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第45話 使命、開始

「あっれ、これどうするんだ」

 エコ達のいた町から離れ、廃墟と化した町にいる俺は廃れた格納庫の中に機体を止め、システムを色々と弄っていたものの、突然機体の電源が落ちてしまった。

 何のスイッチを押しても画面は真っ暗、もしかして壊れた? いや、大丈夫。

 根拠の無い自信を胸に置いておくとして、とりあえず朝飯の時間にするか。

 今日も天気が良くて暑いから機体から出るのは少し躊躇ってしまう、それに日差しが強すぎる。

 格納庫の中なのに日差しが挿してくる理由は簡単、天井はほぼ無いと言っていい程の巨大な穴が空いているからだ。

「おーいミシェルー!どこだー!」

 機体から下りた俺はまず先に機体の外へと出ていたミシェルを呼んでみたが、返事が無い。遠くには行くなと言っておいたからその辺にいるはずだ。

 そう思い早速近くの部屋の扉を開けると、冷蔵庫に頭突っ込んで足をジタバタと動かしているミシェルの姿が目に映った。

 ああ、まるで冷蔵庫に食べられているようだ、等と暢気な事も言ってられない。

 どうやら抜け出せないらしく、焦っているようので急いで体を掴み冷蔵庫から引き抜く。

「大丈夫か?」

「かいと! これすっごくすずしいよ!」

 だろうな、これは物を冷凍して保存する機械だし、涼しいに決まってる。

 ……いやまて、何で涼しいんだ?

 溢れ出す冷気、冷蔵庫の後ろを見るとちゃんとコンセントが刺さっている。

 って事は、誰もいない町に電気が流れているという事になるが。

 でもここに来たのは昨日の夜、その時この町には灯り一つ点いていなかった。

 それなのに電気が流れている? だったら灯りぐらい点いていても別におかしくないだろ。

「涼しいけど頭突っ込んだら危ないだろ。それともう飯の時間だ、腹減ってるだろ?」

 ミシェルは頷くと部屋の入り口に置いていた大きなリュックサックからパンとジャムの入った瓶を持ってくる。

 どうやらここで食べたいらしい、ここには冷蔵庫と言う冷房機具もある事だし。

 俺とミシェルは冷蔵庫を全開にしながら昼食を食べる事にした。

 こんな廃墟の並ぶ町で、パン食ってる俺達。それでもいいじゃないか、こんな静かな日はこの世界に来てそうそう無かったからなぁ。

 今こうやってミシェルと二人で食事できるだけでも幸せだ。

「ミシェル、口の周りにジャムついてるじゃないか。そんな焦って食べなくてもパンは逃げないぞ」

 俺の言う台詞じゃないかもしれないが、俺はそう言ってポケットからハンカチを出すと優しくミシェルの口元を拭いてあげた時、微かに地面が揺れ始めた。

 地震……にしては長すぎる、それにこれは何かの振動? まさか地中からERRORが!?

 不安が募る中、俺は手に持っていたパンを銜えるとミシェルを抱かかえ一気に機体まで走った。

 ワイヤーを作動させ機体のコクピットにまで引っ張ってもらうと、ミシェルを操縦席に座らせる。

「ど、どうしたの?」

「どうかしたのさ、とりあえずミシェルはここに座ってパンでも食べていてくれ」

 そう言って俺は機体から降りると、すぐさまパンを食べて剣を出現させる。

 こんな時に機体が使えんとは、不運にも程があるがまぁいい、大抵の生物ならこれで十分だ。

 揺れは収まらない……でも来るはずのERRORが一向に来ない。もしかして俺の勘違い?

