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第19話 救助、犯罪

 最後に羅威に別れを言いたかった。心残りは有るが、既に愁は荷物を纏めて基地を出ていた。

 一度後ろに振り返り基地の方を見つめた後、視線を戻し懐かしい街中を歩いていく。

 そしてようやく自宅に到着すると、ゆっくりと扉を開けて家の中に入った。

 その扉を開けた音に気付いたのか、リビンクから誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてくる。

「あら、どちらさまですか……って愁!?」

 エプロンを着け、右手にはお玉を持ったまま現れたのは愁の母だった。

「ただいま、母さん」

 余程驚いたのだろう、母は愁を見つめたまま固まっており、愁は照れ臭そうに笑みを見せるとそのまま家に上がる。

 すると今度はリビングから愁の弟と妹の声が聞こえてきた。

「お母さんお腹すいたー」

「すいたー!」

 愁が靴を脱いで上がった途端、ドタドタと慌しい足音と共に二人はドアの開いている隙間からひょっこり顔を出してきた。

「愁にい!」

「愁お兄ちゃん!」

 弟のりゅう、そして妹のあかねが愁を見た途端表情が一気に明るくなっていく。

 笑顔で愁の所へ走ってくると、二人は勢い良く愁に飛びき抱きついてきた。

「愁にいお帰り!」

「おかえり~!」

 勢いに任せ抱きついてきた二人を愁は優しく受け止め抱かかえると、そのままリビングに入り二人をソファの上に下ろした。

 ふと二人を抱かかえた重みで若干肩に違和感が残る。前までは軽々と抱き上げていたが、二人は成長期であり基地から帰ってくる度に大きくなっているみたいだ。

「お母さんご飯まだ~?」

 余程お腹が空いているのだろう。愁の弟である琉そう言ってキッチンに向かうと、母もまたそこに向かいに持っているお玉で鍋の中身をかき混ぜていく。

 時計を見れば既に昼の十二時。どうやら丁度今昼食の準備をしていた所だった。

「もう直ぐ出来るから、お食事の準備をしてもらおうかしら~?」

「はーい!」

 琉は引き出しからスプーンを四つ取り出すと、いつもの食卓にスプーンを並べていく。

 茜は四人分のガラスコップを両腕いっぱいに抱えると、落とさないように慎重に運んでいたが、足元が覚束ずふらふらしており。心配になった愁は茜の抱えている四つのコップをそっと持ち上げると机に並べていく。

