因果応報
幾度も切り結ぶ斬撃の音色。
戦場においては鳴り響かぬ事が希であるそれは、しかして戦士らの己を鼓舞する唸りを伴わないだけで
神聖な舞にも思えるから不思議である。
卓越した二人の戦士の剣戟は、みだりに近づく者全てを切り裂いた。
それにより相対する戦士は2人を除き動く事が出来ないでいる。皆、戦に気を取られ致死の斬撃を見舞われるのを恐れているのだ。
しかし、無粋なものは何処にでもいる。指揮官の貴族の命により腕の良い射手が戦士達の死角から矢をったのだ。近寄れないなら遠くから射殺せば良い。その浅はかな考えは己の身を滅ぼすとも思わず。
確かに、お互いの矢は射抜こうとした相手に気付かれなかった。しかし味方である戦士には見えていたのだ。
戦士はお互いが目の前の相手の斬撃を受けるよりも、相手を狙い無粋な横槍を入れた矢を切り払う事を選択する。そして、まるで前もって話し合っていたかの様に鮮やかに立ち位置を変えるとその刃でもって矢を払いのけ、それを見て驚き身動きが止まった射手に向かい腰に下げた短刀を投げつけた。
片方の短刀は腹に突き刺さり、もう片方は足に刺さった。
どちらも痛みに体勢を崩し地面へと落ちる。
「ふむ、投擲はワシの方が劣るみたいだな」
自分の投擲は相手に重症を与えてしまい、口を割らせられるか微妙なのに対し。
相手の足を狙った投擲の見事さに戦って居た戦士の片方が思わず声を掛けた。
「たまたまさ」
声を掛けられた戦士はそれに誇ることもなくさらりと返す。
「しかし、興がさめたな。どうする? 続けるか?」
「いや、取り敢えずお互い目の上のたんこぶをどうにかしよう。やるからにはとことんやりたいからな」
「そうか、それは残念だ」
「言ってろ」
やはり互いに腕に覚えのある戦士らしく、考えることは似通っていた。
彼らは互いに土地に住まう冒険者であり、そこから腕のあるものが雇われただけに過ぎない。
その為正規軍とは違い上に忠誠を誓っているわけではない。故に自身の信条等が揺らがされる場合は契約を反故にする事もあるのだ。
このため、腕に覚えがあるものはそれに比例して扱い辛い。それは雇う側にとっては常識でもあった。
しかし、今回の雇い主は地位にあぐらをかいて冒険者らを見下していた。その為彼らの話など端から守る気は無かったのだ。だから部下を後ろに配置し隙を見て相手の部隊長を射殺そうとした。
これらは余り力の無い地方の貴族によく見られる傾向である。
そして、そういった人間は大抵がすぐに命を落とす。
今回もその例に漏れず、その後の戦で指揮をしていた貴族は命を落とした。
しかし雇われていた冒険者が相手方の指揮官を討ち取ったために痛み分けに終わる。
ただ、不思議な事に両軍とも貴族の支配下は全滅したのに冒険者達の損傷は少なかったという。
出だしを適当に書いたらこうなりました。
書く練習の作品ですので、おかしい部分ありましたら教えて下さい。
こんな短いのに、きっと読み直したらヤバいんだろうな……。