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過ぎ去る夏の日
夏休みに入ると通勤電車が空くのは学生がいなくなるからだ。
(学生はいいよなあ。夏休み長いもんなあ)と社会人である私はぼやく。
勝手なもんだ。
私だってそんな学生時代を経て今に至るというのに。既に長い夏休みは享受した身だ、歎く資格はありはしない。
それに学生時代には早く大人になりたいと思っていなかったか。
親の庇護下にある幸せを窮屈と思い、早くこの家を出たいと思っていたあの頃。
今日も強い日差しの中、矛盾と身勝手さを身につけ、多少の苦い経験もしたかって青年だった男は歩いていく。
ーなりたいと願ったあの日、戻りたいと願う今ー
いつだって全てを手に入れることは出来ないんだ。
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午後の豪雨がオフィスの窓を叩く。
みるみるうちに勢いを増した雨は止むことを知らない。
春の雨が優しく、秋の雨は冷たく、冬の雨が孤独だというならば夏の雨は何だと考えた。
・・・強いて言うなれば夏の雨は狂暴だ。ただひたすらに勢い余った雲が地上にまで勢力を伸ばすような熱い雨か。
帰るまでには止めよ、と密かに願う私をよそに雨はまだ降り続ける。