 それを見た茜は嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

 後は椅子に座り料理が運ばれてくるのを待つだけだったが、その前に帰ってからまだうがいと手洗いを済ませていなかったので愁は一人洗面所へと向かい事を終わらせてくる。

 そして皆が座っている食卓に戻り、席についた。

 机に並べられた真っ白いお皿と銀色のスプーン、そして部屋に入った時から微かに香る香辛料の香り。

 これだけの情報が有れば後は何が運ばれてくるかなど簡単に想像できる。そして思ったとおりお皿にはご飯が盛られ、作りたてのカレーが掛けられる。

「いただきまーす!」

 愁の両隣では琉と茜が美味しそうにカレー食べているが、愁は余り食欲が沸かなかった。

 羅威と良く食べていたカレーを見て、羅威の事を思い出していたのだ。 

 最後の最後で逃げてしまい、羅威には何も言えなかった事が未だに心に引っかかる。

「愁にいたべないの?」

「えっ?」

 気がつくと琉が愁の顔を心配に覗き込んでいた。

「そんなことないよ、いただきます」

 軽く笑みを見せスプーンを手に取りカレーを掬おうとすると、そっと横から茜のスプーンが伸びてくる。

「茜があーんしてあげる!」

 腕を伸ばして愁の口元にカレーを掬ったスプーンを伸ばしてくれていた。

 どうやら先程の愁の様子を見て心配してくれたらしい。これ以上周りに心配を掛けたくなかった愁はぱくりと差し出されたカレーを食べると美味しそうに噛み締めた。

 その後、ご飯を食べ終わった愁は茜と琉に引っ張られて二人の部屋に連れて行かれる。

 余程愁と遊びたかったのだろう。二人はきゃっきゃとはしゃぎながら愁と色々な事をして遊び続け、結局愁が二人から解放されたのは遊び疲れて眠っている時だった。

 すやすやと寝息をたて可愛らしい寝顔を見せる茜と琉。

 そんな二人を見ているだけで愁の心は癒され、愁もまた二人の横で寝そべると目蓋を閉じ眠りについた──。




──「っ…あれ……」

 頭がボーっとしている、部屋にかけられている時計を見ると十五時になっていた。

 愁が体を起こしその場に立ち上がろうとするものの、やけに体が重たく感じる。

 よく見ると愁の服を掴んだまま茜と琉がまだすやすやと眠り続けており、二人を起こさないように手をそっと解くと、目を擦りながらリビングへと向かった。

 リビングには愁の母が食卓に着きお茶を飲んでいる。それを見て愁もコップを取り出すと冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出しコップに注ぎ、それを持って母と向き合うように食卓に着いた。

「軍で何かあったんでしょ?」

「っ!?」

 お茶を飲もうとしたまさに其の時、まるで愁の心を見透かしかのような的確な発言を聞き僅かにお茶を吹き零してしまう。

「愁はすぐ顔に出ちゃうんだから。琉と茜を心配させたらだめよ?」

「俺、また顔に出てたのか……」

「ほら、話してみなさい。何があったの?」

 心配そうに声をかけてくれる母をこれ以上心配を掛ける訳にもいかず、愁は全ての正直に話すことにした。

「単刀直入に言うけど……俺は軍を辞めさせられたんだ。理由は俺が違反ばかり起こすせいで、それで……」

「そう……」

 てっきり怒られるかと思っていたが、母は怒ろうともせず、ただただ愁を見つめていた。

 すると、途端に母が嬉しそうな笑みを見せた。

「愁には悪いけど、お母さんはその方が嬉しいな。貴方には弟と妹がいるの。貴方がいないと二人はとても寂しがってるのよ。『愁にいはまだ帰ってこないの?』『お兄ちゃんと遊びたいよ!』……って」

 元々軍の入隊に賛成していなかった母にとってはとても嬉しい話なのだろう。

 当たり前だ。自分の子供が兵士として戦場に向かうなど誰も喜ばない。

「母さん、俺は軍を辞めたから、もうこの家から離れないよ。ずっと一緒さ」

 愁はそう言って微笑み母の両手を握り締めた。




 それから暫くして愁は玄関においてあるフルフェイスヘルメットを手に取ると家を後にした。

 出かける理由は何でもいい、久しぶりに趣味であるバイクに乗り風を感じたかった。

 家の横にあるガレージに向かい扉を開けると、そこには新品同様のバイクが置いてあった。

 母がいつも手入れしてくれており、埃一つ被っていない。

 その奇麗なバイクにまたがってヘルメットを被りバイザーを下ろす。

 鍵を差し込むと心地よいエンジン音が鳴り響き、振動が体全体を振るわせていく。

 そしてアクセルを握りバイクを走らせた。久しぶりにバイクに乗り直接風を感じる事がとても心地良い。

 このままいつも走らせている場所に向かい思う存分バイクを走らせよう思っていた。

 今日は天気も良く雲一つ無い快晴、こんな日にバイクに乗れる事に嬉しさを感じながら愁は信号が赤に変わったのをみてバイクを止めると、早く思い切りバイクを走らせたくてうずうずしていた。

