体中を触手で突き刺され、体から血飛沫を上げながらその場に倒れた。

「えっ?」

腕から突如出てきた触手に驚きを隠せないレン、触手は兵士達を刺し殺すと、自動的に体内に戻っていく。

その感触は余りにも気持ち悪く、まるで体内にミミズが入り混じり中で蠢いているような感覚にレンは襲われた。

レンが足を止めていると、異変に気付いた別の兵士達が次々にレンの元に集まり始める。

皆レンに銃口を向け、今にも引き金を引こうとしていた。

「抵抗するな、大人しくしていれば危害は加えない」

自分の両手を見つめながらレンはそっと駆けつけた兵士達に手を伸ばし、大きく頷く。

「助けてっ……」

するとレンの意識に関わらず腕から触手が突き出て来る、それを見た兵士達は一斉に引き金を引いたが触手はあっという間に兵士達の体を突き抜けると、体の内部から簡単に肉を引き裂いていく。

兵士達の肉片が辺りに散らばり、返り血を浴びるレン。

そのレンの胸部には数発の銃弾が当っていたものの、血はすぐに止まり、傷口は瞬く間に完治する。

「こ、こんなの……い、ぁ……」

死んだ兵士達に背を向け、レンはただ歩いて行く、それもまたレンの意識とは逆らう形で……。


───「おいおい、何か変じゃねえか?この基地」

牢獄の檻を掴みながら外の様子を窺っている穿真、さっきまでいた門番の兵士は姿を消し、絶え間なく警報音が基地内に鳴り響いているからだ。

「たびたび銃声が聞こえてきますね、もしかして味方の誰かが助けに来てくれたのかもしれません」

クロノは耳を澄まし僅かに聞こえてくる銃声を聞き取っている。

「にしてはやけに大胆だな、こりゃ自分の眼で見て確かめるしかねえな」

穿真はそう言うと右手で簡単に檻を捻じ曲げ、余裕の表情で牢屋から出て行く。

「まさかサイボーグの手がここで役に立つとはなぁ、皮肉なもんだ。よし、この混乱に乗じて俺達も逃げようぜ、どーせここにいたって何されるかわかんねえからな」

穿真は皆が閉じ込められている牢屋の檻を捻じ曲げていくと、クロノや雪音、香澄が牢屋から出るが、羅威だけは座り込んだまま立ち上がらない。

「羅威、何ボサっとしてんだ。ここにいたって死ぬだけだぞ」

穿真の言葉に羅威は力無く立ち上がると、ゆっくりと牢屋から出て行く。

「よし、まずは一斉にこの部屋から出るぞ、恐らく出たら見張りの兵士がいると思うからな、気を引き締めていけよ」

「その台詞は隊長の僕が言う台詞の様な気もするけど。ここは穿真に任せるよ」

「おう、んじゃ行くぞ!」

扉が開いた瞬間、勢い良く穿真は駆け抜け部屋を出る、その後に続いてクロノ達が部屋を出るが、そこに見張りの兵士の姿は無かったが、その廊下には血痕が残っていた。

だが普通の後ではない、まるで何者かに引き摺られて出来たかのような後に身震いを感じる。

「血の跡……もしかするとERRORがここに現れているのかもしれません。格納庫に急ぎましょう、恐らく僕達の機体はそこにあるはずです」

クロノはそう言うものの、格納庫の場所もわからない為に下手に動く事が出来ない。

「ちょっとまって、この基地にERRORがいるとしたらまず武器を探さないと、それに格納庫の場所もわからないし……」

香澄の言う事は最もである、まずは何処かの部屋に入り武器、あるいはこの基地の地図を探さなければならない。

その時だった、通路の奥から銃を持ったままこちらに走ってくる二人の兵士の姿が見えた。

だが明らかに様子がおかしい、脱走したBNの兵士が視界に映っているのにも関わらず、兵士達は足元をフラつかせながら全力で走っていたのだ、まるで何かから逃げるかのように。

