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第18話 組織、力

 壁を突き破ってミシェルを助けに来たのは良いが、甲斐斗にはこの状況がどうもややこしい。

 そう甲斐斗が思うのも無理はない、左を向けば五人の兵士が銃を構え、右を向けば一人の少女がミシェルの首に銃を突きつけ、鍵爪を付けた女性が立っている。

「甲斐斗、何故お前がここにいる」

「ミシェルを助けに来ただけなんだが……」

 理由は一つしかなく単刀直入にそう伝えると、羅威は甲斐斗を信用したらしく直ぐにまた視線を敵の兵士に戻した。

「……わかった。今はあの少女の保護を優先とする」

 甲斐斗の言葉に対しやけに素直すぎな気もするが、今はそれでいいと甲斐斗は考えていた。

 第一優先はミシェルを助け出すこと。甲斐斗は愛用の大剣を強く握り締めると、その剣先をBNと対の方向にいる兵士へと向けた。



「お前達、要求は何なんだ?」

 羅威が銃を構えながら敵兵士に聞いてみる。だが銃を持っている少女は何も答えない。

 するとその少女の横に立っている鉤爪を付けた女性が力強くその問いに答えた。

「俺達の要求はこの子だ!」

 静まり返る場内、その状況に鉤爪をつけている兵士は自信に満ち溢れた表情をしている。

 だが彼女は気付いてない、その女性の一言で周りの兵士達は唖然としていたのだから。

 ミシェルに銃を突きつけていた兵士である少女が大きなため息を吐きはっきりと声を出した。

「馬鹿……大馬鹿……超大馬鹿っ……」

 羅威は呆気に取られたような顔をしていたが、甲斐斗はにやりと笑みを浮かべている。

 次の瞬間、甲斐斗は剣を振り上げ銃を突きつけている兵士に特攻していく。

 鉤爪を付けた女性が必死に止めようと脅しにかかるが、そんなものは通用しない。

「お、おい! それ以上動くとこの子の命はないぞっ!」

「殺せる訳無えだろがッ!」

 銃を突きつけていた少女はミシェルからそっと離れて振り下ろされる剣を交わす。

「ミシェル、怪我は無いか?」

 こくこくと小さく頷くミシェル、それを見て甲斐斗も安心するが、直ぐにまた剣を構え二人の兵士の前に立った。

「な、なんで近づいてきたんだ!? 動くとこの子が殺されてたかもしれないんだぞ!」

 鍵爪の女性は未だに理由が分からず一人動揺していると、甲斐斗は呆れた表情で若干戦う気が冷めてしまう。

「おいおい、自分で言っておきながらまだ気づいてないのか?」

「ど、どういうことだ?」

「お前達はミシェルを人質にしてた訳じゃねえ、誘拐しに来た訳だ。それなら普通に考えてわかるだろ? 態々誘拐しに来たミシェルをこの場で殺すはずがないってな」

 鉤爪をつけている女性、そして穿真とエリルがようやく理解したかのように頷く。

「おー、なるほど」

 鍵爪を付けた女性だけならまだしも穿真とエリルも何故甲斐斗が自信満々に特攻したのかが分からなかったが、今の説明でようやく理解できたらしい。

 その二人の様子を横目で見ていた羅威も呆れた様子で二人に視線を向けたが、すぐにまた前を向き拳銃を構え直す。

 甲斐斗もまた剣を構えると、今にも兵士に飛び掛ろうとしていた。

「さぁて、後は侵入者の排除のみだな!」

「ああ、そうだな」

 羅威がそう言うとその場にいたBNの兵士全員が一斉に甲斐斗に向けて銃を構える。

「……へ?」

 銃声を聞いて駆けつけた兵士達も格納庫に集まり、二人の女性兵士と甲斐斗は完全に包囲されていた。

「甲斐斗、お前も侵入者だろ」

「……バレたか」



 結局甲斐斗も二人の女性兵士と同じように拘束され、牢屋へと入れられてしまう。

「おーい! ここから出しやがれー!」

 牢屋に入れられた一人の女性兵士は必死にドアを叩くが出してもらえるはずもなく、諦めてその場に座り込んでしまう。。

 甲斐斗達3人はBNに拘束され現在艦内にある牢屋に閉じ込められていた。

 丁度甲斐斗の牢屋の目の前にある牢屋に、先程ミシェルを誘拐しようとした二人の女性兵士が閉じ込められている。

「ちくしょう! こんな所に閉じ込めやがって!」

「うるさい……」

 先程から怒鳴り声を上げる女性の横にいる少女は落ち着いた様子で壁にもたれかかって座っていたが女性の声がうるさい為に段々と表情に変化が出始めていた。

「うるさいってなんだよ! 俺達捕まっちまったんだぞ!」

「元はと言えば……あおいが馬鹿な事言うからでしょ……」

 その少女に言葉を聞いて全くもって同感の甲斐斗、あの場であの発言は明らかにおかしい。

「うるせえなぁ、言っちまったんだから仕方無えだろ!」

「なら黙ってて……うるさい……」

「うるさいのはそっちの方だろ!」

「っ!……絶対にッ、葵の方がうるさい……」

「なっ、なんだよ絶対って!」

 仲間割れ勃発中、口喧嘩のレベルが低く甲斐斗は呆れた様子で二人を見つめている。

「おーい。ちょっといいか?」