 その時、ふとバックミラーを見ると、そこには一人の少女の走る姿が見えた。

 余程急いでいるのだろう、息を切らせながら一生懸命走っているようにも見える。

 しかし何か様子がおかしい、少女が躓き地面にこける、だが少女はすぐさま立ち上がると走り出す。

 そのまま少女は歩道を走り、信号が赤にも関わらず道路を横断しようとしていた、横から来ているトラックに気づかずに──。

 愁はアクセルを回しすぐさま少女の元へとバイクを走らせる。

 道路を半分渡っときにようやく少女は気づく、横を向くと一台のトラックが自分目掛けて向かって来ていた。

「危ないッ!」

 少女がトラックに轢かれそうになった瞬間、愁が少女の洋服を掴む。

 そして半ば強引に少女を持ち上げ危機一髪の所でトラックとの衝突を防いだ。

 だが少女を掴んだ時の衝撃でバイクが不安定になり体勢を崩してしまう。

 愁はバイクから振り落とされてしまうものの、少女に怪我をさせないよう強く抱きしめるが、そのまま背中から道路に転げ落ち体を道路に強く叩きつけてしまった。




「痛っ、痛てて……」

 背中に痛みが走る、手足は軽く痺れており、ヘルメットをしているにも関わらず頭も若干痛みを感じていた。

 自分達が無事なのかどうか、バイザーを上げ周囲の状況を見渡していると、抱き締めていた少女の声が聞こえてくる。

「い、痛い。です……」

 少女も体をぶつけて痛いのだろうと思ったが、自分が必要以上に強く抱き締めていた事に気付き直ぐに腕を放すと、愁は少女に無事かどうか聞いてみた。

「君、大丈夫? 怪我はない?」

「あ、ありがとうございます!何とお礼を申していいのやら……」

 少女は目に涙を浮かべたまま頭を下げてると、愁は少女に手を伸ばし立ち上がらせた。

「急に道路に飛び出したら危ないよ、次からは気をつけないと……でも、無事で良かった。それじゃ」

 普通に立ち上がる姿を見て少女に怪我が無いのを確認した後、愁は自分の乗ってきたバイクを探す。

 だがバイクが見当たらない。有るとすれば電柱周辺に機械の破片が散乱してる鉄の塊だけだった。

「俺の……バイクが……」

 バイク本体は煙を上げており、今にも火が付いて爆発しそうな勢い。

「あ、あの!」

 恐らく修理も不可能だろう。愁が悲しみに暮れていると、先程助けた少女が声をかけてくる。

「私を助けていただきたいのです、お願いします!」

「え?」

 つい先程事故になりそうな所を助けたはず……少女が何を言っているのか分からず戸惑っていたその時だった、一発の銃弾が愁の目の前を過ぎり煙を上げるバイクに命中する。

 それが火種となりバイクは一瞬にして爆破、炎上。愁は頬を掠めた弾丸よりも愛車のバイクが無残にも散った光景を唖然と見ていた。

「あ、あの!早く逃げないと……!?」

 放心状態の愁と少女の前に黒いスーツを来た二人組みの男が現れる。

 男の手には銃が握り締められおり、少女目掛けて発砲しようとしたが、愁は被っていたヘルメットを脱ぐと拳銃を向ける男の顔面目掛け勢い良く投げつけた。

 ヘルメットは見事に命中、一人の男は痛みで顔面を押さえ悶えているのを見てその隙に愁は少女の手を握ると全力で走り始める。

「君、名前は?」

 その咄嗟の行動と対応に、手を引かれる少女は目を丸くして驚いていた。

「わ、私ですか? フィリオと申します」

「フィリオさん。確認してもいいかな? 俺が見る限り貴方は彼等に命を狙われているように見えたけど……」

「その通りです。私はある事情で命の狙われておりまして……あ、すいません次の角を曲がってください! そのまま北に進めば私の家が……」

 その通りと言われ厄介事に巻き込まれた事に気付く事が出来た。

 どうして命を狙われているのか、この少女が何者なのか、様々な思惑が頭の中に飛び交っていく。

「分かった、急ごう!」

 何も分かっていないがとにかくこの場から逃げるしかない、後ろに振り返ってみると拳銃を持った男達がまだ後を追ってきていた。

 このままでは追いつかれてしまう、そう思った愁は少女を軽々と抱き上げると背中の痛みをこらえながら全力で走り出す。

「あの……すみません、私のせいで迷惑をおかけして……貴方の大切なバイクもあのような事に……」

「バイク? ああ、仕方無いよ。人の命を助ける事が出来たからね、別にいいさ」

