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第139話 戦力、確認

───最後のEDPに向けての作戦会議、そこに現れたのはNFの兵士騎佐久と菊の二人だった。

会議室に集まった兵士達は皆動揺していたが、紳の冷静な態度に徐々に落ち着きを取り戻してきている。

しかし紳の説明を聞くまではまだ警戒心は残したままであり、紳からの説明を待っていた。

「まず、彼等NFはBNに対し無条件降伏を宣言した。既に武装解除もされNFは完全に力を失っている。それを知った上でこれからの説明を聞いてほしい」

騎佐久率いるNFの部隊は既に投降しており、NFの兵士達は今もなおBNの監視下におかれている。

「説明なんかいらねえだろ」

これから紳がNFについて説明をしようとした時、甲斐斗が腕を組みながら椅子の背凭れに体重を乗せつつ騎佐久を見て口を開いた。

「要はあれだろ?EDPの時にERRORに返り討ちにあったNFは戦力の大半を失ってどうする事もできねえから無様にも敵であるBNに助けを求めてきたって話しじゃねえのか?どうなんだ?」

それは誰もが思っていた事、だがそれを口にしたのは甲斐斗ただ一人。

NFから聞けば悔しいが、甲斐斗の言葉は的を射ていた。

巨大なERRORの一撃に空中戦艦アルカンシェルは撃墜され大破したものの、生存者達はまだ多く残っており騎佐久の指揮の下各兵士達は戦艦から脱出していた。

戦艦、そして多くの核兵器を失ったNFは残された戦力でERROR殲滅は不可能と判断。人類を救う為に出来る事といえばBNと共に最後のEDPに参加する他なかった。

「……その通りさ」

紳ではなく騎佐久が甲斐斗の言葉に返事をすると、こちらを見ている甲斐斗と視線を合わせた。

「私達NFは今やBNの捕虜に当たる。生かすも殺すも君達に任せるが、どうする?」

そんな騎佐久の問いの答えなど、言った本人所かこの場にいる人達なら全員分かっていることだ。

殺すはずがない、殺せるはずがない。BNの戦力が低下しているこの状況下で、最後のEDPに向けて少しでも戦力が欲しい所。

貴重な戦力、貴重な人間を、人間の手によって減らせるはずがなかった。

「降伏してきたくせにその強気な態度、むかつくな……あ、そういえばアステルの野郎は何処にいやがる。お前達と行動してただろ」

ふと思い出したアステルの存在。

騎佐久率いるNFの戦力がBNのものになるとすれば、アステルの存在は絶大なはず。

「あいつは今行方を晦ましている。まぁ、BNに降伏すると言った時点でアステルが素直に応じるはずもないがな」

「逃げられたのかよ勿体ねえな、あの機体があれば結構な戦力になったのに」

「例えあの機体が手元にあったとしても戦力にならない。あの機体はアステルにしか操縦できないんだ」

「専用機だからか?面倒くせえ設定にしやがって……」

「いや、あの機体には謎が多くてね。アステル意外の人間が操縦する事が出来ない仕様なんだよ、そういうプログラムを施した訳でもないのに……」

そう言って騎佐久は神楽に視線を向けると、神楽はその視線から目を逸らしてしまう。

その細かい二人の仕草が紳は気になったが、あえて何も聞かず黙って話しを聞き続けた。

「なんだそりゃ。じゃあいらね」

アステル以外の人間では操縦不可能。

その理由が何かなど甲斐斗にとってはどうでもいいので一気に機体への興味が無くなってしまう。

「そうそう。アステルの機体について私からも話したいことがあったんだ。最後のEDP、恐らくアステルも姿を現すだろう。これ以上邪魔をされる訳にもいかない。だからこれを使う事にするよ」

騎佐久が徐に懐に手を入れると、一枚のメモリーカードを取り出しそれを皆に見せ付ける。

「私達NFが生み出した対Dシリーズ用のジャミングプログラム、元々君達BNの特機に使う予定で作られた兵器だが、これを使えばアステルの機体を完全に止める事は出来なくとも、動きを抑制する事ができるだろう」