「た、助けてくれ!誰かぁっ!?」

声を荒げながらこちらへ走ってくるNFの兵士に、クロノ達は何もしてあげる事が出来なかった。

兵士達が助けを求めた瞬間、二人の腹部から突然無数の細い触手が突き抜けてきたからだ。

血を滴らせながら触手から体の至るところを貫通していくと、兵士達をズルズルと引き摺っていく。

「たす、け……」

一瞬で血塗れになった兵士にはまだ意識があった、そして最後の最後まで助けを求め、手を伸ばしたが、伸ばした手は誰にも届く事はない。

二人の兵士は通路を引き摺られていき、通路の角を曲がるとクロノ達の視界から姿を消した。

通路には新しい血痕、その生々しい光景に誰もが息を呑み、額に汗がにじみ出る。

「おいおい……今のはなんだよ……」

「お前達!?無事だったか!」

後ろから聞こえてきた女性の声に穿真達は振り向くと、そこには右手に刀を握った赤城が立っていた。

赤城はすぐさま穿真達の方に駆け寄ると、赤城より先に穿真が口を開いた。

「どうなってんだよこの基地!至る所に血の跡があるし兵士達が変な触手に殺されてるしよう!一体何が起きてんだよ!?」

「私にもまだわからない、知っているのは基地内に突如一体のERRORが現れた事だけだ」

「たった一体のERRORにどれだけ手焼いてんだよこの基地は!?早く兵士を集めて殺しに掛かればいいだろ!」

穿真の言葉に赤城の表情が揺らぐ、赤城は顔を背けると、口を開いた。

「集まった兵士達は……全員殺された」

今度は逆に赤城の言葉に穿真達の表情が揺らいだ、信じられないような出来事に言葉が出ない。

「お前達もここから逃げろ、機体は格納庫にある、今から私が案内するからついて来い」

「おお、敵の俺達を逃がしてくれるとは、ありがたいねぇ」

「無駄口叩く暇があるなら行くぞ」

赤城は刀を握り締めたまま背を向けると、小走りで通路を走っていく。

その後を穿真達がついていくが、羅威だけは辺りを見渡し落ち着かない様子を見せていた。


───「っ!?……何だ、今の」

ベッドで寝ていた甲斐斗が突然体を起こし目を覚ます。

シーツをのけてベッドから下りると、瞬時に剣を呼び出す甲斐斗。

黒剣をじっと見つめると、甲斐斗は小さく目を輝かせた。

「感じるなぁ、惨劇の予兆を。血の海が広がるのも時間の問題だな」

「かいと」

甲斐斗が剣から目を離し声のする方に目をやると、目をぱっちり開いて甲斐斗を見つめるミシェルがいた。

ベッドの上に座り、いつもと違う雰囲気が漂っている。

「どうした?」

「いってきて」

その言葉に甲斐斗が疑問の表情を見せる、だがミシェルは見つめたにっこりと笑顔を見せた。

「まもるために、ね」

「ミシェル、お前何故それを……でもいいのか?俺が行けばお前はまた少しの間一人になるんだぞ?」

甲斐斗の問いにミシェルは笑顔で頷くと、またもぞもぞとベッドの中に戻っていく。

そして顔だけ覗かすと、じっと甲斐斗を見ている。

「俺を信じてくれるのか。ああ、必ず帰って来る、心配無い」

甲斐斗は小さく手を振ると、ミシェルもシーツから手を出して振ってくれた。

部屋を出るや否や通路に広がる血の後を見るものの、甲斐斗は驚きを見せない。

「ミシェル、なぜお前には分かった。それにお前は……いや、今はそんな心配をしなくてもいいか」

言わずともわかる事が一つだけある、ミシェルは感じたのだろう、甲斐斗の力が必要だと。

ミシェルは一人ベッドの中で甲斐斗の無事を祈り。

甲斐斗は楽しむ為ではなく、ミシェルの想いの為に動く。


───その頃、機体の置かれている格納庫に着いたクロノ達は自分達の機体に乗り込んでいた。

「驚いたね、ここに来るまでにNFの兵士と誰とも会わないなんて……」

「そうだな、まぁERRORの事はNFに全て任せて。俺達は待機している艦に戻るとしようぜ」

機体の電源を入れ、すぐにでもここから離れれる状態になった時、雪音から全員に通信が繋がる。

「た、大変です!羅威さんが基地内に!」

NFのギフツに乗り込むはずの羅威は突然機体から下りると、誰にも告げず基地に戻っていき、その姿を見た雪音が急いで皆に伝えたのだ。