 とすればこの揺れは何処から───そう思った俺は格納庫にある階段をひたすら登っていく。

 最上階まで行くと古びた扉が閉まっていたが、足で蹴り飛ばし無理やりドアを開けて外に出てみると、遠くの方に何十もの戦艦が走っていくのが見えた。

 EDPでもしに行くのか? と言えるぐらいの数だ、SVの艦に、NFで見た艦まで走っている。どうやら二つの国は同盟でも結んだようだな。

 だとすればあの艦隊はBNの所に向かっているはずだ、アレだけの数が動くんだ、そう考えてもおかしくない。

 ……面白そうだ、またドンパチ戦闘を行ないたいが、ミシェルがいるんだし、今回は止めておこう。

 それより今は機体直してふかふかのベッドで寝れる場所探しに行こう。




 荒野を走る三機の我雲、森林での調査が終わり基地に戻っていた。

 兵士達は楽しく会話をしながら基地に向かっていたが、そのッ産機は一瞬にして胸部をレーザーで貫かれ破壊される。

 遥か遠くからの狙撃、艦隊の中の一隻の上には、重武装しているアストロスが立っていた。

『先程の破壊で恐らくBNは気付くと思います、今の内に戦闘準備をしておいたほうがいいでしょう』

 通信から聞こえてくるシャイラの声、それに答えるのは艦内にいるフィリオだった。

 モニターに映し出されたシャイラの頭にはまだ包帯が巻かれていた。

「分かりました、ですがシャイラ。体の方は大丈夫なのですか? 無理をしなくても良いのですよ」

『お心遣いありがとうございます、体の方はもう大丈夫ですので心配いりません』

 とその時、通信に割り込んでくるかのようにモニターにアリスが映し出される。

「シャイラ! 少しでも無理したら駄目なんだからね! 分かってる!?」

『はい、お嬢様』

「よし、絶対よ? 今から私も出撃するから待ってなさい」

 言いたい事だけ言い終わるとアリスは通信を切ってしまった。

「……シャイラ、アリスをお願いします」

『任せてください、フィリオお嬢様。命を懸けて二人をお守りします』

「いえ、命は懸けないで下さい。それでは」

「は、はい…? 畏まりました……」

 パイロットスーツに着替え終わったアリスは更衣室から出ると、そこには一人ゼストが立っていた。

「あれ、ゼストは着替えないの?」

「暑苦しいからな」

「ふーん。ねえねえ、私のスーツ似合ってる?」

 軽くポーズをとるアリスだったが、ゼストはすぐさま後ろに振り向いて機体の所に歩いて行ってしまう。

「ちょっと! 何で見てくれないのよー!」

 そう言いながらゼストの後を追うアリス、更衣室からアリスだけでなくエコと葵も出てきた。

「エコ、お前もまだ体調が良い訳じゃない。ここは俺に任せてくれてもいいんだぜ?」

「大丈夫、平気だから……」

 自分の機体に向かおうとしたが、突然葵がエコの前に立ちはだかり、両方の頬っぺたを掴むと無理やり横に引き伸ばす。

「ならそんな暗い顔してんじゃねーよ、ほら、こーやって笑えって」

「うるひゃい……手をどけへ」

 パッと手を放すとエコは葵を避けて機体まで歩いていく、その後を葵は笑みを見せながらついていった。

 そんな彼等を見ながら愁は深い溜め息をついていたが、この溜め息は不安を表すものではない。

 愁にとってBNとの戦いもう何も感じられなくなっていた、ただ目の前の敵を倒していく事だけを考える。

「俺は、戦う」

 一言言葉を漏らした後、愁は自分の機体に向かっていった。自分の守りたい者の為に。



 その頃BNでは三機の機体が破壊された事について騒ぎが起きていた。

 当然その事は紳の耳に入り、直ちに戦闘態勢をとるよう命令が下る。

 慌しくなる基地内、何せこんな真昼間から大規模な戦闘が起こる等全く予想していなかったからだ。

 相手の戦力すらわからない今、基地内に残る戦力ではたして足りるのか。

 クロノ達のいる第壱小隊のメンバーは既に準備完了、全員機体に乗り込みいつでも出撃できる状態だ。

 その中には当然羅威も含まれている、多少緊張はしていたものの羅威は普段通り落ち着いていた。

 と、そこに突然穿真からの通信が入ってくる。

「羅威、SRC機能を使っての初戦闘がこんなに早く来るとは思ってなかっただろ?」

「まあな、内心俺も驚いている。SRC機能搭載の我雲の力を発揮出来る機会がこんなに早く来るとはな」

