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現実って

作者: さくらい兄

この町にやってきて早3年。

誰も自分の存在を知らない街に来たきっかけは

自分の行きたい高校へ進むために行きたかったからだ。

そのために俺は家族とも友人とも付き合っていた女の子とも別れを告げてきた。

不器用だった俺は付き合っていた彼女にも上手に言葉を伝えることも出来ずに別れた。

今まで喧嘩すらしたことが無かったのに初めて壁にぶち当たった。

俺は壁から逃げるようにこの新たな地を踏みしめた。

君と別れて1年目、手紙でも書こうと想いペンを持つもののペンは進まない。

ただ後悔だけに支配された心が痛くてしょうがなかった。

分かれた彼女にも会いたい家族や友達に会いたい。

ホームシックにかかったような心に何度も押しつぶされそうになった。


2年目も同じような日々が続いた。

少しだけ違うのは新しい土地にも少しだけ慣れてきても心だけは癒されない。

そんな2年目のある日俺は新しい土地で分かれた彼女と何処か雰囲気の似た女性に告白された。

俺は数日間悩んだ挙句彼女と付き合うことになった。

どこか雰囲気の似た彼女とデートをする中で思ったことがある。

分かれた彼女も俺の知ってる土地で誰かと付き合っているのだろうかと。


そして運命の3年目。

彼女から泣きながら分かれて欲しいといわれてしまった。

理由は簡単だった。

何度共に時間を過ごしてもどこか遠くを見ていると言われてしまった。

思えば彼女と過ごす時間はあの頃を重なって見ていたのかもしれない。

初めて気がついたときにはもう取り返しがつかなかった。

俺の人生はいつもこうだった。

気がつく時には遅いことだらけだ。

彼女と別れた後はまた空虚な時間を過ごす日々だった。


そして高校を卒業し実家に戻ったとき中学までの友達との交流は

切れている現実を実感させてくる。

俺はコートを羽織ると実家から3年前飛び出した町を歩き出した。

3年間で俺の知っていた町は大きく変化した。

そこは俺の知っている町ではない…どこか自分だけ置いていかれてしまったような感覚に陥る。

ふと気がつくと俺は中学への通学路だった道を歩いていた。

どうやらここだけはまだ変わっていなかった。

俺の知る通学路…あの子といつも並んで帰った道だ。

あの子は今どうしているのだろうか。

もしもまためぐり合うのなら謝りたい。

そんなことを考えていると反対側から歩いてくるカップルの姿が見えた。

どこかで見た顔だがその顔が思い出せない。

カップルが俺の隣を通り過ぎたとき確信した。

あの姿は彼女の成長した姿だった。

化粧や成長をしていて誰か認識できなかったが仕草や歩き方…間違いない彼女だ。

そうか、彼女は彼氏が出来て元気にやってたのか。

謝ろうと思っていたがそんな感情もゆっくりと流されていく。

俺は結論を出した。

…帰って寝るか。


―現実はこんなもんです―完

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