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散血の空
青い空を見上げる。そこには澄んだ青い空がどこまでも広がる。ぽつり、ぽつりと浮かぶ白い雲はほどよいアクセント、どこをどう見ても平和そのものの風景。
70年ほど昔、この空に血の赤が混じった時期があった。鉄の翼を駆って兵士達は宙を舞い、弾丸や爆弾で相手を沈めて葬った。そんな不幸な時期。
今、飛行機は旅客機として運用され多くの人々や物を国から国へと運んでいく。
便利で平和な時代。空は血に染まらない。
軍用機も存在するとはいえ、とにかく表立ってはそれらが青い空に赤い飛沫を刻むことはないとされるのが今だ。
「飛行機さんだ」と息子がその無邪気な瞳を空に向ける。小さな指の先、白いシュプールを青い空に残して去っていく高度何千メートルをゆくシルエット。
「そうだね、飛行機さんだね」と僕は答えて同じように空を見上げる。
そこには散血の空は無く、ただ青が広がっていた。




