第一話 戦火での出会い
国民皆兵制度の発布によって、私ルナ・エールは、長年住んでいるベルーナの自警団に入団する事になった。
いくら国を守るためだからって、子供や女の人にまで銃を持たす必要は無いでしょうって、ずっと思ってた。 まだ私だって17才になったばっかりなのに~
「はぁ~」
私は思わず溜め息を漏らした。
ベルーナは、商業が少し発展した小さな町。町の中心には大きな広場があり、広場には町のシンボルとして噴水が置かれていて、毎日、午後2時になると噴水の水が噴出し、晴れている時は綺麗な虹が見られる。 ルナのお気に入りである。この町には、第一次大陸大戦を終戦に導いた今は亡き連邦の英雄ランザード将軍が住んでいた豪邸があり、今もご子息が住んで居るらしいのだが、詳しいことはルナにはわからなかった。
そんなルナが担当になっているベルーナ西門は、将軍邸が近くにあり、近くには小川が流れていた。
「今日ぐらいサボったって、いいよね~」
ルナが小川のほとりで横になった時、ルナの頭の真上でエールが仁王立ちし、いやらしそうな目で覗き込むようにみていた。
「ルナ~。 サボろうとしてるでしょ~?」
ルナは驚き跳ね起きた。
「うわぁ! ビビビビビビビックリしたぁ~ エール驚かさないでよう」
「なに言ってのよ。このサボり魔のクセに 少しは働きなさいよ~」
「なっ! 私ちゃんとベルーナのために働いてるわよ」「小川で寝ることが仕事なのかな~?」
そう言ってノエルは私の横に座った。
「ノエルこそサボろうと思ってこっちに来たんじゃないの?」「ま、そんなとこかなぁ~」
やっぱりそうだったか。まぁそんな所だと思った。
「ねぇルナ」
「な~に?」
「あれ、ちょっと怪しくない?」
ノエルが指差した先には手帳になにやらメモ書きしている青年がルナ達のいる反対側のほとりにいた。
「帝国のスパイだったりして」
「まさか~そんな訳ないでしょ?」
ノエルは置いてた銃を取り、立ち上がった。
「ルナ、あたし確認してくる。
そう言ってノエルは走って行った。私も慌てて支度し直し、後を追いかけた。
橋を渡り、あの青年のいるほとりについた。
まだ手帳に何か書き込んでいた。実に呑気なものだ。
「やっぱこいつ、帝国のスパイだよ とっつかまえてやる」
「まだスパイかどうかわからないでしょ もう少し様子見ようよ」
「いや、ここで逃がす訳にはいかないもの 突撃するわ」
ノエルは青年に歩み寄っていった。
銃を持ち直し、銃口を向けた。
「動かないで!! ゆっくり手を挙げて、振り向きなさい」
彼は書き込みをしていた手帳にペンを挟んで閉じ、それを胸ポケットへ入れ、手を挙げた。
「ベルーナ自警団のものです。ここでなにしてるの」
「えっ… あぁ、小川に生息している魚と花のスケッチを--」
「スケッチ? 呑気なものねぇ。手帳を見せて」
「あ、どうぞ」
私達は手帳の中身を見た。確かに色々と書いてはあるけど… 正直、全くわからない。ますます怪しくなった。やっぱり帝国のスパイなのだろうか。彼が語り掛けてきた。
「どうだい、よくできてるだろ?」
「えぇ、確かに、よくスケッチされてるわね」
「確かに、綺麗に書かれてね」
彼は褒められたことが嬉しいのか自慢げに話してきた。
「そうでしょそうでしょ! 今書いてたのはコナユキ草っていう花でね~ 春になると綺麗な花を咲かせるんだよ~。これがまた綺麗なんだよ。それに-」
「ハイハイ、手帳も没収します」
「ええっ、そっ それは困るよ」
彼は焦った顔でノエルが手にしていた手帳に手を伸ばしてきた。
「動かないで!」
私達は慌てて彼に銃口を向けた。
「話たい事はいっぱいあるでしょうけど、後のことは詰め所で聞かせてもらいます」
とりあえず彼を詰め所に連行することにした私達は、町の広場にいる隊長のところに向かうことにした。
よほど手帳が大事だったのだろうか。男はしょんぼりしながら歩ていた。なんだかこちらの気が引けるようだ。
「参ったなぁ…… スケッチが禁止されてるなんて知らなかったよ……」
なんなんだこの人はさっきから。
「帝国軍は、みんなアナタみたいにおっとりしてる人ばかりの?」
「帝国軍? さぁ~どうなんだろ? わからないけど」
呆れた。こんなんで
スパイが務まるものなのかしら。
「そういえば、あなた、名前は?」
「……ヴァン……ヴァン・ランザード……」
えっ!!
私はノエルと顔を見合った。
彼がランザード将軍の息子なの?