「ったく、お前等は先に脱出していてくれ。俺が羅威を引きずり出して来る」

そう言うと穿真は一人操縦席のハッチを開けて機体から下りると、羅威の後を急いで追って行く。

「どうしますか、クロノ隊長。私達だけでも先に脱出をしておきますか?」

「いや、穿真と羅威の帰りを待つよ。それにしても、おかしいと思わない?格納庫にすらNFの兵士がいない」

格納庫にはギフツやリバイン等の機体が並んでおり、出撃をしていないのがわかる。

兵士だけではない、基地なら整備士や医者、数々の人間がいるはず。

その人間が誰も姿を見せない、明らかにおかしいとしか思えない状況にクロノは只ならぬ危機を感じていた。


───羅威は一人無人の通路を走っていた、玲がいると思われる医務室を目指し。

例え死んでいても、玲を一目みたい、その思いが羅威を突き動かしていた。

全力で基地内を走り、肩で呼吸をしながら辺りを見渡す羅威。

その時、羅威の目の前を一人の少女が横切る。

少女は自分の体に血塗れのシーツを纏い、シーツから血を滴らせながら歩いている。

だがその少女の顔には見覚えがあった、忘れた事の無い、あの顔。

「玲!?」

羅威の一言に玲の足が止まり、そしてゆっくりと体を振り向かせる。

そこに玲はいた、虚ろな目をしたまま微動だにせず、ただじっと羅威を見つめている。

「玲、生きていたのか……!」

一歩ずつ玲に近づいていく羅威、死んだはずの玲、殺されたはずの玲、消えたはずの玲が、今自分の目の前に、手の届く距離にいる。

羅威はそっと手を伸ばし、玲の顔に手を当てる。

暖かかった、死んでいない、玲は生きている。

そのまま玲を自分の体に引き寄せると、羅威は力一杯玲を抱きしめた。

力の入らない腕を全力で動かし、もう離さないといわんばかりに抱きしめる。

シーツの血が自分の服や腕に付こうが羅威は構いはしなかった。

「良かった……本当に……さぁ、帰ろう。俺にはお前がついている」

「お兄ちゃん……」

レンが身に羽織っている赤いシーツがもぞもぞと動き始める、それに気付かない羅威は抱きしめるの止めると、玲と正面を向いて笑みを見せた。

「なんだい?」

その笑みに玲も笑顔を作る、そして目から一粒の涙が零れ落ちた。

「私を……殺して」

玲の一言が終えた瞬間、赤色のシーツを突き破り中から何本もの触手が突き出てくる。

触手を見た羅威は一瞬怯み玲から距離を離す、すると後ろから穿真の声が聞こえてきた。

「羅威ィッ!その子から離れろ!!」

玲の体は見えないが、シーツからは何本もの触手が出ており、今にも羅威に襲いかかろうとしている。

「お願い……お兄ちゃん……殺し、て……私を、コロ……」

どうして、何故玲がこんなおぞましい姿になっているんだ?

羅威にはわからない、考えられない、無理もない。自分の妹が今、化物になっているのだから。

すると、羅威は突然後ろに腕を引かれ体勢を崩した。

「何やってんだ!早く逃げるぞ!!」

後ろに振り向く事なく羅威は玲を見つめ続ける、が穿真に引かれ羅威の体は少しずつ下がっていく。

「どうして、何で……玲が……?」

「っち、許せよ羅威!」

羅威の体を起こした途端、穿真の強烈な拳が羅威の溝を狙う。

一瞬で意識を失い、体の力が抜けた羅威を穿真は軽々と抱えると、玲に背を向けて一目散に逃げた。

格納庫に入ると待機させておいた自分の機体に乗り込み、手早く機体の電源を入れる。

「羅威は連れ戻したぞクロノ!」

「了解、全機発進!艦に戻ります!」

全員が機体を起動させ、格納庫から次々に発進し、待機していたBNの艦に帰還した。


───「目を覚ましたか」

ゆっくりと目蓋を開けていくと、そこには心配そうに見つめている赤城がいた。

神楽は意識を取り戻すと、ゆっくりと体を起こしベッドから下りる。

「いきなり起きて体は大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫よ。それより……今の状況を教えてちょうだい」