エリルの方を向いて騎佐久が話し続ける、つまり特機というのは紫陽花だという事に回りはすぐに理解できた。

「さすがに手ぶらでBNに下る訳にもいかないからな。嬉しい土産だろ?風霧」

紳は返事も返さず黙ったまま騎佐久の言葉を聞き続ける、表情には出さないがアステルの機体『デルタ』に対抗できる術が有ると知れて僅かながら安心していた。

騎佐久は手に持っていたメモリーカードを紳の目の前にある机に上に置き、自分の元いた場所へと戻り席に着く。

紳はゆっくりとそのメモリーカードを手に取ると、横目で僅かに騎佐久の見た後に懐のポケットに入れた。

「私からの話しは以上だ。何か質問はあるかい?」

「ある」

この場にいる全員に向けて騎佐久はそう言い放ち質疑応答に入ると、真っ先に口を開いたのはまた甲斐斗だった。

「最後のEDP。核兵器を使うつもりじゃねえよな?」

「私達はもうBNの指揮下に入っているんだ。今保有している核兵器ついても全て風霧に任せるよ」

「そうか。おい紳、しっかり見張っとけよ。隠れて核兵器でも使われたらたまったもんじゃねえからな」

あれだけ核に拘っていた騎佐久がこうもあっさり引き下がるとは甲斐斗と同様に紳も思っていない為、警戒は十分にするつもりだ。

「貴様に言われなくても分かっている」

質疑応答が終わり紳は席を立って会議室に有る巨大スクリーンの前に移動していると再び騎佐久が口を開いた。

「どうやら質問は以上のようだ。風霧、最後のEDPに向けての作戦会議を始めてくれ」

「貴様に言われなくても分かっている」

騎佐久の話しも終え要約本題に入る事が出来た。

一枚の写真が巨大なスクリーンに映し出される。

巨大な森が広がっている光景、これが一体何を示すのか皆紳の説明を黙って待っている。

「ここが俺達の行うEDP、最後の場所だ」

そう言われ会議室にどよめきが起こる。

無理もない。最後のEDPの場所は何処か分かってはいたが、実際どのような場所なのか一切不明だったからだ。

「この写真は8番目の偵察部隊が撮る事に成功した唯一の一枚だ。この写真の転送を最後に彼等との交信が途絶えている。この写真を分析した結果、EDP開始地点は全長数百メートルもの大木が無数に生えた森になっているが判明した。恐らくERRORによる何らかの作用がこの異常な森を作っていると考えている」

「それじゃあどうやってEDP開始地点に行くんだ?そんな大木だらけの森じゃあ戦艦が入れないだろ」

「写真を良く見ろ。木が生えていない広い場所があるだろ、ここからなら入れるかもしれない」

「ご丁寧に入り口がついてるって……絶対罠だよな、これ」

「だろうな。こんな入り口を作る理由がERRORには全くない。しかし、戦艦が通れる程の巨大な道を現場で作る訳にもな……。よって、この入り口を通り下に巣があるとされる地点の場所まで向かう事と決めた」

「マジかよ。ま、罠だろうが何だろうが出てきた敵を倒せばいいだけだし別にいいか」

別に良くもないが甲斐斗にとってEDPでやる事は決まっているので特に慌てる必要もなかった。

それ所か敵の罠に飛び込んでいくことになるのでより警戒して動く事もできるとさえ思っている。

「次に作戦開始地点までの配置だが。愁、羅威、甲斐斗。お前達には艦の先頭に立ち先陣を切ってもらう」

名前を呼ばれた羅威は『了解』と呟き頷くと、隣にいる愁も続けて『分かりました』と言葉を返し、残る甲斐斗も返事をした。

「無理」

その突拍子もない事を言い出した甲斐斗に紳は若干苛立ちながら睨みつける。

「貴様、この期に及んで何を言っているんだ……?」

「いや、別に怖気づいてる訳じゃない。ただ今回は守りに徹したいんだよ。そんな訳で俺は艦の護衛をする、前線ならあいつ等だけで十分だろ」

「十分じゃないと判断したから貴様を配置したが……まぁいい。エリル、お前が先頭に立ち上空から二人のサポートをしてくれ」

「は、はい!了解しました!」

緊張した様子で敬礼を済ませるエリルを見た後、紳は再び甲斐斗に視線を向けた。

「甲斐斗、貴様は地上から、俺は上空から艦の護衛に当たる。ダン、お前は後方を頼んだぞ」

「分かったよ」

ダンは煙草を加えたまま返事をした後、紳は再び話し始める。

「この作戦会議後、BNとNFの各部隊にも俺から口頭で指示を出しておくが。この最後のEDP、主戦力であるお前達に掛かっているとも言える。気を引き締めておけ、以上だ」

これでこの場にいるEDP参加者の配置の指示と確認が終わった。

紳はこれから各部隊の指示だけでなくNFの部隊が加入した事にとり機体や兵器、食料に弾薬等の戦力に関わる確認等を済まさなければならない。

その他にも双剣のレジスタルの解明や機体の調整……やるべき事は山ほど残っており、足早に会議室から出て行こうとした。

「あ、あの!」

だがその時、聞き覚えのない少年の声に呼び止められ紳の足が止まる。

「僕は……どこに付けばいいですか……?」

声のする方を向けば、そこには他世界から来たと言われている少年ロアが立ち上がりじっと紳を見つめていた。

「貴様、機体が扱えるのか?」

「はい!愁さんに教わって大分動かせるようになりました!」

それを聞いていた甲斐斗は腕を組み少し眉を顰める。

(俺も教えたのになー……)

愁に機体の操縦を教えてもらったと聞き直ぐに紳が反応して愁の方を向くと、愁は力強い眼差しで見つめてきた。

「紳さん、ロアは本気です。だからこそ俺は機体の操縦、そして戦い方を教えました」

正直に言えば実戦経験の無い人間、ましてやこんな子供を戦場に出す事などありえない。

本来であれば即却下するはずの事だったが、この最後の戦場では少しでも戦力が欲しい所、それに……この他世界から来た少年を見ている内に、この少年の可能性に懸けてみたいと思った。

「初めての実戦がERRORとの最後の決戦か……いいだろう、甲斐斗と共に艦の護衛に当たれ」

「わ、わかりました!」

「深く考えるな。生きる為に何をすればいいか、分かるな?」

「はいッ……!」

「良い返事だ、必ず生き残れ」

それだけ言い残し紳は会議室を後にすると、集まっていた人達も皆それぞれ会議室から出て行く。

神楽もまた自室に戻る為にミシェルと手を繋いで歩いていると、その後ろからついてくる一人の男が神楽を呼び止めた。

「やあ神楽、久しぶりだね」

声をかけられ後ろに振り向くと、そこには軽く手を上げ澄ました表情を浮かべた騎佐久が立っていた。

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