 とりあえず二人と話してみよう甲斐斗よく喋る方の女性に話しかけてみた。

「あん? 何か用か?」

「お前等ってNFの軍人なのか?」

「いーや違うね、俺達はNFでもBNでも無い全く別の組織の人間だよ」

 そんな事を正体のまだ分かっていない甲斐斗に教えてもいいのだろうか。

 こいつ本当に軍人なのか? と思うぐらい一人でベラベラと喋ってくれた為甲斐斗も余計な事を考えずに話しを進められる。

「全く別の組織か……、その組織の目的って何だ?」

「へっ! いくらなんでもそこまでは言えないな」

「なんでだよ! むしろ目的の方が言えるだろ……それじゃあ、これだけは教えてくれ。お前達はどうしてミシェルを攫おうとした」

「決まってるだろ。あの子が必要だからさ」

「必要? どうしてだ?」

「私が……話す……」

 今まで黙っていた少女が突然を口を開く。

 意外な人物が口を開いた事で甲斐斗と女性兵士は少し驚いていた。

「あのお方は……神なの……」

 そして予想外の意外な言葉が返ってきて甲斐斗は動揺してしまう。

 たしかにミシェルは何か不思議な力を持っている、それは甲斐斗も十分理解していた。

 だからといって、まさか人類の希望にまでなっているなんて当然思ってもいなかった。

「それは本当なのかっ!?」

「嘘……」

 ポツリと呟いたその言葉に、甲斐斗は固まると同時に先程まで高ぶっていた鼓動が一気に正常に戻る。

 そして次第に激しくなっていくこの鼓動が『殺意』だということを理解していた。

「子供だからって調子のるんじゃねえぞ……」

「……あの子は……人類の希望なの」

 『……嘘』。と、また言ってくるのではないかと思い警戒した甲斐斗は暫く間をおいてみる。

 すると、そんな甲斐斗に反応せず少女は一人語りだした。



───昔、この世界は平和な世界だった。

 子供達は学校へ行き、大人達は働きに行き、多くの家、命、人、家庭があった。

 何処にでもある普通の世界、その世界の人々は平和な日々過ごし、生きていた。

 しかし、文明が開化していくに連れ世界は段々と腐り始めていた。

 知恵を、そして力をつけた人間がどれ程世界に害を与えるのか、環境、そして生命は次々に人間の手によって失われていく。

 世界は少しずつ異常になり、身勝手な人間達は己の欲のまま行動していく。

 その時、その世界を見ていた神は考えた。こんな世界になってしまったのは人間がいるからだと。

 平和な世界を望む神は考えた結果、人類を滅亡させる事になった。

 皆、平和な日々が続いていたから自分達が死ぬ訳ない、殺されるわけないと思っていた。

 だが人々は皆平等に殺されていく。泣き叫ぶ子供達、町中に転がる死体、崩壊する都市。

 この世界に降りた神は神々しく光に包まれており、その神の姿はまさに光の巨人。

 神、そして神から生まれた天使達は次々に人々を殺していく、その選択に迷いは無い。

 これは虐殺等という非人道的な行為ではない、世界の平和の為に仕方のない行為なのだから。

 そんな神の猛攻撃にあう中、人類は諦めずに神と戦い続けた。

 恐らく人類が初めて力を合わせ戦った相手、それが神になってしまった。

 その結果、人類は呆気なく敗北。しかし、神は人々に最後のチャンスを与えてくれた。

 百年後に、もう一度この世に現れてこの世界を見る。

 その時、平和な世界が作られているのなら人類を滅亡させないと約束してくれた。

 そしてある人は神を信じた、平和な世界の為、武器の無い、争いの無い平和な世界を作ろうと。

 そしてある人は神を憎んだ、平和な世界の為、人類の脅威である『神』を破壊しようと。




「それが今のNewFaceと、BackNumbersなのか?」

「そう、そして百年たった今。奴等が現れた……」

 奴等、それがERRORの事だということは直ぐに分かった。

 甲斐斗はこの世界の謎が少しだけだが理解していく事が出来た。

 NFとBN、互いは平和を望むがやり方が違う、それがまた争いを生んでいる。

「待ってくれ。それとミシェルはどう関係があるんだ?」

 たしか甲斐斗はミシェルが人類の希望なのは何かを聞きたかった。

 まさかこの話と何か関係がある事なのか?そうだとしたらミシェルは一体何者なのか。

 甲斐斗はいくつか質問を繰り返したが、少女はそれ以上何も喋ろうとしなかった。


正式名Beast態(第ニ種ERROR)

全長─12〜15m 

ERRORの中でも素早く、機敏な動きが可能なERROR。

狼のような体型であり、全身に毛が生えている奴も入れば毛が抜け落ちている奴もいる事が確認されている。

鋭い眼は敵を捕らえると死ぬまで殺しに掛かってくる、鼻も良いために隠れている人間を探すのが得意だ。

鋭い牙と爪、そして強力な頤で敵を切り裂き噛み砕く。

眼の色は赤黒く、生き物の目にはとても見えない。

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