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第17話 誘拐、集合


『緊急警報、第ニ、第三格納庫で火災発生、直ちに消火せよ』

 警報が鳴り響き、次々にBNの兵士達が格納庫の消火に取り掛かる。

 兵士達が銃を片手に本部内を走り回り、侵入者を探し回っていた。

 そして一人の兵士が少女を抱きかかえているのに気づき銃口を向け発砲する。

 だが銃弾は侵入者には当たらず、長い廊下を走っていった。

「こっちに侵入者がいたぞ!」

 兵士達が後を追おうとした時、一瞬にして防護壁が降りて廊下を遮断した。

「防護壁が下りたって事は、あいつ等も上手くやってるって事か」

 BNの進行が妨害された事に余裕の表情で廊下を走っていく、彼等は一直線に格納庫へと向かっていた。

「にしてもこんな簡単に段取りが進むとはな」

 そう言って女性兵士が隣で走っている仲間に目を向けると、その仲間である小柄な女性兵士も呟いていた。

「所詮……第ニ旧本部……楽勝……」

「後はあの戦艦に乗りこんでここから逃げるだけだよな?」

「そう、逃げるだけ……」

 長い廊下を抜けて第1格納庫に到着した彼女達は驚きを見せる。

 それは見た事もない新型の機体が新型の戦艦に積み込まれていたからだった。

「BNの奴等、こんな物作ってたのかよ……!」

「そうみたい……」

 ここで驚き足を止めている場合ではない。

 二人は素早く艦に近づき、後は乗り込むだけとなった。

 一応彼等はBNの軍服を着ており乗るのは簡単だった、だがミシェルを抱えていれば普通に怪しいのが見てわかる。

 となれば方法は一つ、二人は同じ事を思いつき、早速それを実行に移し始めるのであった。


 

 

 リシュードの司令室、そして艦長席の横で通信を行なっているセーシュ。

「外で騒ぎが起きているが、大丈夫なのか?」

「心配いりません、それより彼等の目的が気になります、もしかすれば新型機の強奪かもしれません、気をつけてください」

「了解した、引き続き艦内の探索を行なわせる」

 そう言って通信を切ると、今度は艦内に通信を切り替える。

『艦内に侵入者が隠れているかもしれない、各兵士達は引き続き探索を行なってくれ』

 そのセーシュの指示を聞いていた穿真は不満そうな顔を浮かべながら羅威とリシュードの艦内を歩きながら不満を漏らしていた。

「だとさぁ、めんどくせーよなー。それより艦内を冒険しよーぜ!」

「お前は速攻で命令無視か」

「いやほら、冒険がてらに探索するのって良くね?」

「用は言い方だな……」

「そういう事、んじゃまずは格納庫に行こーぜ」

「新型の機体を見に行きたいのか?」

「おう! もしかしたら俺達の機体かもしれないぜ」

「……興味あるな、行ってみるか」



羅威と穿真が艦内にある格納庫に向かっている時、基地内の牢屋にいた甲斐斗の頭の中に少女の助けを求める声が聞こえてきていた。

『かいと、きて…たすけて……』

 その声は小さく、弱々しい、だが甲斐斗にはハッキリと聞こえた。

(ミシェル、俺に助けを求めているのか? ……そうだ、俺はミシェルに生きる楽しさを教えると約束した、約束を破る訳にはいかない。色々と世話になったこの基地からおさらばするか)

 甲斐斗は迷う事なく牢屋の壁を大剣で破壊し穴を空けると、悠々と脱獄してしまう。

(……どうして俺はこうも運がついてないのだろうか)

 壁を壊して甲斐斗が通路に出てみると、銃を持った何人もの兵士達がまるで甲斐斗を待ち構えていたかのように立っていた。

「なんだ貴様!? 今すぐ武器を捨てろ! さもなくば撃つぞ!」

 一斉に銃口を向けられる、生きた心地がまるでしない。

「なあ、お前が引き金を引くのと俺が剣を振るうスピード、どっちが速いと思う?」

「は……?」

(まぁたしかに急にそんな事言われてもそんな顔しか出来ないだろう。一応彼等はBNの兵士。あのアリスって子に免じて命だけは助けてやるか)