 バイクが壊れた事はたしかに愁にとってショックの大きなものだったが、、バイクの壊れた原因がこの少女の責任にあるとは思っていない。

 それよりも人一人の命を救えたことが何よりも愁にとって嬉しい事だった。

「あ、そこを左に曲がってください!」

 愁が言われた通り左に曲がる、すると目の前にはこの街で一番大きいとも言える程の豪邸がそこにはあった。

 広い敷地、大きな壁、大きな門。どうやらこの子はこの家の子らしい。

「ここまで来ればもう安心です、ありがとうございます! 貴方のお陰で助かりました……!」

 愁はフィリオを門の前で下ろすと、何度も頭を下げてお礼を言ってくれていたが、愁はすぐにその場から立ち去ろうとする。

「待ってください! お礼をしたいのですが……」

「お礼なんて別にいいよ。それより君は早く中に入ったほうがいい、ここは基地からも近いから発砲騒ぎで直ぐに兵士達がやって来る、少しは安全かもしれないけど一時は建物の外に出ない方がいいからね」

 あえて命を狙われている理由は聞かない。

 聞けばこの件について深く関わってしまうことに成りかねないからだ。

「でしたら明日! 明日またここに来ては頂けませんか?」

 熱心に何度も声をかけてくれるのを見て、どうやら彼女はどうしても愁にお礼がしたいらしい。

「明日? ……分かりました」

「何時でも来てくださいね、お待ちしております」

 これ以上関わっていいものなのか、よく分からない。

 それに相手がこれ程まで言ってくれるのを見て愁も行かないのが悪く思えてきてしまう。

 結局明日、またここで少女と会うことを約束し愁はその場を後にした。

 事故現場に戻ろうとも考えたが銃を持った男達に見つかる訳にもいかず、徒歩で自宅まで戻ると母には先程起きた件に関しては何も言わないまま一日を過ごした。




 それから次の日、朝早く愁は起きると一人リビングに向かった。

 昨日の出来事は全部夢だったらいいのに……そんな事を思いながら愁が朝のニュースを見ていると、丁度昨日の事件が報道されていた。

『破損したバイクの検証結果がようやく出たもようです、それによりますと犯人の名前は魅剣 愁十八歳。証言によりますと魅剣容疑者はテロリストを手助けした後、テロリストの一味と逃亡したと見られています。なお、このテロリストは昨日あった第二旧本部を爆破をした者達と関係があるとの事、現在調査を進めております──』

「……は?」

 テロリスト? 昨日テロリストを手助けした? 昨日は少女を助けただけでは───。

 その時だった、愁の家のドアを叩く音が聞こえてくる。

 愁はテレビの電源を消すと、その場に隠れながら玄関の様子を窺った。

 母は既に起床しており、眠そうな顔をして玄関へと向かう。

「こんな朝早くにどちら様ですか……」

 鍵を開けて扉を開けると、そこには数人のBN兵士が立っていた。

「魅剣愁はいるか?」

「ええ、いますけど……」

「逮捕状が出ている、魅剣愁を出せ」

「えっ、どういうことですか? よくわからないんですけど……」

「お前の子供が本部襲撃事件のテロリストの仲間かもしれないということだ、中に上がらせてもらうぞ」

「ちょっと待ってください! いきなりそんな……っ!」

 母が必死に止めようとしたものの兵士達が次々に家の中に入ってくる。

 それを見ていた愁は、漸く自分が軍に狙われいている実だという事を自覚する。

(昨日助けた少女がテロリストの仲間? そんなッ──!)

 悔やんでも今更どうする事も出来ない、それに考えている暇など無かった。

 これからどうすればいいのか……簡単な事だ、全てを話して無実を証明するしかない。

 そう決断した愁はリビンクから出ると兵士達の元に向かった。

「俺ならここにいます」

 きっと正直に話せば分かってもらえるはず。そう思っていた愁だったが、兵士は懐からある物を取り出す。

 捕まえに来たので恐らく手錠をはめる為に取り出すかと思ったが、そんな生易しい物ではない。

 兵士が出してきたのは拳銃、愁は一瞬自分の目を疑ったがそれは紛れもない拳銃だ。

「待ってください! 抵抗はしませんから……」

 愁はすぐさま両手を挙げて降伏したが、兵士はなぜかニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 本当に撃つはずがない。あれは脅しに過ぎない。愁は自分の心の中でそうであると願った。