こんな呑気に自然観察してるような人が、あり得ない。
「その名前!、考えたのは誰?」
「えぇっ!」
とぼけてるの、この人?歩みを止め、彼のほうに向いた。
「知らないようだから教えてあげるわ。このベルーナで、その名前を名乗るのに証が必要なの。英雄の証が。」
「あなたじゃ、力不足なのよ。ス・パ・イ・さん」
「スパイ? 僕が?」
「白々しい!」
私は、銃を彼に向けた。
「何のことだかまったくわからないんだけど……。 え、いつどうして僕がスパイ? えぇっ! スパイ?」
「今更ごまかしたところで--」
突然のことだった。警報が町中に鳴り響いた。
「なっ! なに突然?」
「今まで、鳴ったことなかったのに!」
私達があたふたしていた時、前から自警団のおじさんが慌てて叫びながら走ってきた。
「帝国軍だーーー! 帝国軍が攻めてきたぞーーー!」
「帝国軍ですってぇぇぇぇぇぇえ!」
「あぁ、東門で隊長達が迎撃に向かったんだが…… あの数じゃあ保たないぞ」
「戦闘になってるのかい?」
「あなたが捕まったら襲撃するように手引きしてたんでしょう!」
「私達先に隊長達のいる東門に向かうは、行きましょ、おじさん!」
「あっ! ちょっと、ノエル!」
ノエルは、おじさんと東門に向かって走って行ってしまった。 私は取り残されてしまった。
「置いてかれたね~」
なんでこんなに呑気なの、この人。早いとこ詰め所に連れて行こう。 私は、急ぎ足で詰め所に向かった。
詰め所に着いた私は、彼を椅子に座らせ腕を椅子に縛り付けた。
「東門、大丈夫かなぁ? 相当な数だって言ってたけど?」
「あなたにとっては好都合の話みたいね」
彼が真剣な顔をして見つめきた。
「僕を開放してくれないか」
はぁぁぁぁぁぁあ。
なにを言ってるのこの人。
「僕の帰りを待ってる人がいるんだ。すぐここに戻ってくる。行かせてくれないか」
「じょっ 冗談でしょう。そんな話、誰が信じると思うの」
「頼む! 僕のたった一人の家族が今も家で待ってるんだ!」
彼は真剣だった。私は、その顔を見て戸惑ってしまった。
自警団の決まりとして、『捕虜は、詰め所で尋問後、処罰が決まるまで牢獄に入れておく』 という決まり事があるのだが、今は帝国軍と自警団が東門で戦闘していて、いつ詰め所のある中心街まで攻撃してくるかわからない。
私は、決心した。
「わかったわ。あなたのこと開放してあげるわ」
「ヤッター! ありがとう。感謝するよ~」
彼はさっき見せた顔とは変わって満面の笑みで喜んだ。
「たーーーーだーーーーしーーーー! 私も同行します。いいですね」
「うん、ありがとう。じゃあ急いでいこう」
「ちょっ! 縄をほどかなきゃ」
「えっ! わっ! わわわわわぁぁぁぁぁぁあ!」
椅子に縛り付けられていたことん忘れていたのか、彼は勢いよく立ち上がろうとしたが、勢いよく顔から地面に倒れた。
「大丈夫?」
「……大丈夫じゃ……ない……」
「……やっぱり……ね……」
とりあえず彼の縄を解いてあげた。彼は意外とピンピンしていた。
「早く行こう!」
彼は、走りだした。
「ちょっと! 待ちなさいよーー!」
私も、彼の後を急いで追った。
広場を西に抜け、さっき彼を捕まえた小川向かって走った。
あれ? このまま行けば確か……。
「ねぇー! あなたの家って」
「このまま行けば、あと、一・二分でつくよ!」
このままって。まさか! ランザード邸!