「ああ、だが無理はするなよ、今回は初戦闘のテストみたいなもんにしといて、何かあったらすぐに戻れ」

「……分かった」

「それにしても、まさかSVから宣戦布告が来るとはなぁ。こりゃ戦争も更に本格的になりそうだな、んじゃ」

 穿真が通信を切り終えた瞬間、今度は彩野からの通信が入り、モニターには顔が怒っている彩野が映る。

「先輩達! 出撃前に私語が多過ぎます! 慎んでください!」

「彩野、お前と話すのも久しぶりだな。オペレーターとしてしっかり頼んだぞ」

「え? えぁ、は、はい。分かりました……」

 若干戸惑い気味の彩野だが羅威は気にせず通信の電源を切った。

 機体が微かに揺れる、どうやら機体を積んでいる戦艦リシュードが発進したのだろう。

 それと同時に艦のハッチが開かれると眩い日差しが機体を照らす、どうしてこうも天気の良い日に戦争が起こるのか。

 第壱小隊出撃、次々に機体が出撃していき、走っている艦の前方を走る。

 戦艦リシュードから機体に敵の数と位置が送信され、レーダーに映し出されたが、その余りの数に部隊全員が息を呑んだ。

「何だ、この数は……」

 レーダーでも、そして肉眼でも確認できる。何十列にも並ぶ敵の艦隊から次々に機体が発進していくのが見えた。

 今までとは違う戦争に既に皆巻き込まれていた。それを実感するのもそう遠くはない。




「敵の数が予想以上に大きい、僕とエリルさんで敵艦を狙ってみます、皆さんはリシュードの守りを固めてください」

 クロノはそう言うと、機体を変形させ上空から一気に戦闘エリアにまで向かい、地上からはステルス機能を使って無花果が向かって行く。

「クロノ、ちょっと前に出すぎ!相手の数を減らしてからの方が良いんじゃないの?」

「相手は本気でこちらを潰しに来ている、数を減らす前に僕達が全滅する恐れがあります」

「それなら私達だって本気で……ッ!?」

 青い二本のレーザーが無花果を目掛け放たれたが、エリルは間一髪でそれを避けてみせる。

「どうやら私が見える奴がいるみたい、あの中央の艦の上に乗っている機体のようだけど……」

「中央は無理です、端の艦から確実に沈めていきます。ついて来て下さい」

「さすが隊長、的確な判断ありがとね」

 二機が中央から離れ、艦隊の端の艦に向かって行くが、相手の配備は全て計算されたものだった。

 端に向かえば中央よりも敵機が多く、友軍機も相手を止めるのに精一杯の様子だ。

「少しは敵を倒しとかないと無理っぽいわね……!」

「そのようです、やるしかありません!」」

 桁違いの敵機の多さに友軍機が次々に破壊されていくが、BNも引き下がる訳にはいかない。

 基地からの援護砲撃と補給支援で何とか現状維持が保たれているぐらいだ。




 戦艦リシュードの周りを守っている羅威達にもそれが痛い程伝わってきていた。

「穿真、どうやら多少の無理は、しなくちゃならないみたいだな……!」

 戦艦目掛け飛んでくるミサイルを機関銃で破壊していく羅威、それを狙う敵機を穿真の乗る我雲が機関銃で破壊する。

「じゃあ俺がお前の変わりに下がりたいぜ、ったく!」

 次から次へと迫ってくる敵機と悪戦苦闘の中、彩野の声が聞こえてきた。

「前方から急接近する敵機有り! リシュード目掛けて一直線に来ています!」

「ちっ! あいにくこっちは手が放せねえ、香澄! 雪音! 任せたぞ!」

「了解、破壊してみせる」

「分かりました、やってみます!」

 二人の乗る我雲が前方に銃口を向けると、そこには見覚えのある機体が向かってきていた。

 その姿鬼神の如く、止めようとする我雲を次々に破壊していく。

 そして二人の番、狙いを定め引き金を引くが、その銃弾が鬼神に当たる事は無い。

 彼女達もまた、鬼神に破壊される我雲に過ぎなかった。

 が、その鬼神を止める機体が存在していた。

 横から鬼神を殴り飛ばすが、殴り飛ばされた鬼神はすぐさま体勢を立て直すとすぐさま艦から離れていが、羅威の乗る我雲は鬼神を逃さない。

「これは前のお返しだ、おい逃げるなよ、戦いはまだ終わっていない」

「おい羅威! サシで赤鬼と戦う気か!? 幾ら何でもそりゃ無理しすぎだろ!」

「無理をしないとこいつには勝てない、穿真は近づいてくる敵機を頼んだぞ!」

 両肩のLRSを抜き取ると、前方の鬼神の前に立ちふさがる我雲。

『─SRC発動─』

『我雲』とは違う『我雲』、動きも素早さも全てが違う。