「死ね、魅剣愁」

「なっ!?」

 朝、その日の天気も快晴だった。

 そんな平和な朝に一発の銃声が鳴り響いた時、警察の撃った銃弾は愁の左肩を掠めていた。

 愁はその時ようやく理解できた。ここに来た兵士達は捕まえに来たのではなく、殺しに来たのだと。

 愁は流血する左肩を右手で抑えながら隣の部屋に走った。

 それを見てを逃がすまいと数人の兵士が追いかけ、愁に目掛けて引き金引き本気で殺しにかかる

 このままでは本当に殺される。愁は部屋の開いている窓から飛び出すと、地面に着地し家から逃げるようにして走った。

(どうなってる!? 俺は昨日人助けをした、ただそれだけなのに……!)

 このまま走って逃げてもいずれは見つかって殺される、隠れようにも何処に隠れればいいのか……。

 その時、昨日少女が言ってくれた言葉が脳裏に蘇った。

『何時でも来てくださいね、お待ちしております』

(そうだ彼女の所に……!)

 愁は左肩の痛みを堪えながら、昨日行った彼女の家に向かった。

 町には既に何人もの銃を持った兵士が町に立ち警戒しており、薄暗い路地や小道を通りやっとの事で昨日少女と別れた屋敷の前に到着した。

「着いた……ここだ」

 大きな壁に大きな門、間違いなく少女と別れた場所。

 愁はすぐさま壁についてあるインターホンを連打する。

『はい、どちら様でしょうか?』

 女性の声が聞こえてくる、だが昨日の少女の声じゃない。

「昨日フィリオという少女をこの家まで送った者です! 彼女に会わせてください!」

『無理です』

「えっ……ええっ? どうしてですか!?」

『フィリオ様は現在就寝中。だから無理です。それでは』

「ちょっと待ってください! 時間が無いんです!」

 そう言ったものの相手に一方的に通話を切られてしまう。

 命掛けでここまで来たというのに、このまま引き下がる訳にもいかない。

 愁は家の敷地を囲っている大きな壁を見る、壁の高さは大体二メートル程。

「このっ!」

 左肩を負傷しているものの自力で壁をよじ登り敷地内に侵入。

 とにかく少女から話しを聞きださないと気が済まない。愁はすぐさま扉を開け屋敷の中に入っていく。

 屋敷内は広く豪華な飾りが施されており、想像通りの光景が広がっていた。

「んー、ねむー」

 そこに、一人の少女が愁の前を横切っていく。

 上はだぼだぼのパジャマを着ており、下は下着一枚の姿。

 髪の色、顔立ち、身長……間違いなく昨日出合った少女だと確信した。

「フィリオさん!」

「ふにゃ?」

 愁はすぐさまその子の側に駆け寄り、両肩を掴む。

「一体どういう事なんですか!? 貴方は本当にテロリストで──っ!」

 すると少女は愁を睨みつけながら肩を掴んでいる両手を払いのける。

「汚い手で触らないでよっ!」

「えっ?」

 昨日会った時はおしとやかで上品だった少女が、今では全くの別人のような口調で喋ってくる。

「あなた何者よ! あーわかった、さては泥棒ね、そうでしょ!」

「え、いや、泥棒じゃないって。昨日会った事覚えてないんですか?」

「はぁ? あなたみたいな人、顔も見た事無いわよ」

「そんなはずはない! 昨日確かに俺と……」

 その時、愁の後頭部に何かが当たっているのに気づいた。

 ゆっくりと後ろに振り返ってみると、一人の女性が愁の頭に銃を突きつけていた。

正式名Worm態(第三種ERROR)

全長─15〜???m 

ERRORの中で特に大きく、頑丈な甲殻を持つERROR。

芋虫のような形をしており、全身は厚く頑丈な甲殻に守られている。

口の辺りから何本もの触手を伸ばし、一本の巨大な触手から何十本もの細い触手を出す。

触手には高濃度の酸が滴り落ちており、その酸は数滴で戦車の装甲に軽く穴を開ける程である。

また、赤い触手は管のようになっており、酸を吹き出す事も出来れば人間の臓器を吸い上げる事もするが、

何故人間の臓器を吸うのかは未だわかっていないが、彼等の動力源になっているのではないかと推測されている。



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