 甲斐斗が一度剣を振るう度に兵士の持っている銃は破壊し、ただの鉄クズにしていく。

 逃げている途中後ろから撃たれたら適わない為、全ての銃を大剣で破壊していくと、兵士達は壊された銃を唖然とした様子で見ており、甲斐斗はそんな兵士達には目も暮れずまた別の壁を破壊しミシェルの元へと向かい始めた。

(セーシュめ、俺に信じろと言ったくせにミシェルを危険な目にあわせやがって……)

 巨大な剣を片手に全速力で走ると微かに感じる、段々とミシェルに近づいていくのがわかる。

 そして通路が抜け出すと、そこには一隻の戦艦があった。

(でけえ、地上を走る巨大な戦艦かよ。こんな物を作ってるとは、やはり本格的な戦争が始まっているみたいだな)

 甲斐斗は人目につかぬよう物陰に隠れると、ミシェルの声を頼りに戦艦へと近づいていて行った。




 甲斐斗が脱獄している間、戦艦に積み込まれた新型機体を穿真は嬉しそうに見つめていた。

 羅威も少し興味があり、同様に新型の機体を見つめ続ける。

「カ、カッコイイじゃねーか!」

「見た目だけじゃないよ、性能や出力だって我雲より格段に上さ」

 一人の男が整備されている機体の陰から現れる。

「ラース!お前も乗ってたのか!」

「新型のメンテナンスはまだ終了してないからね、ああ、完成が待ち遠しい」

「なあ! この機体って俺専用機なのか?」

「残念だけど、あの新型機は君達の機体じゃないから」

 君達、となると羅威の機体でも無い訳であり、穿真が不満そうにラースを見つめている。

 無理も無い、実は前々から穿真は自分だけの専用機がほしいと言っていたから。

 実際エリルは専用機の無花果を使っている、羅威は穿真の気持ちがわからないこともなかった。

「何の話をしてるの?」

「っ!?」

 その声に驚き羅威が横を見ると、そこにはエリルが羅威達を睨むようにして立っていた。

『お前にもステルス機能がついてるんじゃないか?』と思わせる程隣にいたエリルに気づかなかった。

「何よその顔ー、驚きすぎじゃない?」

「少し驚いただけだ、それより何で格納庫にいる、お前も新型を見に来たのか?」

「まぁそんな所、ねえラース。あの機体は誰が乗るの?」

「君達の部隊長さんが乗ると聞いているよ、名前はたしか……」

「クロノ・ウェイカーと言います」

 男の声のする方向に羅威達が向くと、二人の兵士がそこに立っていた。

 一人は青年そしてもう一人は少女だ。

 すると視線が集まったのを見て少女は緊張した様子で頭を下げると自己紹介をはじめだした。

「は、初めまして。二宮にのみや雪音ゆきねと言います! よろしくお願いします!」

 ペコペコと頭を下げて皆に挨拶をする雪音。その動きで胸ポケットから携帯電話が落ちる。

 急いで拾おうとした時、誰よりも早く携帯を拾ってあげる青年がいた。

「俺は野入穿真、よろしくね」

 いつもの数倍美化された穿真がそっと雪音に携帯を手渡す。

「あ、はい! よろしくおねがいします!」

 雪音は照れ笑いしながら携帯電話を渡されるとまた胸ポケットにしまう。

 少女『雪音』の自己紹介が終わり、今度はその子の横にいる青年が自己紹介を始めた。

「この部隊の隊長に任命されましたクロノと言います、皆さんこれからよろしくお願いします」

 何とも礼儀正しい青年、そして見た目からして年齢も羅威達と大差無いほど若く見えた。

 その場に集まっていたメンバーは軽く自己紹介を済ませていく。

 だが、部隊の人数は六人のはず。今ここにいるのはラースを除いて五人しかいない。

 クロノに聞いてみると、どうやら後一人の兵士は女性であり、別々で艦内を探索しているらしい。

「話は戻るけどよ、部隊長の機体って事はあの機体はクロノの機体なのか」

「そういう事、さて。僕はそろそろ行くよ、仕事が山積みだからね」

 そう言ってラースは自分の肩に軽く揉みながらその場を去って行った。

「穿真、機体はもう見ただろ、俺達も行くぞ……ん?」

 羅威が格納庫から出ようとした時、格納庫の隅の方に置いてある沢山の荷物の山にコソコソと動く人影が見えた。