 鬼神の突き出す拳を交わし、腕を切り落とそうとLRSを振り下ろすが、それより先に鬼神の足が前に出て我雲を蹴り飛ばす。

「ふん、身軽な鬼だな」

 左手に持っているLRSを鬼神目掛けて投げ、すぐさま背部のマシンガンに手を掛ける。

 鬼神が投げられたLRSを避けると同時にマシンガンの引き金を引いて狙いを定める羅威。

 だが鬼神は銃弾を避けようとはせず撃たれる弾丸を弾きながら接近し、一気に我雲との距離を縮めてくる。

「銃が効かないなら……っ!」

 全弾撃ち終わる前に銃を投げ捨てると、腰に付いてある手榴弾を取り外し迫り来る鬼神に放り投げる。

 手榴弾が鬼神の目の前で爆発、強烈な爆風と破片が鬼人の装甲に傷を負わすが、鬼神の勢いが止まる事は無かった。

「身軽な上に頑丈か、だが!」

 我雲は右手に残されたLRSを鬼神の胸部目掛けて突き刺そうと伸ばすが、LRSが鬼神の胸部に触れた途端、LRSは簡単に折れてしまう。

 そのまま鬼神の右腕が羅威の乗る我雲の胸部を貫こうとした時、目にも止まらぬスピードで鬼神の右腕を斬り落とす機体が現れた。

 鬼神が腕の斬りおとされた方向を見ると、純白のマントを身に纏った青銀の眼と白銀の装甲を光らせる『白義』の姿がそこにあった。

 気付いたのも束の間、白義の持つもう1本の剣は鬼神の頭部を刎ね、鬼神の両足を蹴り体勢を崩させる。

 腕を斬りおとし、胸部を貫こうとしたが。背部の出力を最大にして何とか攻撃をかわした鬼神。

 だが頭部は無く、右腕も無い。傷だらけの鬼神はただの鬼となっていた。

 止めを刺そうと剣を構えたが、鬼神はすぐさま後退して味方の艦に戻っていってしまう。

 追撃しようにも敵機の弾幕によりそう簡単には出れない状況だ。

「羅威、怪我は無いか?」

「怪我は無い、ありがとう紳、助かったよ」

「動きは悪く無かった、やはり機体の性能差だな。お前は一度艦に戻り補給を受けろ」

 そう言うと白義はこの場を離れ他の場所にいる友軍機の元へと向かって行くと、白義の操縦席の端末からセーシュの声が聞こえてくる。

「如何なさいますか若様、我軍の兵力ではこの戦場を乗り切るのは難しいかと思われますが」

「難しいかどうか、試してみるか。付いて来いセーシュ」

 アストロスやギフツがマシンガンを手に白義目掛けて引き金を引くが、その銃弾が白義に触れる事は無い。

 光りの如く次々に敵機の胸部を剣で貫いていく白義、それを狙っている敵機をセーシュの乗るハルバード守護式が薙刀で破壊していく。

 その撃墜の速さで友軍の士気を高め、一気に敵機を追撃していくBN機だったが、突然黒い巨大なビーム砲が放たれる。

 紳やセーシュはそれに気付き何とか避けたが、回避に間に合わなかった数十機のBN機を一瞬で破壊していった。

「我等BNの兵士達が! 一体何奴……!」

 セーシュがビーム砲の飛んで来た方を見ると、そこには1機の黒き機体が立っていた。

 今まで見た事の無い機体、セーシュはすぐさまその機体に向かおうとしたが、突然期待の目の前に鍵爪をつけた機体が現れる。

 鍵爪を伸ばしセーシュの乗る機体の胸部を引き裂こうとするが、守護式は薙刀で鍵爪を何とか弾き返す。

「セーシュ、お前はそいつの相手をしていろ。俺は……こいつの相手をしてくる」

 黒き機体が背部から引き抜く一本の剣と盾、白き機体が構える二本の剣。

 互いに走り出すのは同時だった、剣を振る速度も同じ、巧みに盾で剣を弾く機体、巧みに二本の剣を使う機体。

 胸部を貫こうと隙を見て剣を突き立てるが、その瞬間を見切られるかのように盾が割り込み剣の軌道をずらす。

 その隙を狙い黒き機体は剣で白義を仕留めようとするが白義の持つもう一本の剣で弾き返される。

 両者全く無駄の無い動きをしており、他の者を寄せ付けない戦いをしていた。

 戦いは終わらない、争いに終わりは無い。


正式名MFE-黒葉花こくようか (Back Numbers製)

全長-17.7m 機体色-黒紫 動力-光学電子磁鉱石

BNが無花果を元に作り出した可変型機体、無花果と同様素早く動ける。

両肩に二本のLRS、背部には狙撃用のレーザーライフルが備え付けられており、

遠距離から近距離まで幅広く戦える用になっている。

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