「一体のERRORが東部基地を破滅へと齎した、今もまだ基地内に潜伏しているらしい。現在本部、及び南部から増援を要請をしている、時期に援軍が来るだろう」

「そう、ありがと……それで、私に聞きたい事があるんじゃないのかしら?」

神楽はポケットから煙草を取り出すと、口に銜えライターで火をつける。

一服し始めた神楽に赤城は目を逸らさず一直線に赤城を見つめていた。

「レンの記憶を消したのは、お前か?」

煙草の煙を漂わせる神楽は赤城に背を向け、煙をそっと吐き出した。

「ええ、いらない記憶は消したわよ」

「BNの兵士が言っていた事は本当だったようだな。聞く事はまだある。この地下室でレンに何をした!?」

赤城は既に気付いていたのだろう、突如現れたERRORの正体を。

だが信じたくなかった、信じきれなかった、だから今ここで聞いている。

「……ERRORの細胞に近いものを投与したのよ、レンちゃんを助ける為に」

赤城に強い力で胸倉を掴まれた神楽、鷹ように鋭い目で睨む赤城は更に力を強めた。

「神楽ッ!何故だ!?何故レンの記憶を弄り、しかもあんな化物の細胞まで使ったんだ!?」

「レンちゃんを……助ける為よ」

「助けるだと?ふざけるなッ!」

赤城は神楽の胸倉を掴んだまま勢い良く壁に叩きつけると、更に言葉を続けた。

「お前のせいでここの兵士達も死んだんだぞ!?それもレンに殺させて……!」

「ふふっ、研究に失敗は付き物……いい勉強になったわ」

神楽はそう言うと指で挟んでいた煙草の先を赤城の手に軽く当てた。

「っ!?」

煙草の高熱によって咄嗟に手を緩める赤城、すると神楽はその隙に手を振り解き、足早に地下室の階段を下りていく。

赤城も神楽の後を追い急いで階段を下りていくと、そこにはある装置を手にしている神楽が立っていた。

「神楽、私はお前を信じていた、それなのにお前は……」

「ありがとう、私もよ」

手にしている装置のボタンを押した途端、赤城の視界が歪み始める。

「ぐっ、あ……」

そして激しい頭痛が赤城を襲い、一瞬にして意識が薄れ始めた。

「まさか、私にも……かぐ、ら……」

「おやすみ、赤ちゃん」



───意識が途切れ、目の前が真っ暗になったかと思うと、今度は何処からともなく声が聞こえてきた。

「おい赤城、大丈夫か?しっかりしろ!」

うるさい程の大声に表情を歪めながらも目蓋を開けると、そこには甲斐斗が赤城を抱えてこちらを見ていた。

「誰だ……お前……っ」

知っている、この顔、この声、赤城はまた少し目蓋を瞑ると、はっきりと思い出した。

「甲斐斗、甲斐斗か……?」

「ああ、俺だよ。にしてもどうしてこんな所で気を失ってたんだ?」

周りを見渡すと赤城は自分が通路の脇道で気を失っていたのがわかった。

赤城はゆっくりと立ち上がると、壁に手を当て体勢を立て直す。

「わからない、神楽が奇妙な装置を使って私を……」

「あいつ、今度は何を企んでやがる……まぁいい、まずはこの基地に出たERRORってのを消しに行くか」

甲斐斗は床に刺してあった剣を抜き取ると、その黒い大剣を簡単に振り回してみせた。

だがそれを見た赤城はすぐさま甲斐斗を止める。

「待て!止めろ……ッ!」

「ん?どうしてだ?」

「あのERRORはレンだ、神楽の投与した細胞でレンは今突然変異を起こしている、だから!」

「あの化物の細胞をレンに?何を血迷ったんだあいつは。じゃあどうする、捕らえるのか?」

「違う、保護するのだ。だからまずはレンに1度会わなければならない」

「そんな事言ってる場合かね……っと、噂をしてたら向こうから来てくれたみたいだぜ?」

ぺたぺたと足音が通路の曲がり角から聞こえてくる、甲斐斗は剣を構え、赤城は鞘に手を置いた。

音は段々と近づいてくる、そして曲がり角からは赤いシーツを身に纏ったレンが姿を現した。

レンはこちらに気付くと、ゆっくりとこっちを向いて歩きながら近づいてくる。