なんやかんやしているうちに、ランザード邸に着いた。彼は鍵を開け、扉を開けた。
「なにしてるの? 早く早く!」
「えっ! あぁ……うん……」
とりあえずお屋敷の中に入ることにした。お屋敷の中はとても綺麗で、とにかく広い。正面には、すぐ階段があり、床にはじゅうたんが敷いてあった。あちこち見とれいると、彼はすでに二階に上がっていた。私も、後を追って階段を急いで上がり、彼の後を追った。長い廊下をしばらく歩いて行き、あるドアの前で止まり、そのドアを開け、部屋に一緒に入った。部屋の中は、綺麗に整頓されていて、ホコリがひとつもないほど隅々まで清掃が行き届いた。その部屋の窓際に、一人の女の子が立ってた。年は……私と同じ位で、藍色がかっている黒髪
は、手入れが行き届いているのがわかる。少女がこちらを向いた。
「……兄……さん……? 兄さん!」
彼女は、彼を見て兄だと確認すやいきなり彼に飛びついた。
「……兄さん……ずっと……ずっと、会いたかったです……」「久しぶり、マリサ。元気にしてたかい?」
「……はい…… 兄さんが今日帰ってくると手紙に書いてあったので、いろいろと準備をしていたところだったんですよー」「……そうだったんだ……いつもありがとう……マリサ」
「いいえ、全て兄さんのためにやってることですから」
彼に抱きついている彼女はまるで、子供みたいに微笑んでいた。つかの間の再会に、私の心の中は、少しホッとした感じがした。抱きついていた彼女が私のことに気がつくと、彼から離れて私に一礼した。
「兄さんをここまで連れてきてくださって、ありがとうございます」
「いえいえ、たいしたことはしてないんですけどね……ハハハァ……」
私は少したじろいでしまった。彼もまた、私に一礼した。
「妹に会わしてくれたこと、感謝するよ……ありがとう……」
「わざわざ掟を破ってまで来た甲斐があったわ」
「掟? また、悪いことしたの? 兄さん!」
「えっ? 帰る途中でスケッチしてたら、この子にスパイだって言われてさぁ……」
「ちょっ! それはあなたがランザードだって言うから!」
あっ、本当にランザード将軍のご子息なのかどうかか調べないと……。
「あなた……本当にランザード将軍の息子なの……?」
「あぁ、本当だよ。 これが証拠だよって、言っても信じてもらえないと思うけど……」
そう言って彼が手渡した物は、第一次大陸大戦時の将校の軍服を着た、ランザード将軍と幼い頃の彼が写った白黒写真だった。
これで彼がランザード将軍の息子だって理解した。
「これで、信用してもらえたかな?」
「まぁ、信用してもいい……かなぁ……?」
「よかった! じゃあ改めて自己紹介しないとね。 僕の名前はヴァン。彼女は、僕の妹のマリサ」
「よろしくお願いします」
「私は、ルナ! こちらこそよろしく! ヴァン、マリサ」
自己紹介を済ませた私は、彼らと握手を交わした。その後私達は、部屋の中にある椅子に座った。
「私はこれから、東門にいる隊長達のところに行こうと思うの…… あなた達は?」
「僕も行こう!」
「ルナさん、私も行きます!」
「あなた達、武器持ってないじゃない!」「この屋敷の倉庫に、第一次大陸大戦時に使っていた物が一式あったはすです。 それを使いましょう」
すぐさま屋敷を出て倉庫に移動した。倉庫の中は、第一次大陸大戦で使われたであろう見たことがない武器が揃っていた。その中でもひときわ目立つ大きなカバーのかかった物があった。
「これは……?」「父さんの形見のなんだ。見てみるかい?」
彼は、目の前にある物のカバーを引きずり降ろし、白と青で塗装された従来型の物より一回り大きい戦車が現れた。
「こいつは、ヴァルキリー号って言うんだ!」
「ヴァルキリー……これ……動くの……?」
「はい! 私がある程度の修理と補強をしたので大丈夫です」
「マリサは高校の軍事教練、いつも首席なんだよね」
「兄さん程じゃないですけど……」
のんびり屋さんで妹想いの兄と、それを支えるしっかり者の妹といったところなんだろう。それにしても、高校の軍事教練は大抵、男性の首席が当たり前なのだか、こんな小柄な女の子が首席とは、同じ女性として正直驚く。
しかし、『兄さん程じゃない』と言うのは、マリサが謙虚なだけだろうか?
まさか、こののんびり屋さんに隠された才能でもあるのだろうか?
一通りの武器を戦車の格納庫に入れ終わり、扉を閉めて、
「武器の積み込み終わり……っと」
「これで準備OKだね」
「では、操縦席の方に乗ってください!」
操縦席に移動した後、役割分担を決めた。
マリサは操縦を担当。 ヴァンは砲撃を担当。 私は操縦の仕方がわからないのでマリサの操縦をサポートすることにした。
まず先にヴァンが砲身操縦席に座り、あとから私とマリサが運転席に座った。お互い座ったことを確認し、
「エンジンをかけます。ルナさんは、メーターが赤いラインを超えてないか確認してください。 兄さんは異常が無いか再確認してください!」
ヴァンはマリサに言われた通りにあちこち指差しで確かめ、異常が無いことを確認して、
「大丈夫! こっちは異常無しだよ」
私も異常が無いことを確認して、全て良好であると認識して、
「こっちも大丈夫!」
マリサは私達の確認が終わったことに頷き、ハンドルに手をかけた。
「ルナさん! いつでも発進可能です!」
「よし! 東門にいる隊長達の援護に行くわよ! 準備はいい?」
「OK! いつでも大丈夫!」
「はい、早く隊長達を助けましょう」
私は立ち上がって大声で指示出した。
「ではこれより、東門にいる隊長達の援護と帝国軍の迎撃に向かうわ! 進軍開始!!」
マリサはおもいっきりアクセルを踏んだ。それと同時にヴァルキリー号は勢いよく前進した。
行く先は、ノエル達のいる東門。
待っててノエル……!!
今助けに行くから……!!
それまで持ちこたえいて……!!
私はそう切に願った。
第一話、やっと書き終わったぁぁぁぁぁぁぁぁあ……。
書いているうちに登場するキャラクターの設定が随分ズレてしまって……。
小説を書くのって……意外と大変なんだなぁって思いました。
今後の参考にしたいので、
読んでくださった方、
感想お願いします!!