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深夜バスの夜
仕事で遅くなったある日、私は足止めを食らった。
乗り換えをしなければ帰れないのだが、自分の最寄り駅へと通じるその電車はすでに終電が終わり改札機は封鎖されていた。
(どうしようか)
困った。家まではまだ結構ある。タクシーに乗ればいいのだが手持ちがいささか心許ない。
ふと目を転じるとバスが視界に入った。自分の家に近い方面へ走ると確認するとためらいなく乗った。深夜バスに乗るのは初めてのことだ。
私と同じように終電を逃したらしき社会人がほとんどだ。酔っ払いがいないのは雰囲気的に仕事上仕方ない人しか乗せませんよという空気があるからだろうか。それとも酒が入った目だとバスなど気づかないからか。
乗り込むとすぐにバスは出発した。夜中の一時の都会のネオンの中を切り裂いて。
疲れた人々を家路へと帰す優しい車の中は無言の連帯感があったような気がしなくもない。
"俺達頑張ったよな"と。
もっとも帰り着いたのは午前二時であり、そんな感慨も吹っ飛んだのだが。