「赤城隊長……」

「レン!?意識はあるのか……!」

鞘から手を放した赤城はレンに近づこうとしたが、甲斐斗の剣が赤城の進路を塞ぐ。

赤城はふと足を止め、甲斐斗の方を見ると、甲斐斗は鋭い目つきでレンの瞳を見つめていた。

「てめえ、誰だ?」

「な、何を言っている。お前も知っているレンだぞ?」

「記憶はそうかもな、だが……人格は違う。目を見りゃわかるよ」

甲斐斗の言葉にレンの足が止まる、虚ろな瞳でじっと甲斐斗と赤城の両方を見ている。

「……もう誰にも止められない」

さっきまでの弱々しい口調ではない、ハッキリとした言葉がレンの口から出てきた。

その時、突如通路の壁が崩れ落ち、外の景色が見えるようになると、そこから1機の機体が姿を見せた。

それは破壊されたフェリアルの面影が多少あったが、外見と原形は全く変わっていた機体がいた。

負傷したはずの機体は肉のような物で形を整えられ、筋肉の血管は脈を打っている。

そして機体は息を吐きながら胸部のハッチを開けると、そこにレンが飛び乗り、機体のハッチを閉めた。

「今のはフェリアル?だがあの機体は破壊されたはずだ」

赤城は大きな穴の開いた壁から飛び立つフェリアルに似た機体を見つめていたが、甲斐斗は何かを悟ると、穴の開いた壁付近に身を乗り出す。

「赤城、残った兵士がいるならそれを全員かき集めて町に向かわせろ、後町にいる民間人を今すぐ全員町から避難させろ、いいな?」

「ま、待て。まさかレンは町に向かったと言いたいのか?」

「当たり前だろ、お前も機体に乗って今すぐ町に来い。間に合わなくなる前にな」

そう言って甲斐斗は壁に開いた穴から外へ飛び下りると、あの甲斐斗の愛用機である黒い機体の胸部の上に立っていた。

「いいか、民間人を全員避難させるんだぞ。じゃあな」

そのまま操縦席に乗り込んだ甲斐斗は、ハッチを閉めると、一人レンの後を追っていった。

赤城はその機体の後ろ姿を見たまま上着の内ポケットから携帯電話を出すと、ある人物に電話をかけた。



───今日の天気は曇り、夏だというのに今日は何故か風が肌寒く感じてしまう。

雲の下に広がる巨大な都市、ここでは数多の人間が働き、生活している。

それも全て、今日で終わるだろう。

基地から飛び発ったフェリアルは大都市に到着すると、空高く上昇して停止していた。

下を見れば何千何万という人間が住む町が広がっている、それを見たフェリアルは両手を空高く突き上げた。

大地が揺れ始める、最初は小さく、大人しく、だが揺れは収まらない、地震とも思われるその揺れは次第に力を強めていくと、町の大地を裂き、巨大な一つの町は引き裂れたかのように二つに分けられる。

町に住んでいた人々は混乱し、安全な場所を求めて走り出す。

他人を思いやらず、人を押しのけながら我先にと逃げ出す人々、するとその人々の目の前に突如大きな穴が開いた。人々は不思議にそうにその穴を覗いていると、何かが動くのが見えた。

赤い顔、ニタニタと嬉しそうに笑うその顔に目は無い。

辺りには次々に穴が開き、地底から奴等が現れる、虫のように、絶え間なく。

公園に、学校に、道路に、川に、山に、大地に、目の前に。

惨劇は始まった…・…いや、既に始まっていたのかもしれない、人類滅亡への惨劇が。

─ErrorDeleteProgram(EDP)─

世界各地にあるERRORの巣を一斉に攻撃を仕掛ける作戦、赤城達が攻撃した『GATE』は無数にあるERRORの巣の一つ。

NFの全勢力を注ぐかいあってERRORの巣を激減できたものの、殆どの部隊の人間はERRORの犠牲になってしまった。

その為に現在NFの戦力は乏しく、BNを軽く超えていたはずの戦力が今では対等するまでになっている。

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