「誰かそこにいるのか?」

「誰もいませーん!」

「そうか」

『どうやら誰もいないようだ』。などとボケている場合ではない、皆の視線が一斉にその人影に集まる。

 すると、その二人の兵士はその場から逃げようとするかのように出口に向かって歩いていく。

 その内男性の軍服を着ていた一人の兵士の肩には大きな鞄が掛けられている。

「お前等ちょっと待て」

 その言葉に足を止める二人の兵士、軍帽を深く被り目を合わせないようにしているのが明様に怪しい。

 羅威は一人近づいていき、穿真達は遠くで羅威の様子を見ている。

「な、なんですか?」

「お前達、隅の方でさっき何をしていたんだ?」

「じ、実は手違いで一つ荷物がこっちに紛れてしまたんすよ、それで回収しに来てたのさ」

「そうか、それでその鞄には。何が入っているんだ」

「えーとっすねぇ、えーと……」

 兵士が考えている途中、羅威は懐に入れている拳銃を出すとその銃口を目の前の兵士に向けた。

「今すぐ両手を挙げろ、さもなくば撃つ」

 それを見ていた穿真達も羅威の様子を見て駆けつける。

 鞄を持っていた兵士が床に鞄を下ろした瞬間、既に兵士の両手の甲には鉤爪がついていた。

 兵士は体を回転させるかのようにして羅威の手に蹴りをいれ、銃を蹴り落とす。

「ちっ!」

 鋭い鉤爪を光らせ、羅威の顔を狙って鉤爪を突き出してくる。

 羅威は何とか鉤爪をかわしていくが、一本の鉤爪が羅威の頬を掠めた。

 だが羅威はその隙を狙い、兵士の腕、そして胸倉を掴むと一気に投げ倒す。

 完璧に決まった一本背負い、すぐさま兵士は体勢を立て直そうと起きあがろうとする。

 顔に傷を入れられたお返しにと顔面を殴ろうと拳を振り上げる羅威。

 だがさっきの衝撃で兵士の被っていた軍帽が脱げ、はっきりと顔が見える。

「女っ!?」

 羅威がためらっている隙に鉤爪が羅威の腕を切り裂く。

 そして羅威の顔面に鉤爪を刺し込もうとした時、一発の銃声が格納庫に響き渡った。

「止まりなさい! 撃つわよ!」

 エリルが銃を構えると同時に穿真も懐から拳銃を取り出し相手に向ける。

「もうお前一発撃ってるけどな!」

「穿真! いちいちうるさい!」

 エリルが発砲した銃声で鉤爪は止まった。

 穿真達が銃を構え、二人の兵士に銃口を向けている。

 これで終わったかに見えたがそうはいかなかった。

 鉤爪を付けた兵士とは別の、もう一人の方の兵士が鞄を開けると、鞄の中からミシェルが出てくる。

 すると兵士はミシェルを立たせると、手に持っていた拳銃の銃口をミシェルの首に当てる。

「動くと……撃つ」

 銃口を突きつけるその兵士は表情を変えず羅威を見ていたが、銃を突きつけられ震えるミシェルの耳元である言葉を囁いた。

「大丈夫、撃たないから……ね」

 ミシェルには聞こえるぐらいの小声でこっそりと伝える兵士だが。その言葉を信じる信じない以前に銃を突きつけられている事にミシェルは恐怖を感じていた。

「よくやった! これで形勢逆転だな!」

 鉤爪を着けている兵士が喜んでいたその時、格納庫の壁を吹き飛ばし一人の男が現れる。

 男の右手には黒剣が握られており、誰かを探すかのように周りを窺っていた。

「っしゃあ、侵入成功。後はミシェルを探すだけ……って、あれ?」

 甲斐斗は目の前に広がっている光景を見てどうも自分に都合の良いものではないとすぐにわかった。BNの兵士が鉤爪をした兵士に銃口を向けており、その銃口を向けられている兵士の一人はミシェルの首に銃を突きつけているのだから。


ラース・グレイシム

BNの機体設計士でもあり整備士でもある青年。

特殊な武器や兵器を開発する事も大好きであり、よくアニメや漫画を元に作ったりする。

自分の開発した機体がお気に入りだが、その分機体を破壊されたり傷付けられると落ち込んでしまう。

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